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第21話 キラービープリンセス

 チュン チュン うひょ!!


 あぁ……朝か……


 チュンチュン うひょぉおお!!


 うひょさんや、またやるのかね……


 重い瞼をあけると、そこにいつもの方がおられた。


 来る!!

 

 危険を察知した俺は、以前と同じようにうひょの口を両手で抑える。


 まだだ!!


 予想通りにうひょの根本から蔓が伸び、俺の腕に巻き付いて来る。


 ふふふ、想定内!!


《う……うひょ……まて!!》


「うひょ!?」


 うひょは最近覚えた木霊に驚くと、一瞬だけ硬直したのでその隙に俺は蔓を振りほどき、葉っぱ布団から脱出して逃げた。


《ほっほっほ、やりおるわ》


「ははは!! 見たかうひょ、これが戦術というやつだ!!」


 勝ち誇るようにうひょを見れば、ぷるぷる震えていて徐々に顔の色が真っ赤に光だした。


(あれ?? これやばーー)

 

「う゛ひょぉおお!!」


 ドン!!!!


 うひょは蔦を地面が陥没するほど強く叩きつけると、その反動を使って物凄い速さで俺の前に移動し着地した。



 ガポ!!



「ん゛んんんんんんんん!!」


《いい線まで行っとったが、まだまだじゃのぉ。ほっほっほ》


「惜しかったのに……」とぶつくさ文句を言いながら、瞑想と水心の業を済ませ、朝食を食べた。


 贅沢は言ってはいけないが、木の実とププリの果実は正直ちょっと飽きて来てきた。


 ただ、俺の性格状しっかり仕事で貢献出来てないのに、あれが欲しいこれが食べたいなんて事は言えない。


 もう少しちゃんと働けるようになってから相談させて貰おう。


「エント今日はヒメちゃんのお手伝いでしょ?? それなら、これを持って行くといいわ」


 ヒスイ姉さんが、食後にそう言って渡して来たのは毒消し草。


「ヒスイ姉さん……俺……刺されるの?? ねぇ!? この流れって、刺されるって事だよね!?」


「あ、今日はマロンの木を手入れしなきゃ!! い、急がなきゃ!! エント頑張ってね。またお昼に会いましょう!!」


「…………」


《ほっほっほ、大丈夫じゃよ。儂なんて何回刺されたか数え切れんが、ピンピンしとる》


「じぃちゃんは痛く無いだろ!?」


 自分で血の気が引くのが分かる程、刺されるのは嫌だとそう思った矢先。


 ブゥーンと羽の音と伴に、例のあの姉がやって来た。


「やっほーー!! 弟よ〜〜!! 刺しちゃうぞ〜〜!!」


「いやいやいや!! いきなり刺さないで下さいよ!!」


 ちょ、まじでお尻から針出さないで!?

 

 ヒメ姉さんのお尻から目が離せず(そういう意味じゃない)に、緊張感そのままで北の方角に進んで森に入って行った。


 気になっていた今日の作業の内容を教えて貰うと、巣作りの練習をする為の泥集めをして欲しいとの事だった。


「巣作りの練習?? 本格的な巣作りじゃないの??」


「私はね、まだクイーンにはなれないの。巣作りがちゃんと出来て、沢山食べてを繰り返して進化しないと駄目なのよ。その為の練習してるんだよ。だから弟よーー!! 一生懸命手伝うんだ!! じゃないと刺しちゃうからね!? いや刺していいよね!?」


「ひぃ!! 早速行ってきます!!」


 『進化』とかするのか……プリンセスからクイーンになるのも大変なんだなぁと思いながら、俺は他のキラービー達が運んでいるのを見習って、泥を一緒に運び続けた。


 彼らは泥を器用にコネコネ丸くしながら、飛行して運んでいた。


 俺も同じようにやって見たけど、若干水分が多いのか上手く丸めながら移動するのは苦戦を強いられた。


 ようやく何とか泥を持って行き、ヒメ姉さんがそれを受け取ると、ヨダレを垂らして泥に混ぜコネコネする。


(えぇ!? 何してるの!?)


「こうやって私の唾液を入れて混ぜるとね、ネバネバが増えて固まるんだよ。そして、こうやって木にくっつけて巣の形を作っていくのよ!! わかった?? わかったらさっさと次を運ぶ!! 刺して欲しいの??」


 刺されたら困るので、また泥がある場所へ逃げ帰った。


 最初はちょっとばっちぃと思ったけど、ヒメ姉さんが真剣な顔になって一生懸命作っていた姿を見れば俺も応援したい気持ちになった。


 それに……今の俺と同じくらいの幼女が目の前で、よだれを可愛い口からツゥっと垂らす姿は、なんと言いますか……ゲフンゲフン!! 違う!! 俺は違うぞ!?


 話を変えよう。

 

 ところで後から知った事だが、他のキラービー達はヒメ姉さんと兄弟蜂に当たる。


 ヒメ姉さんは珍しい『稀少種』という個体で、その影響なのか分からないけど、人によく似た姿をしている。


 他のキラービー達はというと、スズメバチをそのまま大きくしたような蜂そのものだ。


 義理の兄弟だと聞いた時は、なんとも言えない気持ちになった。


 兎に角、それからキラービー達と何度も往復し、泥を運び続けた。



「今日はここまでにしよう!! 弟よ、助かったよ!! 有り難うね!!」


 そう言うと、ヒメ姉さんは飛んで抱きついて来た。



 ドス!!



「あは!! 嬉しくて刺しちゃった!!」


「太ももがぁああああ!!」

 

 急いでヒスイ姉さんから貰っていた毒消し草を、揉んでから塗りまくった。


 ヒメ姉さんの毒針はやばい。


 刺された箇所を見ると、俺の太ももは急速に紫に変色し、悪寒と伴に全身から汗が吹き出した後、あらゆる感覚が麻痺した。


 しばらくの間動けない状態だったけど、毒消しのおかげで何とか片足を引きずり、じぃちゃんの所まで戻ると、念の為ヒスイ姉さんに魔法で治療して貰った。


《ほっほっほ。今だにヒメは嬉しくなるとつい刺してしまう。その癖は中々直らんのぉ。しかし、災難じゃったなエント》

 

 ハリキケン ハリキケン


 命懸けだったヒメ姉さんのお手伝いがようやく終わると、昼食後は今日も魔法の授業だ。


 昨日と同じ基本を終えて、ヒスイ姉さんと木霊の練習をする。


 掴んだコツは忘れてはおらず、順調と言っていいだろう。


 木霊を行うイメージとして、魔力を相手に当てる感覚は、相手を太鼓に見立てると分かりやすいかもしれない。


 魔核で魔力を言葉に変え、相手の魔核へ響かせるといった感じだ。


 今は魔力を言葉に変換する練習だ。


《姉、さん、聞こえ、る??》


《えぇ、聞こえるわ。いい感じよ。続けて》


 今はまだ、手を繋いでいないと木霊が伝わらない。


 なので、まだまだ柔らかい手をニギニギ握って……ゲフンゲフン。


 また一日が終わり、今日を振り返れば痛い思いもしたけど、ヒメ姉さんのあの真剣な顔が脳裏に浮かぶと、俺も負けてられないという気持ちにさせてくれたのは良い経験になったと思った。


 だけど、もう刺されたくない。


 俺を刺した瞬間に見せたヒメ姉さんの表情は、ダラっとよだれを垂らして頬を染め、「はぁはぁ」と息を荒げて物凄く興奮している様子だった。


 危険だ。


 あれは物凄く危険な状態に違いない。


 今度はもっと気を付けないと、何度も何度も刺される危険があるとしっかり脳裏に刻むのだった。


 ふと明日の事を考え始めたら、中々寝付けなくなってしまったが、明日は明日考えようと無理矢理目を閉じる。



 何せ明日はーー





 アラ子姉さんの番なのだから……

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いつも読んで下さりありがとう御座います!

劣等魔族の成り上がり〜病弱なこの子の為にダンジョンで稼ぎます〜


こちらの新作も是非お楽しみ下さい!
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