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「お湯、できました」
「ありがとう」
小夜は龍之介に湯呑みを渡した。
「まだお熱いので————」
「あっつ!」
龍之介は湯呑みを床に落とした。幸いにも割れなかったが、折角入れたお湯は全てなくなった。
「もう~!」
「ごめんごめん。折角入れてくれたお湯が」
「そんなことよりも、お怪我はないですか?あ、火傷!してないですか?」
「......うん。大丈夫だよ」
「あー洋服が。急いで布巾持ってきますね」
小夜は立ち上がり、再び台所に行った。
「ふきんふきん.......あれ~?どこだろ?」
小夜はあたふたとその場を行ったり来たりした。弥生さんから教わった付近の場所、小夜は困った。
「小夜ちゃん、ここにあるのは?」
「えっ!?」
机の下に、布巾が一枚、落ちていた。
龍之介は布巾を手に小夜の元に行った。
「これ?」
「これです!すみません。いま、拭きますので......」
小夜は少ししゃがんで龍之介のこぼれた服を拭いた。上から、龍之介の息が吹きかかった。
「よし!これで目立たなくなりましたよ!ほら、見て見て!」
小夜が上を見上げると、目の前に龍之介の顔があった。ちか、近すぎた......
「ん?」
小夜はそっと離れた。
「す、すみません」
「.......」
2人とも微妙な距離で立ち尽くした。
なにか、なにか考えないと————
「小夜ちゃーん!そろそろお店始まるわよー!」
「あ、はーい!今行きまーす!あの、全然、うちでよければゆっくりして行ってください。何かあったら、私たちそこにいるので。では!」
小夜は小走りで弥生さんの元に向かった。
「フッ......」
「いらっしゃいませー!」
小夜はいつものように、仕事を始めた。
「弥生さん、1つ、相談事がありまして」
小夜は仕事の合間を練って、弥生さんに話しかけた。
「どうしたの?」
「実は、午後の仕事なんですけど......」
「もしかして、龍之介くん?」
「へっ!?な、なんで?」
「だって、龍之介くん、普段より男前になってらっしゃるし、今日も仕事始まる前に2人で楽しそうに話してたから」
「お恥ずかしいばかりです.......」
「行ってらっしゃい」
「え?」
「貴重な時間よ。お店はいつでも出られるから、たまには息抜きに行ってきなさい」
「ありがとうございますっ!!」
小夜は居間で新聞を読んでいる龍之介の元に走った。
これまでにない速さで、彼の元にグッと近づいた。
「龍之介さん!どこ行きますか!」
「いきなりどうしたんだ」
小夜は龍之介を見て豪快に笑った。
肩を少しすくめて。
「それじゃあ、海でも行くか」
「海.....」
「小夜ちゃんは海が苦手か?」
「ぜんっぜん!龍之介さんとならどこへでも行きます!」
「ハッ......ハハ..」
「どうしたんですか?」
「いや、君は本当に元気がいいな」
龍之介は首を少し傾げて、さらに小夜を見つめた。




