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召喚され少女と密室二人きり、俺が死ぬまでの七日間。そこから始まるアタシの物語  作者: うさぎさう
4章 【そこから始まったアタシの物語】

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4章15話:繰り寄せる結末


 血まみれになった脚を見て、ユスティーツ警備隊に入ったことを後悔していた。

 周りよりちょっと魔法が得意で、チヤホヤされて、調子に乗って入っただけの無名隊員の末路はこんなものなんだろう。

 うっかり敵に油断して、あっさり脚に怪我して、なんとか得意の土魔法で敵は倒したはいいものの歩けない。血と共に体力も落ちていくことだし、敵に見つかったらひとたまりもないな。

 持っていたハンカチで止血しても焼け石に水。どうすればいいんだろう。

 痛みが永遠に続くような気がして気が狂いそうだ。


「死にたく、ないなぁ……」


「大丈夫ですか?」


 弱音を口にすれば、土を踏む音と共に声が聞こえて顔を上げる。

 幼い丸い顔に柔らかそうな金髪をした紺色の瞳の少女がいた。血の匂いとはそぐわない人形みたいに愛らしい姿だ。


「ネオン……さん……」


 目の前にいる少女ネオンを知っている。直接話したことはなかったが、どういった存在なのか耳には入っている。

 組織『テーキット』を潰すべく動いていた警備隊に協力したとか、ただの人間ではないとか、100歳越えとか、どこまで本当かわからないけど。


「立てないんですか?」


「はい」


「前と後ろ、どっちがいいです?」


「え? えっと……」


 何の話だろう。主語がない。話の流れがわからない。とりあえず、適当に答えておこうか。


「前?」


「わかりました」


「わわっ!!」


 なんと、ネオンさんは私を抱え出した。その小さな体のどこにそんな力を秘めていたのだ。


「ニオン……あなたたちの副隊長の元へ行くつもりです。彼、回復魔法の使い手でしょう。ついでにその怪我治してもらいましょう」


「あっ、あの……っ」


「どうしました?」


「ありがとうございます……」


「世の中助け合いですから、気にしないでください」


 おずおずとお礼を申した私に、そう言ってネオンさんはニッコリ笑った。

 警備隊の中に、ネオンさんを冷たい人間だと言っていた人もいたけれど、なんだ、そんなことないじゃん。

 

「ところで、ニオンがどこにいるのか知ってる? 回復が役目と聞いていますので、前線から少し離れた場所にいるとは思うんですけど」


「少し前にすれ違ったんですが、北西の方に行くとのことです」


「わかりました」


 にしても、少女にお姫様抱っこされる成人女性は中々絵面が酷そうだ。

 せめてものアシストとして、土魔法を使って歩きやすい地面にしてさしあげよう。

 凸凹した道を整えたり、転びそうな石を弾いたり。


「土魔法、得意なんですね」


「……へへ」


 さっきまで、もし生き残っても、警備隊やめてやる気でいたけれど、もう少し続けてもいいかもしれない。


 そうして北西を進み続けて数十分。

 血の匂いがする洞穴を見つけて、そこへ潜る。

 進めば進むほどに血の匂いが濃くなっていく。しかし、それは正解だ。

 回復魔法の使い手はニオン副隊長以外にもいる。そんな中、わざわざ凄腕のニオンの元へやってくる者は重傷者なのだ。よって、血の匂いが凄いのは副隊長いる証拠。

 予測通り、特徴的な帽子を被ったニオン副隊長の姿を見つける。

 案の定、周りには無数の怪我人が寝そべっていて、痛々しい。こういった光景は慣れているが、いつ見ても心が痛む。

 ニオン副隊長はこちらに気づくことなく、そんな人たちへ手をかざした。輝かしく彼の掌が発光したかと思えば、一瞬にして『怪我人』は『ただの寝そべる人』になる。

 いつ見ても信じられない光景だ。


「こんなに……凄い回復魔法の使い手だったんですね……」


 ネオンさんは唖然としていた。

 凄いのもそりゃ当然、うちの副隊長は世界最高峰の回復魔法の使い手なんだから。



——

 


 太陽を隠す曇り空の下、砂浜に白髪の男——アヤートは佇む。

 その視線の先は海だ。しかし、波の音は聞こえない。アヤートが凍らせてしまったのだから。


「どこへ行くんだい?」


 凍った海の上、そこには小舟が浮かんでいる。そこへ乗った男たちへアヤートは問いかけていた。


「チッ。厄介っすね〜」


「ドットルーパさん、肉壁になれとご命令ならばいつでも大丈夫です!」「どうかドットルーパさんの望むままに!」


「バカ言ってんじゃないっすよ〜」


 三人の男だ。一人は、監獄から脱走したドットルーパ。アヤートが研究所へ行き不在の間の出来事のため、詳細は知らないが、彼の隣にいる二人が手引きしたのだろう。

 小太りのバンダナを付けた男に、痩せ細った無精髭の男。「ドットルーパさん」と呼んで慕っているいる様子からドットルーパの部下であることは想像に難くない。


「君には檻に戻ってもらわないと困るんだ。だから、自分から戻ってくれるとありがたい」


「オイラはありがたくないっすよ〜」


「……なら、仕方ないね」


「あー、攻撃体制入るのはちょっと待って」


 召喚術で水をかけてかけ、その後、先ほど凍らせた海のようにドットルーパたちも凍らせようと思考を巡らせていたアヤートを、ドットルーパは掌を突き出して静止させる。

 それで素直にアヤートが待つのは、強者ゆえの余裕なのかもしれない。


「ここでオイラたちを逃した方があんたにとっても得。オイラのすることは、あんたの娘……フミーの嬢ちゃんのためもなるんっすよ〜?」


「……フミーの?」


「そうそう。もちろん一番の行動理由はオイラ自身のためだけどね。けど、それがあんたらの不利益にはならないと約束するっすよ〜」


「約束ね……この状況でそれに価値があるとは思えないかな」


 アヤートの発言に、ドットルーパは露骨に困ったような顔をする。そのわざとらしさがアヤートには信じる気をより起こさせない。


「オイラの大事な部下を預ける。それで勘弁してくれ」


「できないな」


「本当に大事な部下っすよ〜?」


「そこを疑っているんじゃない」


 アヤートは語りかけて首を横に振る。


「何をする気か、詳細な話をする。僕が君と同行する。警備隊の人たちに君の大事な仲間二人を預ける。全部やって——これが、最低条件だよ」


「わかった。話してやるっすよ〜」

 

 観念したドットルーパは語り出す。すでに知っていたのか、目を閉じて、腕組みをしながら彼の部下二人は耳を傾けていた。



——



 ドットルーパの話を聞いたアヤートは渋い顔をする。


「君のやりたいことはわかった。……けれど、それでいいのかい?」


「いいに決まってる。唯一残されたオイラにとってのハッピーエンドなんっすよ〜」


 長い時を生きた吸血鬼はそう言って寂しげに笑った。

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