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第54話 魔の森を抜けて

 

 俺達二人と一匹(・・)は、目的の町に向うべく森を歩いていた。


「うひょ!! うひょ!!」


「はぁ、心配だ……」


 俺達はフード付きの厚手のマントを纏い、皮袋を背負って移動しているが、俺の皮袋からはうひょが顔を出して嬉しそうにしていた。


「何度も言うけど、人前では絶対声を出したり姿を見せたりしないでくれよ??」


「ぷひょ!! ぷひょ!!」


「本当に分かってんだろうな……」


「ふふふ、大丈夫よ。「心外だし!!」とか言ってるけど、うひょはとても賢いもの」


 当初の予定は、俺とナナで旅に出るはずだった。


 うひょにその事を伝えたところ、何故かついていく気満々になってしまい、ファミリアと生活するように説得を試みたが、こいつはそんな甘い生物じゃなかった。


 それから一日中、肩に乗っかってひたすら「うひょ!! うひょ!!」と言ってくる。


 朝も昼も夜もだぞ!?


 少し気になって、うひょが何と叫んでいるかをナナに聞いたところ「兄さんが知ってしまったら、傷ついて立ち直れない……」と涙目で言われた。


 え?? 俺、どんだけ酷い事言われてんの!?


 そんな事が何日も続き、結果的にはナナもいるし、意思疎通も可能だからとじぃちゃんにも言われ、渋々承諾するはめになった。


 出発前からそんな不安要素を抱えつつ、俺達は目的の町へ向う。

 

 旅人さんから教えて貰った情報によると、この大陸は魔の森を中心に考えて、大まかに東側が広大な人族領、南西側に森林や草原が多数存在する獣人領、北西側には山脈に囲まれた魔族領がある。


 それぞれ未だ敵対している関係にあり、ここ数十年は戦争は起こっていないものの、過去東側では魔族と人族が、南側では獣人族と人族が、そして山脈を隔てながらも魔族と獣人族が何度も争って来た歴史があった。


 そんな中、魔の森は三つの国に挟まれた場所に有り、獰猛な魔物が数多く生息する広大な樹海は、ある意味で争いの緩衝材にもなって来たと旅人さんから教えて貰った。


 相談して決めた行き先は、魔の森から真っ直ぐ南側に位置するとある町だ。


 その町は特殊な成り立ちで作られた経緯があり、三国間での貿易が活発に行われ、あらゆる種族が生活していると言われる商業都市だ。


 色んな物を見たいという俺達の要望から、まずはその商業都市を目指すのが良いと勧められ、行ってみる事に決めた。


 のは良いんだけど、改めて森の中を進んで思った事がある。


 この森広すぎる……


 俺達が出発してもう一週間が経過していたが、一向に先が見えない。


 さらに『山彦』をこまめに発動させ、無駄な戦闘を避けてはいるけれど、どうにもなら無い場合もある。


 今もまさに、そのどうにもならなかったパターンだ。


 目の前には俺の腰くらいの体長で、黒ずんだ緑色の肌に、人に近い形をした魔物がいる。


 尖った耳と尖った牙、前世で読んだ本の内容と殆どそのままの特徴を持つあいつだ。


 魔物の名はゴブリン。

 

「ギギ!!」


「ナナ!! そっちに行ったぞ!!」


 ゴブリンのパーティと遭遇し、残り一匹がナナを襲おうとしていた。


 バチバチッ!!


 ナナの雷魔法がゴブリンに直撃し、煙を上げて敵は倒れた。


「大丈夫か!?」


「エント兄さんは心配し過ぎよ」


「油断大敵だって、いつも言ってるだろ??」


「はいはい。だけど兄さんの『山彦』でなるべく避けてるのに、この魔物の数は大変だねぇ」


「ああ、いかに魔王樹ファミリアが安全だったか、身を持って感じるよ……」


 ファミリアでの平穏な生活は、キラ兄さんの巡回は勿論、他の兄弟達のおかげだったのだと今更ながら実感して、何だかジーンと来た。


 そんな事を考えながらも、手は休まず動かしている。


 胸の辺りにナイフ差し込み、小指の先程しか無いサイズの魔核を取り出してうひょに渡す。


「うひょ!!」


 元気良い返事をして魔核を咥えると、ゴソゴソと皮袋へ潜って行っき、どうやら俺の皮袋の整理整頓をしてくれるらしい。


(助かるんだが、何か違う気が……まぁいいか)


 それはそうと、魔核を集めるのには理由があった。


 俺達の直近の目的は、やはり町での生活、その為には食べて行けるだけの収入が必要な訳で、それは詰まり仕事をしなければ生きていけないという事だ。


 この件についても旅人さんから情報を教えて貰い、俺は迷わず冒険者になると決めた。


 そう、この世界にもラノベ本によくある冒険者ギルドが存在していた。


 初めて旅人さんにその存在を聞いた時は、思わずガッツポーズした。


 そこはほら、ああいった本を読んだ男の子なら憧れるじゃないか!!


 ただ、現実はそう甘くないようで、クエストと呼ばれる様々な依頼をギルドが斡旋していて、慈悲なくマージンを取られ、さらには死亡率はかなり高いのに、収入はランクを上げない限りは割に合わないと言われた。


 また、冒険者の多くは、職に付けなかったならず者も多く存在し、殆どの者が宵越しの銭は持たないタイプの馬鹿ばっかりだとも聞いた。


 閑話休題


 とにかく、生活を始める上で資金は多い方が良いと言う訳だ。


 じぃちゃんと旅人さんに釘を刺されたんだが、成人したのだから身体一つから始めるべきだと、お金になるような物はほとんど持たされていない。


 正直、はじめは少し厳し過ぎないかと戸惑(とまど)ったけれど、良く考えてみるとそれは過去いた世界の平和ボケした感覚であって、寧ろこっちの方がやる気が出るし、自立という意味でも良いのかもしれない。


 食糧は森の中で生活して来た俺達には全く問題無かった。


 食べれる山菜や野草、木の実は熟知していたし、移動しながらその日食べる量を確保して二人で交代しながら睡眠を取る。


 相変わらずナナは引っ付かないと寝れないらしく、まだまだ子供な一面を見せてくれるのは兄として少し微笑ましい。




 そこから更に十日が過ぎ、ようやく森を抜けた。


 さすがに長期間の睡眠不足と疲労の蓄積が溜まっていただけに、抜けた時は嬉しくなって思わず二人で叫んでしまったくらいだ。


 そこからは獣や魔物達とはほとんど遭遇せずに道を見つけ、とうとう目的の商業都市ヘルメスに到着した。

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いつも読んで下さりありがとう御座います!

劣等魔族の成り上がり〜病弱なこの子の為にダンジョンで稼ぎます〜


こちらの新作も是非お楽しみ下さい!
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