第80話 成長の兆し
あれから一ヶ月が過ぎた。
夏の猛暑も過ぎ去り、夜は少し肌寒くなって来た。
森の木々の葉も、少しづつ彩りを変え始めている。
俺達パーティは順調そのもので、今はDランクにまで上がった。
理由は明白、死神のコートが大活躍し、狩り効率が段違いになったのが一番の理由だ。
フーバさん曰く、マジックポーチは物凄く貴重で、くれぐれも人前で使うなと、再三に渡って注意を受けた。
詳しく聞いてみると、マジックポーチ自体の数が希少で、畳二枚分の小部屋サイズでも、最低金貨100枚と言うべらぼうな相場と聞いて直ぐに納得出来た。
商人達からしたら、喉から手が出るくらい利用価値があるだろう。
そんな訳で、俺達はひたすらオークを狩りまくり、経験値と資金を稼いだ。
その結果、俺達のステータスも上がっていた。
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【ステータス】
※【】隠蔽中
名前 エント
レベル33
《種族》 人族 【人魔】
体力45 攻撃力51
防御力40 敏捷力42
知識力55 魔力55
《スキル》
刀術Lv4↑
忍び足
魔力操作
生活魔法Lv3
水属性魔法Lv4↑
火属性魔法Lv3↑
【無属性魔法Lv6】↑
【木属性魔法Lv6】
《固有スキル》
【木霊】
《エクストラスキル》
【時の瞳】New
《称号》
【魔王樹の子】
【死神の使徒】New
【時神の使徒】New
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【ステータス】
※【】隠蔽中
名前 ナナ
レベル28
種族 人族【ホムンクルス(魔族×■△○)】
体力39 攻撃力40
防御力32 敏捷力45
知識力30 魔力88
《スキル》
隠密
気配察知
魔力操作
暗殺 New
短剣術Lv4↑
生活魔法Lv1
闇属性魔法Lv4【6】↑
【雷属性魔法レベル6】
《固有スキル》
【変身】
【■△○●■△○】
《称号》
揺らぎなき心 New
【深淵に作られし者】
【契約者エント】
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【ステータス】
名前 パンドラ
レベル45
種族 魔人族
体力35 攻撃力108
防御力105 敏捷力35
知識力15 魔力207
《スキル》
剛力
槍術Lv3
斧術Lv3
《固有スキル》
■△○○□
《称号》
選ばれし者
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一番は、やはりパンドラさんのステータスを見せて貰えた事だ。
この世界では、ステータスを簡単には見せないのが常識となっているのに、ナナが不意に『パンドラさん見せて見せて!!』と聞いた所、あっさりと見せた。
勿論、その後それが不味い事だと、二人とも正座をさせて叱ったけどな。
そんな事件はさておき、パンドラさんのステータスを見て、まず最初に思った事は違和感だらけ、だ。
他の魔族のステータスを確認した事もないので、一概には言えないが、魔法が使えないのに魔力が高かったり、攻撃力や防御力も桁が違う。
そして、気になるのは謎の固有スキルと称号。
パンドラさんが言うには、謎の固有スキルがこのステータスに影響しているのでは、とギルマスから言われていたらしい。
ナナもそうだがパンドラさんも、注意して見ておく必要が有りそうだ。
俺とナナの数値はと言うと、一般人の10を基準に考えれば高く見えるが、冒険者の中ではまあまあと言った所だ。
そもそも冒険者は、魔物から経験値を得て成長していく為、Dランクでは高くても、更に上のクラスにはそれ以上の化け物がゴロゴロいる。
そう言った部分で、冒険者の価値は高い。
更にこのヘルメス近郊では、魔物の数が多く危険性も高い代わりに、冒険者の質も高い為、他の町ではヘルメスの冒険者と言えば重宝されているらしい。
後から知った事だが、実はそれが他国への抑止力になっていると教えて貰った。
まぁ兎に角、発見と成長はあったけれど、まだまだ頑張らないと行けない。
「それで、その……な、なんで私は、桶を持たされているんですか??」
ふっくら亭の裏庭で座り、水の入った桶を膝の上に乗せて、首を傾げているパンドラさん。
「言ったじゃないですか。貴方のトラウマを克服する為に、強さが必要だと。勿論、その為の修行ですよ??」
素敵な笑顔で答えてあげる。
「ひぃえぇ!! その笑顔怖いですよ!?」
今日は久々の休みを取り、俺が昔体験した水心の儀を行う事にした。
パンドラさんと話をしていて気付いた事は、魔法を学んだ事がないという衝撃の事実だった。
ギルマスに問い詰めて聞いてみると、何度も試みたが、小さい時から人見知りが激しく、誰かが教えようとしても近付く事も出来なかったらしい。
ギルマス自身は魔法を使えないらしく、取り敢えず教えれる斧と槍を教えたとの事だった。
(はぁ、魔族が魔法を使えないとか、キャラ設定的にユルセナイ)
早速、死神のコートから、予め買っておいた魔力草の葉を取り出し浮かべる。
ここ一週間程は、瞑想を覚えて貰い、毎日魔力を感じる練習をしてもらっていたので、大丈夫だろう。
「む……むむむむ!!」
バキ!!
「あ……」
桶が割れてビショショに服が濡れる。
思わず張り付く服から見える双丘に、目が釘付けになったが慌てて魔法で乾かして、新しい桶を借りてくる。
……女将さんに怒られた。
「い、良いですか!? 集中してくださいね!! 次は女将さんに叩かれちゃいますから!!」
ふっくら亭の女将さんはとても良い人だけど、怒らせた時のあの雰囲気だけは味わいたくない。
「は、はぃいい!!」
彼女も頭の中で、女将さんの怒った姿が浮かんだのか、唾をごくりと飲み込み、気合いを入れ直す。
「力はいりません。魔力を流すんじゃなくて、通すイメージで僕の時は上手く行ったのでやって見て下さい」
それからしばらく黙って見守る。
(ヒスイ姉さんも、あの時静かに待ってくれてたっけ……皆は元気かな)
「あ、あのエント君?」
桶の中を覗き込んでも変化はない。
「どうしました?? もう疲れましたか??」
「い、いえ……通ったって感覚はあったんですけど、何も変化がなくて。やっぱり出来てないんですかね??」
(魔力が通って何もないなんてあるのか?? でも、パンドラさんは嘘を付くような人じゃない……)
「そ、そういえばどんな変化が起こると、どんな適性ってわかるんですか??」
「火なら水が暖かくなるし、水なら桶に入った量が増えたりと、色々変化します」
「す、凄い!! やってみますね!!」
(あくまで適性が無いと、出来ないんなんだけど……)
「で、出来ましたぁああ!!」
「うそぉ!?」
魔力が高いせいか、桶の中の水は溢れ出ていた。
水に触れてみると、ぬるま湯の様に温かい。
明らかにおかしい状況に、俺は頭の整理が追いつかないでいた。
そもそも順番が逆だ。
(これじゃまるで、適性を変えれるみたいじゃないか……)
その後も、先にどんな変化になるかを教えてから、水心の儀を行ってみた所、なんと俺の知る全属性に適性が出た。
結果が出る度に動揺していく俺をみて、初めは喜んでいたパンドラさんの表情は、徐々に不安気なものになっていく。
「わ、私は何か変なんでしょうか……」
(はぁ、相変わらず人の表情には敏感で、臆病なのは変わらない)
「正直、分からない部分もありますが、出来る事が多いって事は良い事です。まぁその分、鍛え甲斐がありますがね……クックック」
「どひゃ!?」
バキ!!
「「あ……」」




