おはじき勝負
荷車を裏に止めた俺が月の雫亭の扉を開けると帰って来たことに気付いたエリナちゃんが駆け寄って来た。
「おいちゃん!しょーぶしよ、エリナれんしゅうしたからこんどはまけないよ」
エリナちゃんはそう言うと俺の手を取り食堂へ引っ張っていく。
食堂の中はまだ夕食に早い為か人は疎らに座ってるのみだった。
そんな食堂の空きテーブルまで連れてこられた俺は、勝負の準備をするエリナちゃんの様子を眺めながらポシェットからおはじきを取り出す。
エリナちゃんが勝負の準備をしていることに気付いたヴィルくんがこちらに歩いて来た。
「すいませんエリナの奴、今日もずっと練習していて家の仕事全然手伝わないんですよ。
まあエリナ位の子は外で遊ぶのが普通で、まだ家の手伝いをする子は少ないから良いんですけどできれば手伝ってくれると助かるんだけど・・・」
ヴィルくんの愚痴を聞きながら俺は反省していた。
そうだよなこの世界だと子供も立派な労働力何だろうな、それが遊んでると困るよな。
だからと言って今更おはじき取り上げるのはかわいそうだから一応注意だけはしておくか。
「エリナちゃん練習するのも良いけど家のお仕事手伝わないと勝った時の景品上げないよ?」
ヴィルくんの愚痴を聞いた俺はエリナちゃんに注意するとエリナちゃんは勢いよく振り返り人差し指を加えながら返事をした。
「え~かってもおいしいのもらえなくなるの?それはヤダからおてつだいもてつだう!」
エリナちゃんは俺の注意を聞いて最初は渋っていたが景品が無くなることを恐れてか最後は元気よく答えてくれた。
エリナちゃんに注意した後、準備が整ったのでおはじきによる勝負をした。
結果は一応俺の勝ち、だが二人とも大分うまくなっていて俺が弾いたおはじきが落ちてくれたおかげで何とか勝てた。
だが明日には負けそうな勢いで上手くなってきていた。
「残念、俺の勝ちだね。でも二人とも強くなってるから後少し、明日には勝てるんじゃないかな?
今日は残念賞としてこれをあげるよ、マヨネーズは勝った時にあげるから今日はこれ」
俺は微笑みながら言うとポシェットから試飲用のボトルにハチミツ医師を入れて渡す。
「なんかくれるの?やった!ありがとう、おいちゃんふとっぱら」
エリナちゃんが嬉しそうに俺からハチミツ医師の入ったミニボトルを受け取りお礼を言う。
でもどこでそんな言葉覚えたのかな?お礼と一緒に言ってるってことは意味分かってて言ってるってことだよね。
まあ宿屋なら色んな人が泊まるから泊まった客が言ってた言葉でも覚えたのかな?
俺はエリナちゃんの言葉に疑問を覚えつつヴィルくんにも同じものをあげる。
「ありがとうございます。この琥珀色のは何ですか?」
ヴィルくんが受け取ったミニボトルを窓から差し込む光に翳しながら訪ねてきたので、俺は直ぐにその質問に答える。
「うん?ハチミツだよ。子供に酒渡すわけにいかんからな」
俺がヴィルくんの質問に答えるとエリナちゃんは直ぐにミニボトルに口を付け中身を一口飲んでから声を上げた。
「あま~い!おいしいのおいしいよ!」
エリナちゃんは気に入ったのか興奮したように言うとミニボトルを口に付け舐め始め、それを見たヴィルくんが慌てて止めに入った。
「エリナ!そんなに一気に舐めたらすぐなくなっちゃうぞ?」
ヴィルくんの指摘を聞いてエリナちゃんはハッとしてすぐ口から離したがすでにミニボトルの中身は3分の1になっていた。
「う~もうすこししかない・・・」
エリナちゃんは3分の1になったミニボトルの中身を見つめ寂しそうに呟く。
まあ甘い物渡されたら食べたくなるのは分からなくもない、美味いもんはすぐなくなるんだよな。
だからと言って今日はあげないよ、余りあげ過ぎると親に迷惑が掛かるからね。
俺は物欲しそうに見つめてくるエリナちゃんにあげ過ぎない様に心に硬く誓いながら声を掛けた。
「今日の分はそれだけだよ、もし勝負に勝ったらもっと大きな瓶いっぱいに入れてあげても良いよ」
俺はエリナちゃんに約束をするとエリナちゃんは笑顔で大きな返事をしてくれた。
そんな2人を食堂に残して一度自分の部屋に戻るのだった。
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