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第60話 一角兎


「…………る」


 どこか懐かしい声。


「カ……つ……る」


 あれ?? 誰だっけ??


「カケル……ふ……てれば……げる」


 嫌だ……それ以上は言わないで!!




「カケル、貴方が●▲■○△□れば……」




「止めろぉおおおおおお!!」


 俺は飛び上がるように、ベッドから起き上がった。


「はぁはぁ!!」


 嫌な汗が全身から吹き出て、ひどく気持ち悪い。


「んぅ……兄さん??」


 目を擦りながら、隣にいたナナも目を覚ました。


「だ、大丈夫。何でも無いよ」


(もう見ないと思ってたけど、生まれ変わってもだなんて重症だな……)


「ちょっと、顔を洗って来る」


 心配をかけまいと静かに部屋を出て、裏庭にある井戸を使って顔を洗った。


 まだ真夜中、日が昇るにはまだ少し早過ぎる。


 あんな(・・・)夢を見た後に、直ぐに寝れる気がしなかった。


 久々に、人の中での暮らしを始めたからだろうか??


「ああ……もう考えるのは止めよう。今の俺はエントだ」


 綺麗な夜空を見上げながら、頭を切り替えてこれからの事を考えた。


 転生してから、どう生きたいかまではまだ決めていない。


 ただ、今、自分がやるべき事は、自分の専門家になる事だ。


 その為に、冒険者はうってつけの職業だと思うし、ギルドカードを手に入れれたのも第一歩と言える。


 これから様々な国を回るにしても、高ランクのギルドカードがあれば、かなり融通が効くはず。


 まずは冒険者のランクアップ、併せて実力アップと装備の充実を図る為の資金も必要だ。


「良し、やるか!!」


 自分の道筋を明確にした後は、妙なやる気が出て来て、そこから修行を始めた。


…………


……


「それで?? 兄さんは朝まで修行していたの??」


「……はい」


 部屋に戻ると、何故かナナは凄い剣幕で俺は正座させられた。


「自己管理も大事って、言ってたのは??」


「……俺です」


「ナナに言う事は??」


「……ごめんなさい」


「宜しい……だけど、次やったら許さないからね!!」


 ああ……怖かった。


 そんな残念な朝を迎え、今日もふっくら亭で朝食を食べギルドに向かった。


「ちゃんと今日も、うちに泊まれるように頑張んな!!」


 バシッと、女将さんにも気合を入れて貰う。



 痛かった。



 ギルドに到着すると、パンドラさんと合流して町の北側から外に出た。


 二日目も変わらず、目的は薬草採取だ。


 昨日の結果を考えても、禄な装備も無い中で無理する必要はない。


 そう言えば、前を歩くパンドラさんの箱は今日は黄色だった。


 何を基準に色を決めているんだろう……その日のラッキーカラーか何かかな??



 閑話休題



 俺達は昨日採取したエリアとは違う場所で採取する。


「今日も薬草採取、頑張りましょう!!」


 やけに気合が入ったパンドラさんはそう言って意気込む。


「パンドラさん、やる気満々だね!!」


「ふふふ、き、今日はナナちゃんに負けませんからね」


 二人の間に火花が飛び散るような何かを感じたが、まぁとにかく頑張って欲しいところだ。


「今日は午前中の薬草採取である程度取れれば、午後に時間を作って試したい事があるんだ」


「何かするの??」

 

「私、あ、余り難しい事は……」


「これからの俺達にとって重要になる、戦闘訓練をしたいと思っています」


「「おおお!!」」

 

 二人がパチパチと両手を叩く。


(いつの間にか、息ぴったりだな……)


「まぁ、それも薬草次第、それじゃあさっそく始めよう!!」


「「はい!!」」


(さてと、今日も稼ぎますか!!)


 俺は昨日と同じように、ナナに気配察知で周りを確認させた後、山彦で薬草の在り処を把握してどんどん採取して行った。


 他の二人もニ回目と言う事もあって、初日よりは多く採取出来たようだ。


 結果、その数なんと四百四十本、金額にして銀貨22枚だ。


 一人当たり、銀貨7枚なら上出来だろう。


「ナナの勝ち!!」


「ぐやじぃ〜!!」


 喜ぶナナは合計百本で、悔しそうに地面を叩くパンドラさんだったが、今日は九十本も採っていた。


 意外とパンドラさんは薬草採取の才能があるのかもしれない。


「パンドラさん上出来ですよ。これならお昼から戦闘訓練出来ます」


「はへ!?」


 褒められて嬉しかったのか、箱を両手で抑えながら、くねくねと変な踊りを始めた。


(やめろ!! 俺の大事な何かが削れる!!)


 三人で昼食を食べ終わった後、戦闘の連携方法を打ち合わせした。


 基本的なパターンとして、ナナの闇魔法で相手の視界を遮り、パンドラさんの槍攻撃から、引き際を見て俺の火属性魔法『ファイアボール』で攻撃する。


 それでも仕留めきれない場合、ナナの隠密攻撃から再びパンドラさんの槍攻撃と繋げて行く予定だ。


「と、そうは言ってもまずは実践あるのみかな?? 最初は一角兎で試したいんだけど、ナナ頼めるか??」


「ガッテン!!」


「やめなさい」


 魔の森に近い平原で、ナナの気配察知を頼りに一角兎を探す。


 暫く歩いて探すと、ようやく発見した。

 

「ギィ!!」


 一角兎は両手に乗るサイズの、角が生えた兎でとても警戒心が強く、普段はほとんど巣穴で生活している為、見つけるのが難しい獣だと聞いていた、が、ナナの気配察知と俺の山彦があればそこは問題にはならない。


 一角兎は小さくて素早い為、直ぐに三人で取り囲む。


「良し、ナナ始めてくれ!!」


 ナナは首を縦に動かした後、両手を前に突き出し魔法を展開させる。



『ダークミスト』



 一角兎の周りから、黒い霧が徐々に拡がって行く。


「次、パンドラさん!!」


「はぁあああああ!!」


 彼女は凄い勢いで、鉄棒の先端を突き放った。



 ドォオン!!



 一角兎の上半身と下半身の間にまるででかい弾丸にでも撃たれたような穴が出来上っていた。


「パンドラさん凄いですね!!」


 鉄の棒でもこの威力は、嬉しい誤算だ。


「本当に凄いね!!」


 それを聞いたパンドラさんは、変な踊りを踊っている。


「つ、次はナナから俺、パンドラさんパターンで!!」


 それから移動と討伐を繰り返し、色々なパターンを試して行った。


 今日も夕暮れ時にはギルドに戻り、クエスト報告してから、今日の換金タイムに移る。


「おう!! 査定が終わったぞ!!」


 フーバさんに呼ばれ、今日の成果を確認する。


「薬草が四百四十本で銀貨22枚。一角兎の方は、全身丸焼けだとか、肉用に出来る場所に大穴が空いてたりとかで、ほとんど買い取れねぇぞ??」

 

「ぐ!!」


「何をやったらこんなんなっちまうのか知らねぇが、一角兎は皮と肉が買い取りの重要なポイントだ。冒険者で飯食ってくなら、無駄の無いように狩らねぇとな!! はっはっは」


 フーバさんのアドバイスに間違いはなく、ついつい稼ぐよりも連携を優先してしまった結果だった。


(はぁ……調子に乗って、色んなパターンを練習したからなぁ)


 結局、今日は銀貨7枚を三人で分けて、パーティ資金へは1枚貯金するだけとなった。


 買い取れない一角兎は、俺の(・・)背負い袋に食べさせた。

 

 ゲップ!!


 そこの君、何も聞こえなかった……いいね??


(見てろよ……明日はもっと稼げるようになってやる)


 俺は確かな手応えを感じつつ、ふっくら亭に戻るのだった。

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いつも読んで下さりありがとう御座います!

劣等魔族の成り上がり〜病弱なこの子の為にダンジョンで稼ぎます〜


こちらの新作も是非お楽しみ下さい!
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