第40話 エント対シャドウ
《いやはやぁ、第一試合から白熱した戦いでしたね。キラさん振り返って見ると、全体的にうひょ選手のペースだったように感じますがどうでしょうか??》
「シューシュシュ!」
《ふむふむ、最初の挑発から全て計算されていて、相手の隙を探りながら、自分の大技に持ち込むという戦略は見事だった。と言う事ですね。しかし、気になるのはあの巨大化ですが、あれはどういったスキルなんでしょうか??》
「シュ、シュシューシュシュ」
《なるほど、うひょ選手が食べていた球根には『巨大化』の効果があったのでは、という見解ですね。解説ありがとう御座いました。さて、次のカードはエント選手とシャドウ選手の対戦となりますが、これもまた見応えのある戦いになりそうですね》
「シュ!! シュシュシュ!!」
《そうですね。魔王樹ファミリアの家族になったばかりの人魔エント選手は、まだ子供でありながら木属性魔法や無属性魔法、そして体術などの激しい修行を行っていたと聞きました。代わってシャドウ選手ですが、私の集めた情報によりますと、珍しい闇属性魔法の使い手との事ですね》
「シューシュシュ!!」
「はい、とても楽しみですね!! さて、いよいよ第二試合が始まりそうです!! おやおや?? それに併せて周りの応援も白熱して参りました!!」
ドン!! ドン!! ブォオオオオオン!!
ドン!! ドン!! ブォオオオオオン!!
甲虫一族の応援は、迫力ある脚音と羽音を使った独特なリズムを作り出し、滅茶苦茶かっこいい。
(これがホントの鼓舞ってやつなんじゃないのか??)
「お前ら〜!! 刺されたいか〜!?」
Noooooooooooooooooo!!
「あいつ等にワビさせたいか〜!?」
Uoooooooooooooooooo!!
「エントが負けたら〜全員で串刺しだ〜!!」
Uoooooooooooooooooo!!
「やめろよぉおおおおお!!」
《ほっほっほ、盛り上がっておるの。エントよ、昨日話したように頑張るんじゃよ》
「……分かった」
《ほっほっほ、両者前へ!!》
ドックン!! ドックン!!
何だかやけに緊張して来た。
(試合なんて、前世でも殆ど経験無いからなぁ……)
「エント!! 男の癖に緊張してんじゃないよ!! 一ヶ月一生懸命頑張ったんだ!! 後はやるだけだよ!!」
さすが、アラ子姉さんだ、よく見てるや。
「アラ子姉さん、勝ったら褒めてね??」
ここは心配させないようにと、ちょっとからかってみた。
「え!? そ、そんなの当たり前じゃないかい!! しょ……しょうがねえ弟だなぁ!!」
《ギャハハハハ!! 俺様に勝とうとか本気で思ってるのか!? グズの弟もグズってか!? ギャハハハハ!!》
振り返ると俺の対面側から、シャドウが気だるそうに出て来た。
「はぁ、残念野郎は変わらず残念だね」
《はぁ!? テメェボコボコにしてやる》
「やってみろ」
ジャイ兄さんを、無抵抗でボコボコにしたのは忘れていないぞ。
《エント〜〜頑張れ〜〜》
(兄さん……俺があの時の、今までの敵を取る!!)
《ほっほっほ、では始めるかの用意は良いかの??》
《ああ!!》「はい!!」
《八卦良い!! 始めぇええええ!!!》
俺は瞬時に身体強化を全体に纏い、魔刀を形成する。
修行の成果で、俺の魔刀もナイフから小太刀くらいの大きさまで出せるようになった。
脚に身体強化を厚めに纏い、周りをぐるぐる回って隙を探す。
シャドウは俺に合わせ、常に正面に捉えて身体を回して動く。
《ギャハハハハ、逃げ足アピールか?? そのままビビって逃げ出しても良いんだぞ?? グズの弟!!》
「言ってろ!!」
《さぁ!! 第二試合が始まりました!! 開始早々エント選手が身体強化を使い、攻めようとしていますが、中々踏み込もうとしません!! キラさんこれはどうご覧になりますか?》
「シュ、シュシュシュ!!」
《そうなんですね!? キラさん曰く、シャドウ選手はカウンターを狙った姿勢のようです。エント選手もそれを知ってか、簡単には飛び込まず、隙を伺っているとの事です!! さぁこの後、どうなってしまうんでしょうか!?》
そう、ヒスイ姉さんが話している通り、今のシャドウはカウンターを狙っていると思う。
(だけど、真後ろからなら攻撃は通るはずだ!!)
キィィイイン!!
俺は身体強化を更に足へ集中させて行き、瞬間的に速度を上げた。
(今!!)
シャドウの回転が遅れ、真後ろを取った瞬間、全力で斬りつける。
「貰った!!」
《ギャハハハハ!! 馬鹿は学習しねぇなぁ!!》
ボフン!!
魔刀が当たったと思った瞬間、シャドウの身体は黒い霧へと変わり、手応えがなかった。
《しねぇえ!!》
背後に殺気を感じ、慌ててその場から後方に離れようと考えたが、既に巨大な両角が左右から俺を真っ二つに挟み切ろうとするのが見えて、慌ててしゃがみこんだ。
ガキィイイイイン!!
(あ、あぶな!!)
《チッ!! ちっこいから外しちまったぜ》
「うぉおおおお!!」
冷や汗を流しながらも、ピンチはチャンスと踏み込んで、魔刀に力を注ぎ、再び至近距離から斬り込んだ。
《ギャハハハハ、何度やっても無駄なんだよぉおお!!》
ボフン!!
闇属性魔法で、またシャドウは黒い霧へと変わった。
《オラァアアアアア!!》
デジャヴのように俺の後ろからまた気配がして、振り向くと今度は大顎が横薙ぎに振るわれる。
(まずい!!)
攻撃スピードから避けられないと判断した俺は、瞬時に右腕と右足に身体強化を強化させ、受け止める体制を整える。
バキッ!!
腕から鈍い音が聞こえる。
ドォゴォオオン!!
「ぐぁあああああ!!」
《エント!!》
「はぁはぁ!! だ……大丈夫だよジャイ兄さん」
『ヒールウォータ』
折れた腕に回復魔法を掛け、直ぐに治療する。
《アノムシ、コロスカナ??》
「シュシュシュ!」
《は!! イケナイイケナイ。さて、状況は一転!! エント選手が何度も果敢に攻めますが、シャドウ選手のカウンターが炸裂!! エント選手にダメージが入りました!! しかし、大好きなお姉さんと磨いた回復魔法で復活!! まだまだ戦えるようです!! それにしてもそのお姉さんは偉大ですね!!》
「シュ……」
《え?? ナンカイッタ??》
「…………」
《ギャハハハハ!! 回復魔法なんて使えんのか。俺に沢山痛ぶられたいなんて、頭のイカレ具合もさすがグズの兄弟、ぶっ飛んでんな!?》
「はぁはぁ!! 残念野郎……わざわざ回復させてて良いのかよ?? たまにはかかって来たらどうだ?? それともこんな小さい敵が怖いとか?? やっぱり身体のでかいやつは、脳みそちっさいんだよなぁ……残念だ」
《ギャハハハハ!! その手には乗らねえよ。さっきのビッグバンとの戦いの後で、同じ轍は踏まねぇっての!! それになぁ……甲角一族のナンバー2が、これだけしか手がない訳ねぇだろうが!!》
『ダークランス』
シャドウの頭上から、禍々しい黒い槍が三本現れた。
《ギャハハハハ!! なぶり殺しにしてやるよ!!》
「チッ!!」
再び足に身体強化を厚く掛け、次々と迫り来る黒い槍を避けて行く。
ド、ド、ドォォオオン!!
《ああっと!! シャドウ選手、なんと遠距離攻撃も持っていたぁ!! エント選手、これは逃げる事しか出来ないのか!?》
《ギャハハハ!! 俺様が勝つのは、普通の事何だよ!!》
ピクッ
「……普通??」
《いかん……》
久々に耳にした普通という言葉。
俺の普通ってなんだっけ??
ドックン!!
ドックン!!!!
あ、頭が割れそうに痛いーー
いつの間にか目の前に黒い槍が向かって来た。
後先など考えられない状態で、湯水の如く魔力を使い、身体強化した拳で弾き飛ばした。
徐々に痛みが激しくなると、突然、頭の中に過去の記憶が流れ込んで来た。
「●、□△■ざん……●☓▲△ら●■□の??」
「……かける君が、普通に■☓▲☓○ね」
「あ゛ぁああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああぁ!!」
《何だぁ?? こいついよいよ壊れたのか??》
《エント……エントよ聞こえておるかの?? お主はエント。儂の大切な息子であり、今の家族はこのファミリアじゃ。今、今のお主はエントなんじゃよ。大丈夫、大丈夫じゃからのぉ。ジャイアンの為に、自分の為に戦っておるんじゃろ?? さぁ……そろそろ帰って来るんじゃエントよ》
「うぷっ……おぇえええ!!」
《……シャドウよ。もう良い、早く終わらせろ》
《ギャハハハハ!! きたねぇえええ!! エンペラー様わかりやした!!》
「そうか……今の俺はエントだったっけ……ジャイ兄さんと約束……した」
ダークランスが飛んでくるのをかろうじて躱し、頭を振って自分を落ち着かせる。
「はぁ……吐いたらスッキリしたわ」
《何、満足そうな顔してやがる!! お前はもうくたばるんだよぉおおおお!!》
「お前は、知らないかもしれないけれど……」
《あぁん!?》
「実は俺、誰よりも甲角一族に詳しいんだよ」
木属性魔法『グロウ』
「はぁあああああああ!!」
俺はありったけの魔力を注いで叫ぶ。
バキバキバキバキ!!
シャドウの回りからは、次々と木の根が生えだし、囲い込んでいった。
《な!? だが俺には黒霧が……!? って、何してやがる!!》
『ファイアボール』
囲いこんだ後、俺は直ぐさま火球を投げ放っていく。
「霧ってさぁ……とても軽いんだよ。火で温めるとどうなると思う??」
《き、貴様ぁあああああああああ!!》
シャドウは慌てて霧に変身すると、その霧は急いで上空から脱出しようとする。
だが、既に俺は木々の上に登り、真上で右手を構えて待っている。
「お前、ここで死んどけよ……」
《ひぃ!? や、やめろ!!》
「えぇ?? 仕方無いなぁ……」
命乞いするシャドウの黒霧をわざと通すと、奴を追って地面に降り立った。
シャドウは息を荒げて元の姿に戻ったその瞬間ーー
ーーシュタッ
俺が降り立ったのはシャドウの頭上。
「クワガタムシはね?? 真上からの攻撃にとても弱いんだ。それで……ここに脳があるんだけど、知ってた??」
魔力刀を頭に突き付け、丁寧に教えてあげた。
《貴様……》
「ウゴクナヨ」
《ぐ!!》
「俺の魔刀が脳を貫くのと、お前の霧へ変身するのが早いか競争してみるか??」
《俺の……》
「じぃちゃん!! 俺の負けだ」
《は?? はぁああああああ!?》
《ほっほっほ!! 相分かった!! 第二試合はシャドウの勝利じゃぁあああ!!》




