売り込み
串焼きの話が纏まった所で俺は出かけることにした。
酒の売り込みのためだ、だがいきなり高級店に売り込みに行って大丈夫かな?
店構えの立派な店は幾つか見つけてあるからそこを回る予定でいる。
後は絶対買ってくれそうな所は有るけど一瓶1万は流石に高いよな半額にしても5千リル、一杯コップに8割入れたとしても8杯くらいしか飲めない物を買ってくれるかな?
俺は頭を悩ませながら買ってくれそうな所へ向かう。
昨日の今日だから場所も覚えている。
荷車を引きながら俺は買ってくれそうな場所に到着した。
そこはこの町に来て初めて泊まった騎士団駐屯地だ。
俺は入り口の門の前にいる騎士に声をっ掛けた。
「こんにちは、行商の物ですが珍しい酒を買ってはくれませんか?」
俺が騎士に声を掛けると騎士は訝し気に俺を見て話し始めた。
「酒だと?酒なら御用商人から買っている、今更行商などから買う必要はない!帰れ!」
騎士は取りつく島もなく追い払いにかかって来る。
そんな騎士に俺はさらに食い下がった。
「でしたらケインさんはいらっしゃいませんでしょうか?あの方でしたらセンが酒を売りに来たと言っていただければ来てくれると思いますので」
俺がケインの名前を出すと騎士は怪訝そうな顔は変えずに眉を動かした。
「もしかしてケインが密かに私蔵していたという酒か?」
騎士が俺の言葉に興味を示した。それを見逃がさずにさらに話しかける。
「たぶんそれで間違いないと思うます。もしケインさんを呼んでいただければ試飲用の一瓶を進呈させていただいても構いませんが、如何ですか?」
すかさず俺は酒をチラつかせる。
賄賂?いやいや心付けって奴ですよ?ただのお礼ですよ?やだな~別にやましい事は何もありませんよ後はケインを呼んでもらうだけだ。
それに渡すのは売り物じゃ無くて、あらかじめ一杯分ぐらいのミニボトルを作っておいたのでそれを渡すつもりだ。
門の前にいた騎士は「待っていろ」とだけ言い残すと駐屯地へ入って行ったので、俺はしばらく待つことにした。
待っている間も商品として見せるための酒を瓶に詰めていた。
暫くすると呼びに行った騎士と共にケインが門に来る。
俺を見つけたケインは手を上げ挨拶をしてくるので、俺はお辞儀をして返した。
「よう!いや~よかったまだこの町に居たんだな。あんたの酒を食後に飲んでいたらな、他の騎士にたかられて全部飲まれちまったんだ。
あんたの酒が欲しくても、任務でも休暇でもないのにあの村まで行くわけにもいかなくてな。
どうにかならないか考えてたんだ!いや~来てくれて助かったよ。
それにあの酒が隊長の手にまで渡っちまってな。今朝呼び出されちまってたんだ。
丁度いいからちょっと一緒に来てくれよ」
ケインはそう言いながら俺に近付き、肩に腕を絡ませると引き摺らんばかりに引っ張って行く。
でも俺の荷車を置きっぱなしには出来ないので、俺は慌ててケインに声を掛けた。
「ケインさん、荷車がありますので待って貰えますか!?」
俺が慌てながら言うとケインは肩に回していた腕を解き誤って来た。
「すまんすまん、ちょっと焦っちまった。隊長から尋問された後だったもんですまん」
ケインは謝りながら隊長の話を繰り返す。
隊長ってそんなに怖い人なのかな?それとも酒に目が無い人なのか?それなら俺の酒を買ってくれるかもしれない。
隊長と言う人がどういう人なのか気になりながら俺は荷車を持ってくる。
ケインに付いて行く前にちゃんと呼びに行ってくれた騎士には黒ニッカの入ったミニボトル渡すのを忘れない。
荷車を引き始めた俺を見てケインは横に付き、取り合えず荷車の置けそうな所へ案内してくれる。
荷車は倉庫の様な建物の横に置き、俺達は駐屯地の隊長室へ向かった。
何度も曲がり複雑に建物の中を進み、やっと重厚な扉の前に来ることができた。
一度じゃ覚えられないな、まあ軍事基地なんて部屋の位置なんか覚えられたらマズイだろうから複雑になってるんだろうけど、行き来が大変だな。
俺は駐屯地内の複雑さを考えているとケインが扉を叩き入室の許可を取っていた。
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