第23話 俺はエント
「どうやっても、仲良くなってしまう最強の方法??」
そんな魔法みたいな事ーーいや、まさか魔法なのか??
《至って単純な事、故に意外に知らぬそんな方法じゃよ》
「あたいにゃ、必要ないね!!」
《ほっほっほ、今まで必要無かっただけじゃ。じゃから、アラ子もしっかり聞くんじゃ》
どうやら魔法では無さそうだ。
《この方法を成功させるには、一つ条件がある。その条件をクリアする為にも、そうじゃのぉ。アラ子は今日からエントと伴に行動するのがえぇ》
「ふ、ふざけんじゃないよ!! 誰がこんな人族のガキなんかと!!」
(黙って聞いてりゃ好き勝手言いやがって!!)
俺はアラ子姉さんを睨みつける。
《ほぅ……ファミリアで決めた事を守らず、弟を傷付けた罰も受けず、助言も聞かぬと……そう言うのかの??》
「あたいは……あたいには無理なんだよ!!」
アラ子姉さんは唇から血が出そうなくらい強く噛み締めていた。
《アラ子よ、誰が決めておる?? 何時だって決めておるのは、お主自身じゃとわかっとるはずじゃ》
「無理なもんは、無理なんだ!!」
じぃちゃんの助言も払い除け、怒気を当たりに撒き散らす。
《……そうか、なればやむ無し。アラ子、いや、アラクネの娘よ。お別れじゃ》
「じ、爺待って!! お願い、アラ子を捨てないで!! お願い!!」
突然、ヒスイ姉さんがアラ子姉さんの前に飛び出ると、目からは今にも溢れそうな涙を浮かべ懇願した。
「ヒスイ姉ーー」
《ヒスイや。これはその娘自身が決めた事。そして、儂は儂がこのファミリアを護る為に決めた誓いを曲げる訳には行かぬ。許しておくれ》
ヒスイ姉さんの願いが届かぬ程、じぃちゃんの意思も固いようだった。
「アラ子ぉおおお!!」
ヒスイ姉さんは悲痛な泣き声を出しながら振り返り、アラ子姉さんを睨みつけた。
「わ……わかったよ」
突然の修羅場とかした空気の中で、俺はどうしたら良いか分から無いまま、何とか収まりそうで安堵の息を吐いた。
《アラ子や、良ぅ我慢したのぉ。偉いのぉ偉いのぉ》
そう言うと、じぃちゃんはアラ子姉さんの頭を自分の葉で優しく撫でるのだ。
「や、やめろ!! もう子供じゃ無い!!」
《ほっほっほ、そうじゃった、そうじゃった。じゃがエントにはちゃんと謝まらんといかん》
「ちっ!! 人族のガキ!! いきなり殺そうとして悪かったな!!」
「それ、謝ってるの??」
「あ゛!?」
蜘蛛の脚部分の毛がブワッと膨らみ、威嚇されてめちゃくちゃ怖いけど、ここで踏ん張って、ちゃんと伝えたい事を伝えないといけないと、そう思った。
「アラ子姉さんが、なんで人族が嫌いなのか俺は知らない。だけど、今の俺はエントだ。人族でも元人族でも、ましてや異世界から転生した人族だからとか関係無い。今はただのエントなんだ。それだけは知っていて欲しい……」
「……ふん、悪かったよ!!」
すぐにそっぽを向いたけど、少しだけでも気持ちが伝わっていれば良い方か。
隣では本当に良かったと言わんばかりに、肩を撫で下ろすヒスイ姉さんもいる。
《ほっほっほ、中々どうして、エントもちゃんと考えとるわい。さて、もう昼じゃが早速二人には伴に行動して貰うからの》
「「え!?」」
《うむうむ、それと一日の終わりには、儂にその日の出来事をしっかり教えるようにのぉ。それが条件じゃ》
「ジ、ジジィ!! ところで期限は何時までなんだよ!?」
(それは俺も知りたい)
《ほっほっほ、お主ら次第じゃの》
「ふ、ふざけんなぁああああ!!」
そして、何故かアラ子姉さんと俺との共同生活?? が始まった。
◆
「では、これより魔法の授業を始めます。今日から新しい生徒のアラ子ちゃんが参加しますので、エント君仲良くしてくださいね!!」
「ちゃ、ちゃん!? てか、ヒスイ姉……まだそのスタイル……」
「ナニカイッタカナ??」
どうやらこの先生モードは、昔からのようだ。
「な……何でもないよ!」
会話を聞く限り、アラ子姉さんも昔はヒスイ姉さんの授業を受けていたっぽいな。
さっそく、二人で瞑想を行い水心の業に入る。
「まずは、エント君から順番にやって見ましょう」
俺は水を張った殻を持って、魔力を通していく。
手から殻へ殻から水へと、魔力を通して葉へと進めていく。
目を開けて目の前の結果を確認して見ると、手は水で濡れ葉は二センチ程大きく、そして大分丸くなっていた。
「やった!!」
「ぷっ……あははは!! その程度で喜ぶなんて、見た目もガキだが魔法もガキレベルだな」
「なんだって!?」
「アラ子ちゃん!! 相手を馬鹿にするのはイケマセンヨ??」
「ひぃ!! わ、わかったよ!!」
「では、自信満々なアラ子ちゃん。やって見て下さい」
「ふん、こんなの余裕!!」
そう言いながら、アラ子姉さんは殻を持って、鼻歌交じりで水心の業を行っていく。
「ふぅ、ほらよ!!」
「は、はや!?」
結果をこれでもかと自慢気な顔で俺に見せつけて来た。
殻を覗き込むとーー
(なんだこれ!?)
殻に入った水は真っ黒になり、葉っぱはどうやったのか理解出来ないが、滅茶苦茶細かく描写されたアラクネの形になっている。
「す、凄ぇ!!」
「うひょぉおお!! うひょぉおお!!」
「お、おう!! こんなの余裕よ、余裕!!」
「アラ子ちゃんは、闇と無属性が得意なのよ」
葉を取り出し顔を近付けて観察して見ると、よく出来た切り絵のように作られている。
「アラ子姉さん本当に凄いや……これ、貰っていい??」
上手く出来た工作品としても、水心の業のお手本にもなりそうで駄目元で聞いてみた。
「か、勝手にしやがれ!!」
(あれ?? アラ子姉さんてばもしかして、あれか、あれなのか!? チョロイ系か!? チョロイ系なのか!?)
物は試しにと、ヒスイ姉さんやジャイ兄さんの型に出来るか聞いてみた……
作ってくれた。
調子に乗って、何処までリクエスト出来るかお願いし続けたら、途中で……
オコラレタ。
まぁ兎に角、こうしてぎゃあぎゃあ騒がしいアラ子姉さんとの生活が始まった。




