酒好きの商人
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「ごちそうさま、美味しかったよ」
俺が食事の感想を言うとアマンダは微笑み、それから俺に酒について話し始めた。
「口に合ってよかったよ、で酒のことなんだけどアレ一杯幾らだい?全部この辺じゃ手に入りそうに無い酒だったけど。
それにあのミズアメ?アレを売り出すのは難しいんじゃ無いかい?砂糖なんて高いだろ?」
アマンダはそう言いながら俺の顔を窺う、だが俺は微笑むと心配いらないことを伝える。
「水飴は砂糖を使って無いんですよ、だから庶民でも買いやすい値段にしようと思ってます。
そうですね木の棒に絡め捕って売れば、大体100リルぐらいでどうでしょう?
一食の食事と同じ金額だと高いでしょうか?でも砂糖何かもっとしますよね」
俺が売り出そうと思っている値段を上げてみる。
本当はもっと安くしようと考えたけど余り安くすると、入れてある容器ごと売れって言って来そうな人がいそうだから少し高くした。
できれば子供のお小遣いでも買える値段にしたかったが、子供のお小遣いが分からないから一食の値段にした。
「そんなに安く売って良いのかい?普通甘味って言ったら果物だけど、大体一つ200リルか300リルするからね。それから考えたら安いと思うよ」
なるほど、庶民にとっての甘味って言えば果物だよな。
それに比べれば安いのか、でも棒に絡め捕るにしてもスプーンに掬うにしても一口で終わってしまうからな~。
小さな壺に入れて売ったら壺代がかさむだろうし、出来れば庶民に売れる様にしたい。
俺が悩んでいる間にアマンダの話は続いていた。
「それにあの酒幾らで売るつもりだい?どれもここいらじゃ聞いたことの無い酒だよ。
そんな酒、貴族に売りゃあ一瓶で1万・・・いや好事家に売ればもっとするんじゃ無いかい?」
え?あれでもまだランクは落としたんだが?ああ!失念してた!日本酒なんてこの辺じゃ手に入らないじゃ無いか!そもそも米なんて聞いたこと無いし。
日本酒は売るのはマズいか、そうなると比較的作れそうなウィスキーとブランデーのコニャックにしておくか。
ブランデーのコニャックなら元はブドウだから作ろうとすればワインが有るんだから作れるだろう。
問題は熟成年月だけど、比較的若い物を出せばいいだろう。
それでも十分美味いと思うから大丈夫だろ、問題は値段だよな。
そこまで考えた所で俺はアマンダに話しかけた。
「分かりました。この辺でも作れる物を売るようにします。
値段は・・・舌の肥えて居そうな信頼できる人っていませんか?」
俺が悩みながらアマンダに尋ねるとアマンダは頬に手を当て考え始めた。
まあ自分でも無茶を言っている自覚はある。
店に来て他の店を紹介してくれって言ってるようなもんだからな。
普通だったらキレられるけど、ここに下ろせないんだから他を紹介して貰うしかないんだよな。
俺はアマンダと酒を下ろす場所を考えている。
するとそれを聞いていたらしい商人の様な出で立ちの日に焼けた青に近い黒髪の男が声を掛けてきた。
「失礼、私は酒には目が無くてですね。もしよろしければその酒を売って頂けないでしょうか?」
商人は笑顔で俺に提案してきたが俺は直ぐには頷けなかった。
だってね~流石にこれから売り出す酒をここで売ってしまって、先に消費者に渡ってしまったら俺が売りに行ったとき困ることになりそうだよね。
あの商人は幾らで売って来たぞ、とか言われると凄いめんどくさい。
でも取り合えず買うかどうかはこの人次第で吹っ掛けてみようか?
アマンダの見立てでは一瓶1万リル位はしそうだしな。
試飲してもらって金額を提示してそれでも買うんなら、まあ儲けも出るだろうから良いかな。
「分かりました。取り合えず試飲してもらって、それから買うか考えてください」
俺は考えていたことを商人に提示すると商人も頷いてくれたので、俺はアマンダに振り向きコップを3つお願いした。
アマンダは頷き、直ぐに離れていく。
それを見計らっていたかのように商人が声を掛けてきた。
「それでお売りになると言う酒はどういった物なのでしょう?」
商人の質問に、俺は酒の入った瓶を取り出しながら説明を始めた。
「最初にこちらは日本酒です。この酒は俺の故郷の穀物、米から作られた酒です。米の甘味とスッキリとした後味が特徴的ですね。
ウィスキーは麦から作られた蒸留酒です。蒸留しただけでは味わえない年月による熟成された味わいと香りが特徴的な酒です。
そして最後のブランデーは果物から作る蒸留酒です。こちらも蒸留した酒を年数熟成させた品になっております。
どれも徹底された管理の元保存され熟成された一品ですよ」
俺は覚えている限りの説明を商人にする。
説明を聞いていた商人は目を輝かせ今にも舌舐めづりしそうな表情をしていた。
そんな商人の前にアマンダがコップを持って来てトレーごと置く。
俺は置かれたコップに酒を注いでいく、商人は注がれる酒を眺めて喉を鳴らしていた。
俺が全部のコップに酒を注ぐと商人は待ちきれないとばかりにコップを手に取り口を付けた。
酒を一口飲んだ商人は目を見開き震えだす。
俺はそんな商人を見て少し心配になってしまった。
「これは・・・素晴らしいですね、ニホンシュと言いましたか?このような喉越しの酒は飲んだことがありません」
商人はコップを覗き込み、囁く様に呟いた。そんな商人に俺は微笑みかけながら声を掛ける。
「日本酒は俺の故郷の酒でまるで水の様な喉越しの物もあれば、果実の様な香りを放つ物も有るんです。
もちろん香りを付けるために果汁を入れたりなんてしていない、穀物のみで作り出すそれはまさに芸術品だと思いませんか?」
俺が日本酒を誇る様に説明する。
そんな俺の説明を聞きながら商人は次のコップへ手を伸ばす。
商人はどの酒も一様に驚きの表情を作り舌鼓を打つ、そんな商人の様子を見ていた俺は肝心な金額を提示した。
「どの酒も満足いただけたようですので、金額を提示させていただきたいと思います。
日本酒は5万リル、ウィスキーは1万リル、ブランデーは2万リルです」
まあ我ながらぼったくりかな~と思うけど値段を上げたのは簡単に転売をさせないためだ。
いくら何でも何万もする酒を転売する訳に行かないでしょ?それとも貴族ならこの値段でも買うのかな?
でもこの値段にすると流石に露店で売ることは出来ないな。
そうなるとこれからの金策が困るかな?まあ困ったら醤油でも売っていよう。
串焼きに焼き鳥のタレでもつけて売るかな。
「済まない、少し考えさせてくれ・・・」
商人は金額を聞いて愕然とした後項垂れ絞り出すように声を出した。
そんな商人を見てから少し肩を落として、俺は立ち上がりながら商人に声を掛けた。
「またいつでもお声がけください」
そう言い残して俺は部屋に戻る。




