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第55話 商業都市ヘルメス


「や、やっと町が見えて来た……」


 約三週間にも及ぶサバイバル的強行で、俺の足はもうジ○ンガの後半戦のようだ。


「エント兄さん、早く早くぅ!!」


 妹よ、何処にそんなエネルギーが残ってるんだい??


 町に近付くに連れて、ここヘルメスでも高い城壁に囲まれ、周囲には広い畑が見えたが、ただ以前行ったセピアよりも遥かに規模が大きい。


 石造りの橋を渡ると、その下には大きな川が流れているのがわかり、橋沿いを歩くナナが何かを見つけた様子だ。


「エント兄さん!! あそこに人が沢山いて何かに乗ってるよ!?」

 

 何もかもが珍しいナナは、興奮気味に下の方を指を差した。

 

「あぁ、あれが前に一度話してた船だ。売り物か何かを乗せて、この港に下ろしているんだろう」


「へぇ、あれが船なんだ!! 凄いねぇ!!」


「今度機会があったら乗ってみるか??」


「良いの!? ふぁあ、早速楽しみが増えたよ!!」


 俺からしたら木で出来た簡素な船に見えても、ナナにしたら全てが新鮮で新しく、こういったところは羨ましく感じる。


「さて、もう夕方だし急ぐぞ。町に入って宿を取らないと」

 

「うん!!」


「あと、うひょ。そろそろ町に入るからくれぐれも声を出さないでくれよ??」


「うひょ!!」


「ふふふ、分かってるって言ってるよ」


「……」


 不安過ぎる……が、行くしかないか。


 橋を渡りきると、鎧を来た兵士達が検問していた。


 さすがは都市と行った所か、馬車が通れる正門と通行人が通る門の両方に行列が出来ていて、俺達もさっさと列に並び、順番を待つ事にした。




「次の者」


 ナナにあれやこれやと説明したり、うひょが声を出さないかとドキドキしていたせいなのか、いつの間にか俺達の順番になった。


「こんにちわ」


「まずは訪問の目的を答えよ」


「はい。私達は兄弟で冒険者になる為に来ました」


「ふむ、新米冒険者か。通行税は一人銀貨一枚だ。この町にある冒険者ギルドに加入して、次回からカードを提示すれば通行税は免除される。覚えておくと良い」

 

「わかりました」


 用意していた銀貨二枚を兵士に渡す。


 過去のように年齢で引っかかる事もなく、内心でホッと息を吐く。


「最後に二人共ステータスの提示をしてくれ」


(来た……)


 俺はナナを見て小さく頷き、先に提示する。




 ※【】隠蔽中



 『ステータス』



 名前 エント 


 レベル13


《種族》 人族 【人魔】


 体力25  攻撃力17


 防御力17 敏捷力20


 知識力35 魔力30


《スキル》

 

 刀術Lv3

 忍び足

 魔力操作 

 生活魔法Lv3

 水属性魔法Lv3

 火属性魔法Lv2

【無属性魔法Lv5】

【木属性魔法Lv6】


《固有スキル》

 【木霊】


《称号》

 【魔王樹の子】

 【死神と時神の観察者】


 

「ほぅ、若いのにステータスが高いな。ただ、水魔法と火魔法は相性が悪くて残念……ゴホン!! 冒険者になるなら、刀術を鍛えるしか無いな。まぁ直ぐにはくたばらんだろうから頑張れ」


(おい……そんな哀れな奴みたいな目で見るなよ!!)


「あ、ありがとう御座います」


「では、そちらの娘も提示してくれ」


「分かりました!!」


 ナナは特に緊張もせず、微笑みながらステータスを見せる。


 俺はそれを見て、逆に心配になって心臓のリズムが跳ね上がる。



 ※【】隠蔽中


 『ステータス』


 名前 ナナ


 レベル12

 

 種族 人族【ホムンクルス(魔族×■△○)】


 体力18  攻撃力15


 防御力10 敏捷力21


 知識力15 魔力70


《スキル》


 隠密

 気配察知

 魔力操作

 短剣術Lv2

 生活魔法Lv1

 闇属性魔法Lv2【5】

【雷属性魔法レベル6】


《固有スキル》


【変身】 


【■△○●■△○】


《称号》


 【深淵に作られし者】

 【契約者エント】



「これは凄い……」


 驚いた顔をしている兵士が黙り込むものだから、俺は緊張で固唾を飲む。


(な、なんだ?? 隠さなきゃ不味い部分があったのか!?)


 ナナは笑顔のまま、首を傾げて待っている。


「魔力70だと!?……ゴホン、失礼。魔力が非常に高くて驚いた。スキル的にシーフっぽいが、魔法を磨けば凄い冒険者になれるかもな!!」


「ありがとう御座います!!」


 兵士は鼻の下を伸ばし、ナナはお辞儀して嬉しそうだ。


(はぁ、なんともなくて良かった。成人の平均値が10としか聞いて無かったからな……)


「弟の面倒も大変だろうが頑張ってな。ようこそ商業都市ヘルメスへ!! 通って良し!!」


(いやいや、俺が兄ですけど!?)


 喉まで出かかった言葉をぐっと我慢して、ナナを連れ無事に町に入る事に成功した。


 なんであの時、突っ込みを入れなかったかと聞こえて来そうだから言っておくが、一緒にいるのはナナとうひょだぞ!? 余計なボロが出そうだろうが!!


「ぷひょ……」


「ふふふ、駄目よ、うひょ。馬鹿にしたら……ぷ」


「ぬぅあああああ!! お前等、人の気も知らないでぇええ!!」

 

「まぁまぁ兄さん。無事に入れたんだし、取り敢えず宿を探すんでしょ??」

 

「そ、そうだな。旅人さんが用意してくれた銀貨は残り十八枚だから、ギルドの登録料を考えると余り贅沢は出来ないけどな」


 町の中は、幅広い石畳の道が続き、馬車がすれ違っても余裕がある程だ。


 道の両側には歩道も完備されていて、沢山の人々が行き来しているのが見える。


「ふぁ……凄い人だ。あ、あの人、兎の耳!! あっちは猫っぽい人もいるよ!?」


「人に指を刺さないって教えたはずだが??」


「あ、ごめんなさい……」


「でもまぁ、俺も獣人を見るのは初めてだから、気持ちは分からんでもない」


 この世界の獣人は、耳と尻尾以外は殆ど人族と変わらない者が多いようで、あの兎耳の娘とか、ロングヘアに兎耳がとても可愛いし、胸もボインボインちゃんで俺の視線も縦に揺れーー


 ダン!!


「足がぁあああああ!!」


「兄さん……だらしない顔して、ナニを見ていたの??」


「ナ、ナニも見ていないさ。あ、あそこの屋台でおすすめの宿の情報を聞いてくる!!」


 慌ててその場から逃げ出すと、屋台に行って銀貨一枚を払い、肉串を三本買って店のおっちゃんにおすすめの宿を聞いた。


「買ってくれてあんがとよ。そうだなぁ飯が上手くてお手頃の宿ってんなら、ふっくら亭に行ってみると良い。あそこのパンは柔らかくて美味ぇからな」


 肉串のおやっさんに、場所を聞きながら肉を頬張った。


(旨!! 何の肉か分からないし、調味料は塩だけだが、豚肉に似てるのにそこまで脂っぽくないから沢山食べれる!?)


「おやっさん有り難う。さっそく行ってみますね!!」

 

「おぅ!! こっちにもまた来てくれよな!!」


「兄さん、何自分だけ食べてるの??」


 ほっぺたを膨らませながら、俺がもぐもぐしてるのをジト目で見詰めていた。


「ナナの分も買って来たから怒るなよ。ほら」


「やった!!」


 一本を俺の皮袋に突っ込んでうひょにも渡すと、時間もなさそうなので、二人で食べ歩きながら目的の宿を目指した。




「ここがふっくら亭か」


 もう暗くなっていて、外観は良く見えないが二階建ての建物で、店の看板にはしっかりと『ふっくら亭』と書いてある。


 入口の扉は開いていて、中の光が外に漏れ賑やかそうな音が聞える。


「こんばんわ」


 さっそく中に入ると、直ぐに恰幅の良いおばさんが出て来た。


「いらっしゃい。食事かい?? 泊まりかい??」

 

 食事だけもやっているのを知り、部屋の奥を覗くと部屋には丸テーブルで食事を楽しむ人達が大勢見えた。


「妹と二人で泊まりたいんですが、部屋は空いていますか??」

 

「個室は一人一泊で銀貨三枚。二人部屋は一泊銀貨五枚。朝食はサービスだけど、それ以外は下で注文して別料金になってるよ。お湯は桶に一杯で銅貨十枚で用意する。どうするんだい??」

 

「分かりました。二人部屋で一部屋お願いします。あと、お湯は桶にニ杯分下さい」


 俺は銀貨六枚を渡して、お釣りを受け取った。


「あいよ。これが鍵で二階の一番奥の部屋だよ」


 言われるまま二階に上がり、部屋を開けると簡素なベットが二つと机が一つのシンプルな木造の部屋だった。


「兄さん!! お家の中って凄いね!!」


 いちいち反応が新鮮なナナを笑いつつ、荷物を机においてベットに倒れ込む。


(はぁ……疲れた。けど、何とかここまで来れたな)


「うひょ!!」


 皮袋から顔を出して、うひょが出てきた。


「うひょさんやお疲れ様。だけど、声は最小限でな」


「うひょぉおお!!」


 言ってるそばからこれだ……


 コンコン!!


「お客さん。今、変な声が聞こえたけど大丈夫かい??」


「ふぁ!? だ、だ、大丈夫です!! ちょっと発声練習してただけですから!! うひょぉおお!! や、やっぱり高い声が出ないなぁ……」


「そ、それなら良いんだけどねぇ。お湯二杯入り口に置いとくから、使い終わったら、明日の朝にでも下の裏庭に置いてくれれば良いからね」

 

「わ、分かりました。有り難う御座います」

 

 すぐさま扉に耳を付け、おかみさんの足音が階段を降りるのを確認して崩れ落ちる。


「はぁ……うひょさんや、約束守れなかったらその辺にポイするからな!!」


「ぷっひょ!! ぷっひょ!!」


「まぁまぁ、二人とも今日は無事に町に入れたんだから。それより、もうナナは眠くて……」


「ナナ、お湯を使って身体を拭いてから寝てくれよ?? あと、俺は下でこの街で必要な情報を集めて来るから、先に寝てて良いからな」


「はぁい」


 うとうとしながら服を脱ぎ始めたので、慌てて外に出る。


 最近は出るところも出て来たから、ナナにもそう言うエチケットをそろそろ教えないと。


 下へ降りてカウンターに座ると、安いエールを一杯注文して情報収集に勤しんだ。


 が、さすがに疲れていたのか、有益な情報をある程度集めた後、猛烈な眠気に襲われ、部屋に戻って泥のように眠りに付いた。




 明日はいよいよ冒険者ギルドだ。

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いつも読んで下さりありがとう御座います!

劣等魔族の成り上がり〜病弱なこの子の為にダンジョンで稼ぎます〜


こちらの新作も是非お楽しみ下さい!
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