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第二部中盤 異能開発機構回顧録2 幕間

異能開発機構における、0番の評価は先んじて記された通り、『英雄』と呼ばれている。

それはなぜか。

簡単に言えば、"死"をもたらすからである。

噂に違わぬ…、それよりも遥かな実力差を持って、目の前の人間を殺す。

これは、どんな絶対強者にも通じる真実だった。

その死神には、慈悲が存在したのだ。

相手と同じ戦いで敬意を示し、

弱者には望む死をやり、

異能者には異能を使って。

技術、異能、意思、命。

その全てを持って、死神は刈り取る命に責任を持ち続けた。

故に、皆一様に言わざるを得ないのだ。

『英雄』であると。

『英雄』に違いないと。

だが、その評価は0番の心を食い破るようなものでしかない。

0番の視点で言えば、それはただの大量殺戮だ。

英雄的思考で至ったものでもなければ、英雄的行動とも言えない。

命を救うことの真反対に位置する唾棄すべき行いだ。

では、彼は命を救っていないのか。

否である。

殺しが救済とされるこの世界で、彼はその役割を十全に果たせている。

いや、それ以上ない責任の取り方だと言えよう。

であるが、それら全てを"しょうがないから"で済ませられるほど、人間の精神構造を歪めることができない。

それはなぜか。

紀元前から存在する人間の本能のようなもので、人間を殺してはいけないという基本的思想が存在するからだ。

そして、それは法律として世界にも刻まれている常識だ。

しかし、それは外界でのこと。

この狭き世界で、この昏き地獄で、彼は英雄たり得てしまうのだ。

その力故に、その意思故に。

その慈悲深き心故に。

ここまで言わんとすれば、わかるだろうか。

英雄とは一体なんなのだろうか。

力を持つ怪物であろうか、それとも自己犠牲を図る破滅主義者か。

違う?だが、これは真実だ。

二つとも、英雄として消費される人物だ。

どんな美化されている物語であろうとも、この二つのカテゴライズから逃れることはできない。

魔王を打倒する勇者さえ、魔王を打倒できるほどの怪物でしかないのだから。

仮に、相打ちするような勇者でも、最後まで人々を救わなかった英雄。つまり、自己犠牲を図った破滅主義者とも定義ができる。

問いを持って、解をなせ。

再び問おう。

英雄とは、一体なんなのだろうか。

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