ブラックロップ
護衛組と正式に契約して1週間、俺達はひたすら糸を作り酒の補充のためにギルドや卸先に行き酒を卸していた。
3日目には態々ウォルトが倉庫に来て酒の買い付けに来ていた。
なんでも大量に買って行った鏡も2日で売り切れてしまい酒の噂を聞きつけた遠方からの商人がギルドに問い合わせているのだとか。
その中には貴族からの注文のため早急に買って帰らなければいけない商人もいて、かなり焦っているんだとか。
でも俺が店舗を持っている訳でもなく町中探しても鏡を飲める飲食店は有るが卸しを行っている酒蔵が無い。
そのせいでギルドに問い合わせが大量に着ているんだとか。
まあ新しい物に飛びつくのはなんとなくわかる。
特にこの世界娯楽が少ないのも影響しているんだと思う、だがボードゲームであるリバーシや将棋、チェスなんかもある。
多分地球の人間が金稼ぎのために売り出したんだろう。
他にもトランプなんかもある、よくカードゲームに耐えれる紙を作れたなと感心するよ。
他にも金儲けに使えそうなおもちゃ類は大体あった。
木で作れるコマや紙で作れるメンコも子供が遊んでいるのを見掛けたことがある。
でもコマやメンコが有るのにおはじきが無かった。
厳密にいえばあったんだけど平たい石を地面に書いた円から出すようにぶつけ合うカーリングの様な遊びだ。
でもガラスのおはじきは見たことが無かった。
話が逸れたが、ここ1週間酒を卸し金属糸を作るのに忙しかった。
娯楽は有れど大人の娯楽となると酒は欠かせないらしい、そんな1週間を過ごしていた俺はいつもの様に冒険者ギルドへ酒を卸しに来ていた。
護衛組は昼3人で夜2人という配置になった。理由は簡単、卸しに行くための俺の護衛が1人必要だからだ。
卸しだからそんなに時間は掛からないし昼間だから大乗分じゃないかといったのだが、新しい酒を売る俺はちょっとした有名人になり始めているため。
昼間でも護衛が付くようになった。
ジェフ曰く「旦那にもしものことが有ったら俺達全員また路頭に迷うことになる。
大人はまだ何とかなるだろうがガキどもはあんたがいなきゃ元の路地裏に逆戻りだろ。
それはさすがに可哀そうだ」
ジェフの言葉に俺は頷くしかなかった。
一人の時は何とかなったかもしれないが、今じゃあ子供達の生活もかかってる。
これで俺に何かあったらジェフの言う通りだな。
そんなことを考えながら俺は冒険者ギルドに到着した。
俺は今日の護衛のバーナードとともに厨房の裏から声を掛ける。
「こんちわーセンです!」
俺は裏口から顔を出して声を掛けると少し待ってからサイラスが出てきてくれた。
だがその顔は何か考え事をするように眉根を寄せ、達磨の様な顔がさらに厳つくなっていた。
「どうかしましたか?」
険しい顔をしたサイラスに質問するとサイラスは少し眉に入っていた力を抜いて苦笑いをしながら答えてくれた。
「いやこの頃やけにメニーラビットが増えているなとは思っていたんだが、今日狩に出かけた冒険者がブラックロップを発見した」
険しい顔をしたサイラスが話してくれたが、俺には固有名詞がよくわからなかった。
メニーラビットはよく食べていた串焼きの肉がそうだったからなんとなく分かる。
名前からもラビットって着くからにはウサギの魔物何だろうと想像がつくが、ブラックロップって言う魔物が分からない。
一緒くたに言うってことはウサギの魔物なんだろうか?
「メニーラビットってのは分かるんだけどブラックロップってのはなんです?」
俺がブラックロップについて聞くとサイラスは苦笑をして説明をしてくれた。
「すまんすまん、説明が足りなかったな。ブラックロップってのはメニーラビットの上位種だ。
黒い体毛に耳が垂れてるのが特徴のウサギの魔物だ、メニーラビットは普段は草食で畑を荒らすから常時討伐依頼が出てるんだが・・・。
ブラックロップが発生すると食性が変わって肉食になる。
メニーラビットは繁殖力は強いから狩っても狩っても増えやがる。
おかげで肉には困らねーんだが・・・。ブラックロップに率いられたアイツらは獰猛だ!とにかく何でも食いやがる。
普段はメニーラビットを狩っているゴブリンやオークさえ集団で襲って食い殺す。それは人間も変わらねえ」
サイラスの神妙な顔をしての説明を聞いて居て人間が大量のメニーラビットに群がられて食われるさまを想像をしてしまった。
おいおい草食動物が上位種が出たからっていきなり肉食になるって、どんな消化器官持ってるんだよ!
しかも人間食い殺すとか軍隊蟻の集団が群がる所を想像しちまった。
怖えーなんだそれ、どうするんだよ!町に向かってきたら町民が食い殺されるじゃねーか!
俺はそこまで考えた所である事に気付いて声を漏らした。
「ま、まさか・・・」
「ああ、そのまさかだ。ブラックロップに率いられたメニーラビットの大群がレットクラッカーに向かってるって連絡が入った・・・」
俺の呟きを聞いたサイラスが神妙な面持ちで頷きながら呟いた。




