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2-39 真相に近づきました

「け、結婚ん!?」

「はい! 僕たち、結婚します!」


 新の前にはクレスと、顔をほんのり赤く染めたアリーゼがいた。


 なぜだ。なぜコイツばかりホイホイ事が進むのだ。

 いいや、たしかにイイ男だよ。

 金髪でさ、カネもあるし人格もいいし。


 新が目を落とすと、そこに見えたのは繋がれた手――。

 ガッツリ、恋人繋ぎでクレスとアリーゼの手が結ばれているではないか。


「いや、それよりも……。マユは? お前、マユが好きだったんじゃ――」

「振られました――。じゃなくて、振りました」

「振った!? は!? マユもクレスのこと好きだったの!?」

「違います! い、いろいろあったんですよ」


 自分が新居でゆっくりしている間に何があったのだろう。

 でも、幸せそうだしいいか。


「それで、アラタさんにも式には来てほしいなって思ってるんですよ。もちろんマユさんも」

「結婚式に行くのはじめてだなぁ。はは、まして友達とか……。おう、おめでとおめでと……」

「なんでちょっと声が震えてるんですか……。む、無理して出席しなくても大丈夫――」

「うっせーな! 行くよコノヤロー! 美人な嫁さん持ちやがって!」


 異世界に来てモテモテ? ハーレム?

 ふざけんな、友達に何歩先も越されたよ!


 同じく金髪(パツキン)だし、歳上ねーちゃんでルックス最高。元・メイドだから家事も完璧。

 スタイルいいし、面倒見いいし、アリーゼって最高のお嫁さんだろ!


 対して俺と親密度が上がってる女性は?

 ロリ、ロリ、ロリぃ――!

 最高年齢が14歳だぞ! レイのことだけどさぁ!

 いいや、マユは実年齢20以上だった。

 ミルはガチロリだし、魔王城の女性お二人とは絶対に結ばれないだろうから除外。


 マユかレイ――。

 可能性があるならどっちかかな。


「で、式はいつだよ……」

「そこはおいおい……。まだ何も決めてないんですよ」


 ヘラヘラ笑うクレス。

 なんだコイツ。幸せアピールするために俺のところに来たってのか。

 勝ち組、ムカつくなぁ……。


「まぁ、とにかくおめでとう。末永くな」

「はい! ありがとうございます!」

「――それと、アリーゼは大丈夫なのか?」


 包丁事件の後、マユは包丁本体を調べようと持ち帰っていた。

 しかし手がかりは特になし。結局、まだ危険性があるかもしれないと廃棄処分されたのだった。


 マユはアリーゼの体調についても気にしていたし、包丁を渡した『黒幕』についても話を聞きたがっていた。

 事件直後はできなかったが、今は元気そうだ。


「もう一週間ほど経つし、大丈夫だよね。アリーゼ?」

「ええ、クレス様のおかげで元気ですよ。まぁ、クレス様が()()()()()()()と言うべきですかね、ふふ……」

「ちょっと! 夜の話は――」

「あら? 誰も昨晩のこととは言っていませんのに、もう」


 は?

 なんだコイツら。

 え、もしかして、もしかするの?


 ヤったの――?


 新は悶々とする気持ちを誤魔化しながら咳払いをした。

 聞こえなかったフリで本題に戻る。


「い、異常がないならよかったよ。ところでさ、包丁を渡したやつについては覚えてる?」

「――情けなかったですよね。クレス様、たくましい体してらっしゃるのにアソコは弱々で」

「そういうアリーゼこそ! 知識ばっかりで本番になるとやられっぱなし――」

「だって! キスしながらは、ズルいですもん……」


 うつむくアリーゼに、その仕草を見てドキリとするクレス。


 誰か俺を助けてくれ。

 人前で営みについて話すバカ夫婦に常識を教えてやってくれ。


「えーっと、クレスのお嫁さん。ぴちぴちの新妻さん。お話、いいっすかね……?」

「……はい。どうぞ」

「包丁を渡した人、覚えてます?」

「商人とだけ名乗っていました。旅をする商人だと」

「顔は?」

「覚えています。……なにか描くものでもあれば、似顔絵を」


 アリーゼの提案を新は許諾。

 筆記用具はここにはないので、新はレンガの家へ。

 クレスたちは家の中のソファーで待つように言っておいた。


 トイレの個室に入り、戸棚を開ける。


「マユ。クレスとアリーゼが来たんだけど、紙とペンちょうだい」

「む? なにをするのだ?」

「似顔絵を描くってさ。『黒幕』の」

「なるほど。私も行くよ」


 マユは机に向かっていたが、すぐに立ち上がってこちらへやってきた。

 白紙一枚とペンを握り、戸棚からジャンプ。


「ここ、危なくないか?」

「あ、やっぱり? 場所変えようかな……」


 トイレを出て、二人が待つソファーに向かう。

 二人は身分を感じさせるほど礼儀正しく待っていた。

 てっきり、イチャイチャしてると思っていたのに。


「お待たせ。ほら、これに描いてくれ」


 アリーゼに紙とペンを渡すと、すぐに筆を走らせた。

 そこまで時間もかからず、その似顔絵はすぐに出来上がった。


「これです。この人がアリーゼに……」

「え、コイツって――」

「あぁ、私も覚えているぞ」


 この男を見たのはたった数分間だった。

 けれど覚えている。


 あれは、新がはじめて魔法陣を書いた時。

 魔法に失敗し、貧民のフリをして歩いていた時。


「靴でも買えって、言ってくれた人だよな……」


 気さくに5千バペル硬貨をくれた男。

 アリーゼに包丁を渡したのは、彼だった。


「あの資金を使って、私たちはセーブポイントで能力を買って……。アラタ、もしかしたら私たちは――」


 彼の手の上で転がされていたのかもしれない――。

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