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第56話 冒険者ギルド

「ん……あぁ!!」


 目覚めの良い朝だ。


 長旅で気を張っていた疲れと、屋根の下っていう安心感が合さって、泥のように眠ってしまった。


 勿論、用心する為と修行の一環の為に身体強化は使っていたけどな。


 いつものように、隣で気持ち良さそうに寝ているナナを見て、ため息を洩らして肩を揺さぶった。


「ん……んんぅ」


 ナナが魔王樹ファミリアに来た時からずっと、毎日俺の葉っぱ布団に忍び込んで来る。


 あの時は、兄さん姉さんに対しても警戒心があったし、俺も新しく出来た妹が可愛くもあり、気にしないで一緒に寝ていたけど……そろそろ何とかせねば色々不味い。


「ほら、起きろっ」


 寝惚けるナナを無理矢理起こし、朝食を食べた後はいよいよ冒険者ギルドに向った。


 ちなみに朝食のパンは、宿の名前通りふっくらモチモチしていてとても美味しかった。


 他所の宿じゃ一気に作り置きしたカチカチのパンが出されるのが一般的らしいけど、ここでは毎日焼き立てが食べれるし、一緒に出されたスープに浸して食べれば、更に味が染み込んで旨かった。


 初めて食べるパンにも、ナナは「旨ぁああ〜〜」とほっぺを抑え、今にも天まで昇りそうな顔をしていたのには笑ってしまった。


 ふっくら亭を出る際には、おかみさんから「上手く稼げたらまた来ます」と伝えると、嬉しそうにーー


「若いんだから、しっかりやんな!!」


 と、背中をバシッと叩かれ、気合いを注入して貰う。



 痛かった。



 ナナにも伝えたが、もう俺達の資金はほぼ空っぽだ。


 今日から頑張って稼がないと、また野宿生活になってしまう。


(まぁ、最悪野宿でも問題無いけど、スラム街は危険だと聞いたし、せっかく町に来たんだから、なんとか人らしい生活を楽しまないとな)


 昨日の時点で、おかみさんから冒険者ギルドへの道は聞いていたので、迷う事もなく到着する事が出来た。


 建物は石造りの三階建てで、看板には斧と剣と盾のマークが描かれている。


(おおお!! これが冒険者ギルド!! テンプレ来る!? やっぱ来るのか!?)


 などと想像を膨らませ、妙に胸が高鳴っるのを感じながら、扉を開け中に入った。


 中の一階部分から三階まで吹き抜けになっていて、至るところに木が使われた構造は、俺好みの空間だ。


 真っ直ぐ向かった先にはカウンターがあり、受付などの業務を行っているようだ。


 カウンターは窓口が三つあって、職員と思われる人達は皆ビシッとした制服で、今も忙しそうに働いている。


 入って直ぐ左側には二階へ登る階段があり、上にも冒険者らしき者達の笑い声が聞こえ、右側にはテーブルや椅子がいくつも並べてあって、食事出来るスペースなのか、朝からガヤガヤと賑わいを見せていた。


 俺達が入ると直ぐあちこちから視線を感じたが、気にせずにカウンターへ向う。


(おいおい……何だこれ……)


 真ん中と右側は行列が出来ているのに、一番左側は誰一人並んでいない。


 不思議に思って、視線を左側の受付へと向けると、直ぐに理由が分かった。


 箱だ(・・)


 いや、正確には箱をかぶった謎の受付が座っている。


(な、なんだあの人!? 怪しすぎる……は、やばい!! ちょっと目が合っちまったぞ!?)


 箱をかぶった受付は、目が合うや否や、必死に手招きして来る。


 き、気まずい!!


 だがしかし、他の人が並ばないのには、何か理由があるはずだ。


 俺達にはまだ情報が少な過ぎる。


(ここは気付かぬ振りをして、やり過ごすのが吉!!)


「あ、兄さん、呼ばれてるよ!?」


「ナナ!! ちょ、ちょっと待て!!」


 ナナは何も気にせず、空いている左側のカウンターに向かって行った。


(いやぁああああああああ!!)


 必死に止めようと追いかけたがーー


「こんにちわ!!」


 時、既に遅し……ただまぁ、受付に立たせているくらいだし、そこまで変な人じゃないだろう。


「ぼ、冒険者ギルドへ、ようこしょしょ!!」


(噛み過ぎだよ!!)


 俺達の行動をみて、周りの冒険者達がざわざわつき始めた。


「……まじかよ。あいつら新人か??」

 

「終わったな……なんも知らないなんて可哀想に」


 そんなネガティブ発言が聞こえて来て、ますます不安が膨らんだが、今更引き下がれるはずもない。


「こんにちわ。今日は兄弟で冒険者登録に来たんですが」

 

「ひゃ!? ひゃい!! 少々おまちくだされ!!」

 

(なんでサムライ語!?) 


 目の前でバタバタしている受付は、声の高さから直ぐに女性だと分かった。


 箱の下の方から紫色のロングヘアがはみ出ていて、身体付きも丸みがあるし間違い無い。


(……Dカップぐらいか……ゲフンゲフン)



 ダン!!



「ど、どうかされましたか!?」


「な゛!? 何でも無いですよ」


(足がぁぁああああ!! ナナちゃん足ぃいいい!!)


 笑顔のナナが、顔を近付けて囁く。


「ユルサナイヨ??」


(ひぃいいいいいい!?)


「こ、この書類に必要事項を記入して下さい!! もっしもっし字が書けない場合は、代筆しまふからぁ」


(亀さんの歌を、歌いたくなるから止めろ!!)


「字は書けるので、大丈夫ですよ」


 そう答えると、彼女は用意されたペンを持ち、小刻みに震えながら差し出して来た。


 バキ!!


「あああああ!?」


 ペンは目の前で粉々になり、痛々しい雰囲気になった。


「…………」


 まるでこの世の終わりのような雰囲気を(かも)し出して、ブツブツ何か言っている。


「……9999本目の破壊……ふふふ、もうペンの魔王になった気分だわ……はぅ!? そうだ……どうしよう!? また給料から天引きされちゃぅよぉ。もうこれ以上給料下がると、生きていけないよぉ……」


「エント兄さん、この人面白い人だねぇ!?」

 

「こら、人をからかうのは良くない」


「えぇ……褒めてるだけなんだけどなぁ??」


「あの、代わりのペンを頂けないですか?? 早く登録したいので」


「は!! すいません、すいません!!」

 

「大丈夫です。ゆっくり待ちますから、落ち着いて対応してください」


 こういう人は、急がば回れという気持ちで、ゆっくり事を進める方が返って早い。


「……ありがとう御座います」


 その後、なんとかペンを受け取ると、登録の申し込み用紙に記入して行く。


 内容は、名前、出身地、特技、スキル欄があるだけで、最悪名前だけでも登録は出来ると旅人さんから聞いていた。


 ナナには予め、名前と隠蔽していないスキルを書くように言ってあるので問題無い。


 最低限の強さが無いと、ギルドがクエストの受注を止める場合もあるらしいから、それで充分だろう。


 ペンをナナに渡すと、その間に確認したい事を箱の人に聞いておく。


「挨拶が遅れてすいません。私はエントでこっちが妹のナナです」


「あわわ!! 受付のパンドラでした」


(なんで過去形!?)

 

「えっと、パンドラさんにギルドについて確認したい事があるんですが、間違っているところがあれば教えて下さい」


(パンドラさんから聞くよりも、答え合わせ形式の方が早そうだからな)


「へい!!」


(もうわざとだよね!? やめろよ!! ツッコミたくなるだろ!?)


 俺は旅人さんから教えて貰った、冒険者ギルドの内容をパンドラさんに話して確認して貰った。


 1.冒険者ギルドは、どの国にも干渉されない組織であり、国及び種族を超えた組織である。

 

 但し、魔物等の異常発生の際は、緊急クエストがギルドマスターの判断で発注される場合があり、Cランク以上の冒険者において強制徴用に応じる義務がある。


 2.冒険者ランクについて、Fランク〜Sランクまで存在し、クエストと呼ばれる一定数の依頼を達成する事でランクアップしていくシステムであり、一つ上のランクのクエストまでしか受けられない。


 3.冒険者ギルドに加入すると、一定のサービスが受けれる。


 1)町村等の移動の際にかかる入場税の免除

 2)国による徴兵を断る権利

 3)ギルド施設にある情報の閲覧(ランクで閲覧範囲変動)

 4)ギルド施設の使用(素材の買取り、ギルド運営施設の割引)

 5)ギルドが斡旋しているクエストの受注、依頼


 4.冒険者ギルド加入者の義務。


 1)冒険者はランクに応じた年会費を納める事

 2)冒険者同士の問題は直接干渉はしないが、ギルドに不利益だと判断した場合は、ランクの降格及びギルド追放処置で対応する。

 3)冒険者は依頼に対し、不正行為、脅迫等が判明した場合、上記同様に降格、追放処置、さらに場合によっては討伐依頼を発注する。


「パンドラさん。俺が知っているのはこんなところなんですが。補足とかあったら教えて下さいね」

 

「ふぁ!? えと、えと、大丈夫ですね!! あ、登録料は一人銀貨五枚で、後Fランクの冒険者さんの年会費は二ヶ月間の間に銀貨ニ枚を納めて頂いたら大丈夫……デス!!」

 

(いかん……この人のペースで頭がおかしくなりそうだ。だが、ちゃんと話は聞いてくれていたみたいで良かった。でもその内容なら、年会費は早く払っておきたいな……)


「パンドラさん、書けたよ!!」


 ナナが申し込み用紙と、登録料の銀貨十枚をパンドラさんに渡す。


「う、うけとられました!!」


(何を受けて取られたんだよ!?)


「エント兄さん、息が上がってるけど大丈夫??」


「はぁはぁ……ま、まだ大丈夫だ」



 裏方に消えて暫く経つと、パンドラさんがバタバタと落ち着き無く戻って来た。


(……ちょっと待てよ、何があった!?)

 

 箱の色が真っ赤に変わっている。


「パンドラさん帽子の色変えたんだ!? 赤いのも可愛いね!!」

 

「そこじゃ無いだろ!? ゴホン、すいません、出来ましたか??」


「は、はい!! このギルドカードの裏にある魔法陣に、血を一滴垂らして頂ければ、登録完了ですん」


(語尾が安定しないな、おい!!)


 渡されたギルドカードは木製の造りで、裏には細かな魔法陣が描かれ、端っこに穴が開いて細いチェーンが通されている。

 

 さっそくナナと一緒に針を指して血を垂らすと、僅かに青白い光が発光して直ぐに治まった。


「ん?? なんだこれ??」


 ギルドカードの裏に何か浮かび上がって来た。


「可愛い!! パンドラさんの顔が出て来た!!」


「ぎゃはははは!! こいつ等阿呆だ!! とんだ阿呆ルーキーが現れたもんだ!!」

 

 そう言って現れたのは、筋肉ムキムキの山賊風冒険者達だった。




 俺達は知らぬ間に、テンプレのフラグを回収したようだ。

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いつも読んで下さりありがとう御座います!

劣等魔族の成り上がり〜病弱なこの子の為にダンジョンで稼ぎます〜


こちらの新作も是非お楽しみ下さい!
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