終息
俺が取り出した二つの瓶その中にはある液体が入っている。
一つはニトログリセリン、一滴落した所に衝撃を加えると破裂するこの液体を矢じりに塗って置けばかわされても大きな音が鳴るはず、もしかしたら地面にある小石や土を衝撃で弾いてくれるかもしれない。
そうすれば次弾を避けるのを遅れさせる事ができるかもしれない。
もう一つは定番の毒、毒と言ったら知ってる人も多いヤドクガエルの毒を入れてみた。
少量で大人を殺す事ができるこの毒なら掠っただけでもブラックロップを倒せるんじゃないかと考えた。
俺は瓶に入れたそれを持つと弓を射っている人たちを見回しできるだけ大きな声で話しかけた。
「弓を射っている人たち聞いてくれ!」
俺が大声で衆目を引くと弓を使っていた冒険者たちが弓を射ることをいったん止めてこちらを見てくれた。
注目を確認した俺は頷きさらに声を上げ説明を始める。
「俺に考えがあるんだが乗ってくれないか?」
作戦があることを告げると何人かの弓士が俺の所に近づいて来た。
「何か考えがあるらしいな、こっちは獲物にチョロチョロされてイラついてんだ禄でもねー事だったらぶん殴るぞ!」
1人の狩人の様ないで立ちの弓士がそんなことを言いながら近づいて来た。
俺は少しでも信用されるように相手の目を見て作戦説明を始める。
「はい!先ずはこちらの液体を矢に塗ってもらいます。
この液体は衝撃が加わると大きな音と衝撃が発生するものです」
俺は説明をしながらニトログリセリンを瓶から一滴落とした。
液体が自由落下して足元のレンガに当たると同時にパンという破裂音と共に液体が当たった所を黒く焦げさせていた。
それに驚いて周りにいた人は飛び退ったり耳を抑えていたりした。
先ほど俺に食って掛かっていた弓士も目を見開き驚いていた。
「これでブラックロップを警戒させた所でこちらの液体を塗った矢を射かけて手傷を与えます。
こちらは強力な毒で掠りさえすれば倒すことが十分できると思います」
ニトログリセリンの入った瓶とは違うもう一つの瓶を目線迄上げ説明を続ける。
こちらは見ただけでわかるように紫色に着色してある。
本来は無色透明だけどもし触ってしまったら大変なのであえて色を付けて置いた。
「あんたの作戦はその音のする液体を塗った矢でブラックロップをビビらせて動きが止まった所を毒矢で仕留めるってことか?」
先ほどの弓士が俺の作戦を説明してくれたので俺は頷く、すると弓士たちは集まって作戦を詰め始めた。
「よし聞いてたな!じゃあ音の鳴る弓を射る者はブラックロップの左右に落ちる様に射ろ!
他の者は毒を縫ってブラックロップが避ける範囲に矢雨を降らせるぞ!」
狩人の様な弓士の号令で周りの弓士たちが俺の所に順番に来る。
その弓士たちの差し出した矢に毒を塗っていくと最後に弓士たちを仕切っていた狩人の様な男が近づいてきて話し掛けて来た。
「さっきはすまなかった。あの黒兎がチェロチェロするもんだからイラついててな」
「いえいえ気になさらないでください。それより号令を」
謝ってきた弓士に俺は気にしていないことを伝えながら弓士に声を掛ける。
それを聞いた弓士の男は姿勢を正し自身も弓を引きながら声を上げる。
「行くぞお前ら!・・・テーーーー!!」
声を上げた男がブラックロップに向かって曲射を放つ、そして間をおいてから号令を送った。
号令と同時に胸壁にいた弓士たちが一斉に矢を放つ、矢が一斉に舞い上がるその光景は壮観だった。
矢が曲線を描きブラックロップへ向かって行く、その光景に先駆けて遠くに見えていたブラックロップが横に避けた。
それと同時にパンという破裂音がここまで聞こえて来た。
すぐに矢雨がブラックロップが居る場所に降り注いでいった。
矢が降り注ぐ、遠いため当たっているか分からないがブラックロップが動き出すまで少し間があった。
その間に矢が降り注いだのでもしかしたら当たってるかも知れない、そんな希望を持ちながらじっと状況を観察する。
そうしている間にも押し寄せるメニーラビットに向かって攻撃をしていた魔導士たちに俺はMPポーションを液体操作で飛ばして回復させる。
その間に状況を見ていると次第に押し寄せていたメニーラビットの様子が変わってきた。
壁に押し寄せ頻りに壁に穴をあけよう前歯を突き立てていたウサギたちが自分の状況を確認するように首を回し脱兎のごとく逃げ出し始めたからだ。
「やったのか?メニーラビットたちの動きが変わった!」
攻撃の支持を出していた弓士の男が矢を射ることを止め様子を見始めた。
それと同時に胸壁に上っていた冒険者や騎士たちも様子を見始めた。
その間もメニーラビットたちはあれだけいたのに今ではトリモチ君に絡めとられた分のみだった。
それを見ていた騎士が鬨の声を上げる。
「ブラックロップを倒したぞ!メニーラビットたちは散り散りに逃げた!我らの勝利だ!!」
その声に下にいた兵が一斉に沸き立った。
やっとメニーラビット暴走が収まって俺はほっと一息つくことができた。
メニーラビットが散った所で門が開かれ冒険者や兵士たちが外へ出て回りを警戒しながら周辺調査を始める。
その様子が目に入ったので俺は胸壁を降りて帰ることにした。
このままここにいてもやれることは無いだろうし暴走も終わったことを伝えてみんなを安心させてあげたい。
ポーションの料金はまあ後でいいや、まだ誰に使ったかなんて分からないだろうから落ち着いたら冒険者ギルドや騎士団に行って払ってもらおう。
まあ今回のことはちょっとしたサービスのつもりだから、別に払ってもらわなくてもそれはそれで良い。
今回のことでポーションも売れるかもしれないから売ってくれって言われたら売り出そうかな。
売れだすにしてもこのままの値段で良いか商業ギルドや薬師ギルドにポーションの値段を確認しないとな。
安過ぎと薬師ギルドから文句を言われると困るからな。薬師ギルドは材料を買って作ってるのだろうから適正価格は守らないと可哀そうだ。
俺がポーションのことで考え事をしながら倉庫へと戻ろうとしているとロナルドが俺に向かって走ってくるのを見つけた。
「旦那!どこに行くんですか?勝ったんですから祝勝会行きますよ!」
ロナルドは満面の笑みで俺の腕を掴むと引っ張って行く。
ロナルドはもっとクールなイメージだったのにな。勝ったから浮かれてるんだろうか?
俺はロナルドに引っ張られながら町中を歩く、ブラックロップ討伐の報を聞いたのか大通りの店が開いていく。
その店に戦いに疲れた者たちが勝利を祝うために店に入って行く。
その様子を見ながら腕を引かれて行くとロナルドが建物に入って行ったので俺も中に入る。
すると中ではすでに飲み始めていたジェフ達が俺に近づいて来た。
「旦那!お疲れ様です!回復支援助かりましたぜ、お陰様でみんな助かりました」
ジェフが俺のことを褒めると周りに居た冒険者たちが次々と礼を言ってきた。
そのまま飲み会に突入してしまい結局倉庫には戻れずに夜まで飲むことになっった。




