ダンジョンと罠 3
シル様が剣に魔法を纏わせ、硬いゴーレムの体を次々と斬りつけていく。
シエル様が同じく槍に魔法を纏わせ、比較的柔らかいと思える箇所を素早い連撃を繰り出していく。
セリオム様がゴーレムの攻撃からお二人を庇いながら、身体強化などの魔法をかけ、サポートに回っている。
そんな様子を男性に拘束されながら見つめつづける。
他の皆様が助力に動く様子は一向にない。
それはつまり、お三方だけで十分と思われているという事で。
シル様達、本当に凄くお強いんだなぁ……。
「ふむ……この様子だと、あいつが倒されるのももう時間の問題かなぁ。……あんた、良かったな。あの王子達、すげー強いぜ。これならあんたは安全だな。何も心配はなさそうだ。……ただ、くれぐれも、それを当然と思い上がるなよ?」
「え……?」
「あんたを保護してくれてるあの王子があんたを見限る事はないだろうが……周囲は、そうじゃない。あんたが思い上がった愚かな女になれば、いずれあの王子共々破滅する。……これは長く生きて、色々な事柄を見た者からの忠告だ。くれぐれも、忘れるなよ」
「! ……それは、破滅した子を見た、って事……?」
「……何人か、な。……あんたは、そうなるなよ?」
「……! ……き、気をつけます」
「ああ、そうしろ。……っと、タイムアップだな」
「え」
男性が視線を戦闘の場に戻しそう呟くと、次の瞬間、ドドォーーン! という大きな音と衝撃が響いてきた。
そちらを見れば、ゴーレムが崩れて倒れている。
「勝ったぞ。さあ、アカリ嬢を離せ」
「はいはい、わかってますよ。ま、新型ゴーレムの性能とちょっとした改善箇所もわかったし、上出来かな。……んじゃ、約束通り、あの卵はあんたにやるから、忘れずに持って……いや、"拾って"、帰れよ? じゃあな…………ちゃんと、人間として一般的な、長生きしろよ。……あと、幸せにな?」
「! あ……っ!」
男性はそう言って私の頭をひと撫ですると、私の返事を待たずに姿を消した。
人間として、一般的な長生き。
男性の口元は笑みを浮かべていたけれど……その言葉は、私にはとても悲しげに聞こえた。
あの人は……いつまで、一人で生きるのだろう。
「アカリ嬢、大丈夫か!? 怪我は!? 助けが遅くなってすまなかった……!」
「あ……いえ、大丈夫です、シル様。どこも何ともありませんから。……あの人、あんな事言ってゴーレムけしかけましたけど、悪い人じゃないんです。……私と、同郷だって、言って……。……自分が作った貴重なアイテムをひとつ、私にくれるって」
「貴重なアイテム……?」
「はい。あそこにある、あれです。ダンジョンの卵らしいですよ」
「! 何……!? じゃあ彼は、"悠久の賢者"なのか!?」
「? 賢者……?? 錬金術師だって、言ってましたけど」
「! ……ならば、間違いないな。通称、悠久の賢者と呼ばれる凄腕の錬金術師……歳をとらず、悠久の時を生きている、数多の歴史を知るという人物だ。……今となっては、ほぼ伝説化し、姿を知る者はいないとさえ言われていたが……まさか、合間見えるとはな」
「え……そんな人だったんですか」
いつか、また会えたらと思ったけど……それじゃあ、無理かなぁ。
私は小さくため息を吐くと、ダンジョンの卵の所へと歩いていき、それを手に取ったのだった。
"ダンジョンの卵を拾った!"




