マユの手記3
困った。
すべて『黒幕』のせいなのだが、実に困った。
ひとまず最近の出来事からまとめよう。
クレスとアリーゼの関係改善。
あのノロケ勇者も、やればできる人だったようだ。
急すぎる求婚に違和感はあったが、まさかアリーゼから逃げるためにだったとはな。
ふふ、私が恋のキューピットになってしまったなんて。
あぁ、いや、そんなことはどうでもいい。
問題はその前。
『黒幕』がどうしてアリーゼに包丁を渡したのか、だ。
何かしらの目的があったに違いない。
そしてそれは、チート能力の商売と同じ目的なはず。
今回は明らかにクレスを殺そうとしていた。
前回はなんだろう。
金銭目的でチートを売っているわけでないとなると、シュベールを殺すために思える。
どちらも殺そうとしてのことだが、殺す意味はあるのだろうか。
特に、シュベールとクレスは魔王と勇者の関係。
過去に殺し合いをしたにも関わらず、なぜかどちらも狙われている。
これがベルならわかる。
魔王側を壊滅させたいのだろうと見えてくる。
だが、クレス?
クレスを狙う必要はあったのだろうか。
共通点が見えてこない……。
本当に困った。
しかもその正体……。
最初から私たちは出会っていたんだ。
もしかしたらその時からシナリオはできていたのかもしれないし、その時に私たちは目をつけられたのかもしれない。
何者であるのだろうか。
だが資金を渡したのはただの善意だという可能性もある。
もしかしたら本当に商人で、たまたまアリーゼに包丁を売ってしまった線もあるかもしれない。
ただ、そう考えると可能性は無限大。
考えても考えつきない。
ううむ。困った。
こうしてる今も、命を狙われるかもしれないのに。
シュベール、クレスと来たら?
次はアラタじゃないか?
それとも私?
必ずやどちらかに矛先が向けられる。
手法がクレス暗殺と同じならば、アラタを殺したければ私を。私を殺したければアラタに接触するだろう。
しかし相手も甘くない。
顔を変えるかもしれないし、もっと違う方法で殺しにかかるかもしれない。
どうする。
どうするべきだ。
命を狙われる魔王を助けるつもりが、私たちの命が脅かされるなんて。
どうにかしてアラタは守らねば。
私が。必ず。
ここに来てしまったのは私のせいだから。
よし。そうとなれば研究だ。
防衛のための魔法陣を書くとしよう。
こちらを守るためには、相手を傷つけないといけないのだ。
抑止力が実戦で使われようとしている。
皮肉なものだな。




