お約束
受付嬢の話を聞いて俺はすでに勇者召喚などの方法で異世界の知識が持ち込まれていると判断した。
それから考えると酒が進歩してないのが気になるが、大方どこぞの貴族辺りが情報統制を掛けて独り占めしてるんだろう。
そう考えると酒を売り出すのも危ないかもしれない。
だけど他に売れそうな物も・・・いや案外多いか?スープだけでも売れるだろうし一度酒の飲める所で調査して売れそうな物を売り出そう。
俺が知識チートの事を考えていると受付嬢も一頻偉人の事を話し終わったのか少し頬を赤らめ話を戻した。
主な注意事項は後から渡された紙に書いているらしい、ざっと読んでみたが簡単な注意事項しか書いていなかった。
「では登録を終了いたします。素材の買取カウンターで買い取り手続きを行ってください」
受付嬢が言いながらお辞儀をするので、俺は「ありがとうございます」と礼を言い買取カウンターへ向かった。
受付カウンターを離れ買取カウンターに並ぶ、俺の前にはメイルサスより小型な猪の魔物の両足を木に縛り付けそれを2人で担いでいる4人パーティーがいた。
そのパーティーは獲物が取れたからか素材が売れた金で何を買おうか話し合っていた。
「このホーンサス売れば1万リルぐらいにはなるだろ。それだけで3日分の宿代にはなるだろ。
そうすれば少しは美味い飯が食えそうだな」
「そうね、討伐報酬も合わせれば少しは余裕が有るかも。でも、もうそろそろ武器を買い替えないといけないから少しは余裕が欲しいわね」
「そうだな、武器もガタが来てるもんな。そろそろ買い替えないといけないな・・・」
「それにマジックバックが有ればもっと獲物が持って帰れるの」
「「「それはな~」」」
冒険者達は口々にこれからのことを話し合っていた。
だけどその話しぶりはとても狩りだけではやっていけないのではないかとうかがい知ることができる。
ホーンサスってのがどれほどの強さか分からないがその猪1頭で1万リルらしい。
リルがこの国の通貨単位何だろうと思うけど1万で3日か、一泊3千ぐらいかな?
他にもマジックバックってのが有るらしい、話の流れから大量に物が入るバック何だろう。
俺も欲しいなマジックバック、物が大量に持ち運びできるなら行商にも持ってけそうだ。
俺が考え事をしている間に前にいたパーティーは買取を終わらせて俺の番になっていた。
「おい!あんたの番だぞ!早く素材を出しやがれ!」
「はい!すいません」
目の前のカウンターに居たムキムキの褐色肌が黒光りする禿頭のオヤジが俺を睨みつけながら声を掛けてきた。
俺はその声に驚きながら背負子の荷物を下ろす、俺が持って来た荷物をオヤジ一つ一つ確認していく。
その速さはかなり迅速であっと言う間に素材の鑑定をしてしまった。
「いい素材をかなりの量持って来たなザブラアの角に魔石、メイルサスの皮にレッドバレットの皮も有るじゃねーか。
この量狩って来るのはまた苦労しただろ、レッドバレットの皮は貴族にも人気が有る品だから小さくても高く売れる。
需用は有るが狩って来れる冒険者がいなくて困ってたんだよ助かるぜ」
オヤジが白い歯が見える笑顔を見せる。
強面だけど愛嬌のあるその顔に俺も笑顔で返すと、突然後ろから声を掛けられた。
「おいおい!おっさん一人で狩れる量じゃねーだろ!どこで盗んできたんだ!」
その邪気の含んだ大声に振り向くとこれまた厳つい顔の男がその顔にいやらしい嗤いを張り付けていた。
あ~何かこういう人って何処の世界にもいるんだな、人が成果を上げると絡んで来る奴!
ここは無視するに限るかな?でも一方的に盗品呼ばわりされたら困るから釈明するしかないか。
「なんで盗んできたこと前提なんだ?人の成果にケチをつけてる暇が有るなら自分の仕事をしっかりした方が良いんじゃ無いか?
それとも自分で狩れないから文句を付けてきたのか?御大層な装備をしてるんだ、そんなこと無いよな?」
俺は男の装備を見ながら煽る、喧嘩を売って来たのはあちらだ。もし殴りかかってきたら容赦なんかするつもりは無い。
俺は注意深く男の様子を窺っていると男はユデダコの様に顔を赤くして怒鳴りつけてきた。
「テメーみたいなヒョロイおっさんにメイルサスなんて狩れるかよ、ましてやあの素早いレッドバレットが狩れるもんか!」
男は真っ赤な顔で怒鳴りつけて来るが、俺は男を冷めた目で見つめながら反論する。
「俺は罠を張るのが得意でね、レッドバレットはその罠で捕まえたんだよ。
他の魔物も同様だ、罠にかかった物を仕留めてきた。ただ追っかけ回すだけが狩りじゃ無いんだよ」
俺がこれまで魔物を狩って来た方法を言うと周りからは感心半分疑い半分の視線が送られてきた。
そんな中、男は悔しそうに睨みつけさらに叫ぶ。
「ただ罠をし掛けるのが上手いだけの正面から狩れもしない腰抜けが!偉そうに言うんじゃねー!」
男は叫ぶと同時に拳を振り上げ走り寄って来る。
あ~ここまで来ると流石に無防備で殴られてやるわけに行かないな、正面からやり合う力が無いって言うならやってやるよ。
別に殺しはしないよ、こんな衆人環視の中で人殺しをするほど馬鹿じゃない。
盗賊達と同じ目に会ってもらうだけだ!
俺はニヤリと笑うと男に手を向け叫んだ。
「ハバネロ先生!やってしまいなさい」
俺は叫ぶとともに男の顔をハバネロ先生で覆いつくす。
「ギャボボボゲゴボ!」
男は2.3歩走った所でそのまま床に転げまわる。
そんな男の顔には真っ赤な液体が張り付き、転げ回る男は必死で赤い液体を剥がそうとするが液体は掴むことができず叫び声と空気の泡が漏れる音が聞こえて来るだけだった。
俺はそんな男を見てそれからその男の仲間に目を向けながら話掛けた。
「この近くにスライムがいるか知らないがスライムに絡みつかれるとこんな感じになって生きたまま溶かされますから注意した方が良いですよ。
もし報復とか考える様でしたらやめておいた方が得策です。その時はこんなもんじゃ済ましませんから、地上で溺れたくはないでしょ?」
俺が静かに男の仲間に忠告すると男の仲間たちは首をブンブンと音化しそうなほど縦に振り、それを確認した俺は男に絡みつくハバネロ先生を消した。
「ヒッ!」
誰が上げたか息を飲む音が聞こえた。
それ以外はシンと静まり返っている。理由は目の前に倒れる男の顔だった。
男の顔は腫れあがり、真っ赤になっていた。唇はタラコでも張り付けた様になり瞼も腫れ上がってお岩さんみたいになっていた。
あっちゃ~やりすぎたかな?こりゃパーティー探しはできそうにないな。
俺は静まり返ったギルド内で冷や汗を垂らすのだった。
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