62 巡察使 その3
「失礼だが、歳の割にしっかりしているようだ」
巡察使のヤーラが感心したように言う。
確かに幼児があんな事をしたり気に言えば、ビックリするよね。
「人の命を預かる以上、いろいろ教育はされましたので」
言いながら意味あり気にヒイとフウを見る。
こうすれば、彼女たちにいろいろ仕込まれた賢しらな幼児、と思ってくれるだろう。
あ、もちろんヒイたちは変身の魔法で、普通の人族(巨乳)になっている。
「なるほど。あなた方の出身地を聞いてもよろしいかな」
うーん。どうしようかな。
「ニホンという国をご存知ですか」
「いえ」
ヤーラは首を横に振ると、従者や冒険者たちにも聞いてみる。当然知っている者はいなかった。
「そんな誰も知らないような国の出身です。まあ、私は旅の途中で生まれたので、知っているのは聞いた話しだけですけどね」
どうよ。この流れるような嘘。
これで、細かい事を聞かれても誤魔化せるぜ。
「なるほど。随分と長い旅をされたのですな」
「はい。なのでなんとかこの村を軌道にのせて、ちゃんとした生活を送りたいと思っています」
「しかしこの岩場で、良くこれだけの材木を用意できたな」
俺たちの住む(設定になっている)屋敷へと一行を案内していると、冒険者の一人がそんな事を聞いてきた。
「まあ、少し離れてはいるけど、森にはいくらでもはえてますからね」
そう答えながら、痛いところを突いてきたな、と思う。
実際にはモトテートで周囲にはえている木を切り出したあと、転移陣で持ってきている。
イワオ村から還らずの森まで、一番近いところで4キロ以上。切り出した丸太を4キロも引っ張ってくるのは、不可能ではないが面倒すぎる。
たった20人ほどの人数で、家を5軒も6軒も建てるほど、木を運ぶというのは、ちょっと不自然かもしれない。
「なんだって?!」
案の定というべきか、冒険者たちもヤーラも驚いた表情を見せている。
「還らずの森から木を?」
「ウソだろ」
「俺なんて、森の外縁が見えているこの位置だって、生きた心地がしないのに」
あれ?
「いや、こんな危険な位置に村を作るなんて事をする人たちは、考える事が違いますな」
顔を引き攣らせて、ヤーラが言う。
なんか驚かれている部分が、想定と違うぞ。
もしかすると、還らずの森の危険度って、思ったより高目に見積もられているのかな?
だとすると、あれはマズかったかな〜。
俺の視線の先には、還らずの森から帰ってくるオーガの狩人たちの姿が見える。
肩には大きな一角猪と羽ウサギを担いでいる。
取ってくるようにお願いしたのは、俺なんだけどね。
だってまだ家畜を潰すのは、勿体ないし。
一角猪や羽ウサギが、ありふれた獲物だといいなぁ。
そんな事を考えながら、俺はそれが逃避である事を知っていた。
なぜなら、戻ってくるオーガたちに気付いた冒険者が目玉が飛び出るほどに、目を見開いていたからだ。
さーて、どう言って誤魔化すかな。




