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第39話 うひょ対ビッグバン


 そして、いよいよ決戦の日がやって来た。


 昨日で、地獄のような修行の日々を終え、やれる事はやったと思う。


 ジャイ兄さんとじっくり話をした次の日に、使いを名乗る甲角一族がやって来て、代表メンバーを伝えた。


 それによって対戦カードも決まる。


 先鋒 うひょ 対 ビッグバンビートル


 次鋒 エント 対 シャドウクロー


 主将 ジャイ兄さん 対 エンペラービートル


 となった。


 ビッグバンが何者かをジャイ兄さんに聞いた所、甲角一族でも最大級の大きさがあるカブトムシだと言う。


 うひょさんは大丈夫なんだろうか……とても不安だ。


 うひょは修行後半になっても、変わらず日向ぼっこしては風に揺られ、寝てばかりいた。


 時折、夢でも見ていたのか謎な笑い声を上げていた……


(あれ、夜中やられると怖いんだよ……)


 思い出すだけで鳥肌が立つ。


 そんなうひょを間近に見ていれば、俺が何とか頑張らねばと修行に打ち込むのは当たり前の流れだった。


 ジャイ兄さんは、あれから物凄い成長を果たした……らしい。


 らしい、と言うのは、修行の後半に差し掛かる頃には、晩御飯前の一本勝負でしか会えていなかったからだ。


 結局、ジャイ兄さんからは惜しくも一本も取れなかった。


(いやぁ〜〜あれはかなり惜しかったナァ)


 

 昼近くになると、魔王樹ファミリアや甲角一族がぞくぞくと集まって来た。


 もの凄い数のギャラリーになりそうだ。


 ブォオオオオオン!!


 他の羽音よりもひときわ重低音な音が近付いて来た。


 ドォオオオオン!!


 視界が霞むほどの土煙が巻き起こり、空から途轍とてつもなくでかいカブトムシが落ちて来たのだと分かった。


(恐竜かよ!?)


 と、そう思うぐらいのサイズのカブトムシを前に、俺の顔は引きった。


 もしかしなくても、あれが恐らくうひょの対戦相手だろう。


 普段の自分なら大発狂して喜んでいたんだろうけど、戦う立場の今、まるで嬉しくない光景だ。


 太陽が真上に差し掛かった。


《ほっほっほ、ではこれより魔王樹ファミリア対甲角一族との決闘を行う。ルールは簡単じゃ、三対三のチーム戦で先に二勝した方が勝ちじゃ。決闘は相手が戦闘不能もしくは、降参するまでとする。エンペラーよ、問題無いの??》


《……問題無い》


《甲角一族が勝った場合は儂らの持つ一部エリアを譲渡し、儂らファミリアが勝った場合は、甲角一族全員でファミリアに詫て貰う事になっておる。相違無いかの??》


《ああ、勝つのは俺達だがな》


《ほっほっほ、その生きや良し。では、これより決闘を始める!! 先鋒は、うひょ対ビッグバンビートルじゃぁあああ!!》


 ドシィイン!! ドシィイン!!


 近くで見ると、ホントに恐竜サイズなドデカイカブトムシが前に進み出て来た。


 ビッグバンと呼ばれるカブトムシは、角は身体の割に小さめだが、堅そうな外骨格が鈍い光で輝き、そして、やはりこのドデカさが武器なのは誰が見ても明らかだ。


 ブォオオオオオン!! ブォオオオオオン!!

 

 甲角一族達は戦場の半分近くを丸く囲み、羽根を使って鼓舞し始めた。


(応援が、かっけぇ!!)


 それに比べて、こっちはーー


「みんな〜〜!! 刺〜し〜ちゃうぞ〜〜!?」


 Nooooooooooo!!


「え〜〜!? じゃあ、乗っ〜て〜るか〜い!?」


 Uooooooooooo!!


(な、何だこの残念な応援は!?)


 ヒメ姉さん率いる残念応援団たちを見て、一気にテンションが落ちそうだ。


《早速、熱烈な応援合戦が始まりましたね。実況を勤めさせて頂きますヒスイです。本日は宜しくお願いします。今日の実況はゲストをお招きしています。切れのある戦闘で有名でありながら、理論派でもあるキラーマンティスのキラさんです。今日は宜しくお願いします》


「シューシュシュ!!」


《そうですね。確かに見応えのある対戦カードとなってます。注目のカードはどれでしょう??》


「シュ!!」


《なるほど!! 大本命はやはり大将同士なんですね!? 私としては一番小さいうひょ選手と一番大きいビッグバン選手のカードが気になるところですね。おっと、いよいよ第一試合が始まりそうです!! 張り切って行きましょう!!》

 

(ヒスイ姉さん、キラ兄さんまで……何やってんのさ)


 そんなやり放題だらけの謎な雰囲気の中、いよいよ戦いが始まる。


《ほっほっほ、ではこれより、うひょ対ビッグバンの対戦を行うぞい。両者前へ!!》


「うひょぉおおお!! うひょぉおおお!!」


《敵が見えないんだがね。え、これなんだがね?? ぷぷぷ、小さ過ぎて見えなかったんだがね》


「うひょぉおおおおおおおおお!!!」


(あ、うひょ怒ってるな)


《八卦良い!!》


「頑張れぇ!! うひょ!!」


《始めぇええええええ!!》


 いよいよ決闘が開始された。


 うひょは持ち前の蔓を、二本出し攻撃する。


 ペチッ!! ペチペチペチペチペチペチ!!


《ぷぷぷ、なんだがねそれは、痒くも無いだがね》


(いや、これ……無理だろ。サイズが蟻と恐竜並に違いすぎて、攻撃がまるで攻撃じゃない……)


 甲角一族からは、盛大に笑い声が上がる。


《さぁ、第一試合が始まりました。いきなりうひょ選手の猛烈な蔓攻撃が繰り広げられていますが、ビッグバン選手にはまるで通じていません!!》


 うひょは、周りの笑い声など気にせず、ひたすら蔓攻撃をペチペチと繰り返した。


《……はぁ、もう何だかつまらないだがね。終わらすだがね!!》


 ビッグバンはそう言うと、重そうな脚の一本を振り上げると、地面に叩き付けた。


 ドゴォオオオ!! 


 土煙が舞い上がり、視界が悪くて良く見えない。


「大丈夫か!? うひょ!!」


《うひょ〜〜大丈夫〜〜!?》


《ああっと、ここでビッグバン選手の踏み付け攻撃が炸裂したぁああああ!! うひょ選手は果たして無事なのか!? いや、あれは!?》


「ぶひょひょひょ!! ぶひょひょひょ!!」


 土煙が収まった場所には、クレーターのような大きな穴が空いていたが、うひょはどうやったのか分からないが、上手く避けたみたいで、俺は心底ほっとした。


 姿を現したうひょは、身体をクネクネ動かし、なんとも醜悪な顔で笑い声を上げ出した。


《な、なんて悪い顔なんでしょう!! うひょ選手!! ビッグバン選手に対して、挑発を始めたぁああ!!》


《こ、このチビ……許さないんだがね!! 潰すだがね!!》


 効果は抜群だったのか、頭に血が昇ったビッグバンはうひょ目掛けて狂ったように攻め立てた。

 

 ドゴォオオオ!! ドゴォオオオ!! ドゴォオオオン!! 


…………


……

 


《はぁはぁ!! チョロチョロ逃げやがって、中々当たらないだがね》


 うひょは蔓でペチペチと攻撃しながら、避けては挑発を繰り返していった。


「ぶひょ、ぶぶ……ぶひょひょひょ!!」


 もう完全に、うひょのペースだ。


 しかしーートップの一言で状況は変わる。


《ビッグバンよ……いい加減にしろ》


《ひぃ!? わかりましたがね!! チビっ子!! エンペラー様がお怒りだがね。悪いが終わらすだがね!!》

 

《ここで大将からの激昂が入り、ビッグバン選手が何かをやる気です!! キラさんどう思われますか!?》


「シューシュシュシュ」


《ふむふむ、うひょ選手に攻撃が当たるような何かをする、と考えるのが妥当だと、なるほど!! あぁっと!? 私の魔力探知でも反応があります!! これは魔法を使う気でしょうか!?》


『アースウォール』


 ゴゴゴゴゴゴ!! ゴォオオオン!!


 地響きと伴にうひょの四方を巨大な土壁が囲むと、あっという間に逃げられない状況にされてしまった。


「まずい!! うひょ何とか逃げろ!!」


《ぺしゃんこにするがね!!》


 ブォオオオオオン!!


 ビッグバンは背中から羽根を出すと、ゆっくり浮かび上がって土壁の真上まで飛ぶと、今度は反対に羽根や手足をバッと閉じて地面に落下していく。


《うひょ選手、絶対絶命のピンチだぁああ!! これは決まってしまうのか!?》


 ドゴォオオオオオオン!!


 立っていられないほどの大地震のように、激しい振動が周辺に走ると同時に、土壁だった物の破片も辺り一面に飛び散った。


「うひょぉおおおおお!! 大丈夫かぁああああ!?」


《はぁはぁ!! ぐふふ、潰してやったがね!! わっちの勝ちだがね!!》


 ビッグバンは勝ち誇ったようにゆっくり立ち上がると、下敷きになっているであろう、うひょを確認した。


《決まったのかぁぁぁああ!? いや、これは……うひょ選手が居ません!! いったい何処にーー》


 ボコ


 ビッグバンの背後から音がしたかと思えば、うひょの顔が地面から出て来るのが見えた。


(はぁ……良かった。心配掛けさせやがって!! だけど、決めてが無いのは同じだ。このままじゃ、やられるのも時間のーーんん!? あいつ、いったい何してんだ!?)


 むしゃむしゃむしゃむしゃむしゃむしゃむしゃ!!


《地面を通って危機を一先ず脱出したうひょ選手!! しかし、そんな状況で、何かを食べ始めました!! これも挑発の一つなのでしょうかぁあ!?》


 うひょは周りの動揺など気にも止めず、蔓の手を器用に使って、どんどん球根のような白く丸っぽい物を食べまくっていく。

 

《クソチビぃいいい!! わっちと戦ってるのに舐めやがってからに!!》


 ドゴォオオオ!


 ドゴォオオオ!


 再びビッグバンは、脚で踏み付ける攻撃を始めたものの、うひょはヒョイヒョイと避けながら、むしゃむしゃ食べる事をやめない。


(あいつ一体何やってんだ!? ん?? んんん!?)


 巻き起こる土煙の隙間から、時折見えるうひょに違和感を覚えた。


《あ、あれ!? 気のせいでしょうか!? 大きくなっている!? いえ、気のせいではありません!! うひょ選手、どんどん大きくなっているようです!! キラさんこれは一体!?》


「シュシュ!! シューシュシュ!!」


《ふむふむ!! キラさん曰く、うひょ選手は変異種のマンドラゴラであり、変異種は変わったスキルを持っている事が多いそうです。この徐々に大きくなる能力も、その一例なのかもしれません!! 実に興味深いですね!? さぁ、そうこうしてる間にも、うひょ選手まだまだ大きくなっています!! 果たしてこの勝負どうなるんでしょうか!?》


《な、なんだがね!? なんだがね!?》


《ビッグバン!! でかくなる前に早く仕留めろ!!》


《エ、エンペラー様!? わ、分かったがね!!》


 ブォオオオオオン!!


《的が大きくなったら、当たるがね!!》


 だが、ビッグバンが飛び立つ頃にはうひょは彼に匹敵する大きさにまで成長していた。


 シュルシュル!!


 うひょの巨大な蔓がビッグバンを捉えた。


《な、なんだがね!? 離すがね!!》


《ぶひょぉおおおおおおおおお!!》



 

 ガポ


(あ、仲間が増えた)


《ん゛んんんんんんんんん!?》




 

…………


……



 ぺ!!



 ドシィイイイイイン!!


 涎まみれのデロデロな状態で、脚を痙攣させるビッグバン。


《ほっほっほ、ビッグバンビートル戦闘不能により、うひょの勝ちじゃぁあああ!! 見事なり!!》

 


 Uooooooooooo!!



 こうして、ビックりな戦いに決着がついた。


 次はいよいよ俺の番だ!!

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いつも読んで下さりありがとう御座います!

劣等魔族の成り上がり〜病弱なこの子の為にダンジョンで稼ぎます〜


こちらの新作も是非お楽しみ下さい!
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