第39輪「芝桜」
「……フィン?」
「俺は何も……」
「鎌を掛けただけなのに随分あっさりね……」
動揺を露わにする俺達に対して肩を落とすレイニー様。ロビンが狼狽した時点でアウトだとは思ったが、まさかここまで見透かされているとは思わなかった。
「まぁ、だから私がちゃんと仲間だってことを証明して欲しいのよ。貴方が自らの目で見て、聞いて、判断なさればいいわ。ロビンの言うことならベルナールも信じるでしょう?」
「どうでしょうか……」
「まぁ、たしかに私が秘密を抱えているのは事実よ」
戦慄が走った。ベルナールが言っていたことは事実だったのか、という悔しさと、俺にも話せないことなのか、という哀愁が鬩ぎ合う。
それらを仮面の裏に隠せば、「驚かないのね」と、ぼやく彼女と視線が絡み合った。
「大したことじゃないわ……皆が不利益を被るようなことは絶対ないと約束出来るしね。けれど話したところで信じて貰えるわけがないのよ。だから、その為にもシュプギーの正体を突き止めることが先決なの」
「目星は付いているんですか?」
「ええ。でも次の手紙を読んでから伝えるわね。私の考えを」
「ということは気付いていたんですね。俺がこの手紙を持ってることに」
無表情のまま懐から見慣れた便箋を取り出すロビン。それを差し出すも、レイニー様に受け取る気配は見受けられなかった。
「そろそろだと思ったのよ。シュプギーは貴方が従僕になることを知っていた筈だし」
「知っていた……?」
「ええ。以前の手紙は先にベルナールが開けたんでしょう? 意味は分かったかしら?」
「フィンから聞いてないんですか?」
「ロビンの意見を訊いているのよ」
「俺は……なにも……」
「そう。先に読んでもいいわよ。怪しくなんかないもの」
「分かりました」
「読み上げてくださる?」
「はい」
〝睡蓮の君へ
そろそろ私の正体には気付いた頃かな。会いに来てくれるなら喜んで邂逅を祝いたいね。
少し昔の話をしようか。君がまだ傲慢な、お姫様だった頃の話を。
君は少女に花をあげたことがあったよね。僕は覚えているよ。君の、あの柔らかな笑みを。
君は花に似ている。見た目だけは美しい薔薇の花に。棘だらけの君を私はどう抱けばいい? 薔薇の花束でも贈れば満足かな? 3本の蕾に1本の薔薇なんてロマンチックだね。
開戦はすぐそこだ。美しい花が手折られることのないよう祈っているよ〟
「つくづく詠が上手いのね。吟遊詩人か何かかしら」
「随分熱いラブレターですね」
「ふふ、ロビンにはそう見えるのね」
「薔薇なんて高価なものを贈りたいなんてそうとしか思えません」
「フィン」
「前の手紙を取ってきてくれるかしら?」
「はい」
即座に彼女の鏡台に向かい引き出しに手を掛ける。その中から一通抜き取れば、淀んだ感情が渦巻いた。
ロビンのように俺もコレをラブレターだと思っていた。だからこそ愛の言葉を紡ぐ〝男〟に嫉妬を覚えたのだ。俺は想いを伝えられないのに、と。
「ロビン」
「はい」
「教えてあげるわ。手紙の意味を」




