第17話 創造神が諦めた日
――『門が開く日』
――『人類は敵を見る』
――『初めてではない』
――『七回目だ』
創造神から届いたDM。
その言葉は。
降谷璃瑠葉の中に、新たな疑問を生んでいた。
◇◇◇
敵は外にいない。
人類の中にいる。
六回の文明は敵を知っていた。
それでも負けた。
◇◇◇
そして。
創造神は全てを知っている。
◇◇◇
第一文明の最後の生き残り。
神界の創設者。
数万年の記憶を持つ存在。
◇◇◇
そんな彼が。
一度だけ。
人類を諦めた日があった。
◇◇◇
「あり得るのか……?」
璃瑠葉は呟いた。
◇◇◇
今まで見てきた創造神は。
理想そのものだった。
◇◇◇
誰よりも人類を信じ。
誰よりも文明を守り。
誰よりも未来を見ていた。
◇◇◇
そんな存在が。
見捨てる。
◇◇◇
想像できなかった。
◇◇◇
しかし。
だからこそ気になる。
◇◇◇
何があった?
◇◇◇
その日の夜。
世界中の考察勢が一つのファイルに集まっていた。
◇◇◇
第一文明末期。
封印指定最上位。
通称。
◇◇◇
Last Day
◇◇◇
最後の日。
◇◇◇
神界でも閲覧制限が掛けられていた記録。
◇◇◇
なぜか。
◇◇◇
創造神自身が封印した資料。
◇◇◇
その解読率が。
九十九%へ到達した。
◇◇◇
SNSは爆発した。
【Last Day解読祭り】
【神界最高機密】
【神実在派集合】
【創造神案件】
【これヤバいやつ】
【絶対見ちゃいけないやつ】
◇◇◇
璃瑠葉も配信を開始する。
◇◇◇
【創造神が諦めた日】
◇◇◇
同時接続。
二千万人。
◇◇◇
世界記録更新。
◇◇◇
「始めます」
璃瑠葉は深呼吸した。
◇◇◇
画面に表示される。
◇◇◇
文明崩壊まで
残り七日
◇◇◇
第一文明。
終末会議記録。
◇◇◇
そこには。
創造神の発言が残されていた。
◇◇◇
『まだ間に合う』
◇◇◇
コメント欄。
【知ってる創造神】
【いつもの】
【諦めない人】
◇◇◇
続く。
◇◇◇
『敵は問題ではない』
『我々自身が問題だ』
◇◇◇
今までの結論と一致する。
◇◇◇
だが。
その先。
◇◇◇
会議記録の内容が変わる。
◇◇◇
参加者。
第一文明最高評議会。
◇◇◇
文明最高指導者達。
◇◇◇
その発言。
◇◇◇
『敵と交渉すべきだ』
『敵を受け入れるべきだ』
『共存を模索するべきだ』
◇◇◇
コメント欄停止。
◇◇◇
【え?】
【待て】
【それダメなやつ】
◇◇◇
璃瑠葉も固まった。
◇◇◇
なぜ。
◇◇◇
敵は文明を滅ぼした存在。
◇◇◇
なのに。
◇◇◇
第一文明は受け入れようとしていた。
◇◇◇
そこで。
創造神の発言。
◇◇◇
『それは違う』
『受け入れれば人類は終わる』
◇◇◇
強い言葉。
◇◇◇
だが。
会議は止まらない。
◇◇◇
『人類は疲れた』
『戦い続ける理由がない』
『敵は豊かさを約束している』
『争いのない世界を約束している』
◇◇◇
璃瑠葉の背筋が冷えた。
◇◇◇
思い出す。
◇◇◇
敵の特徴。
◇◇◇
誘惑。
勧誘。
約束。
◇◇◇
そして。
文明内部から崩壊する。
◇◇◇
全部同じだ。
◇◇◇
コメント欄。
【うわ】
【これ現代でもある】
【怖い】
【嫌なリアルさ】
◇◇◇
その時。
解読班が最後のページを復元した。
◇◇◇
文明崩壊三日前。
◇◇◇
創造神最後の演説。
◇◇◇
誰も見たことのない記録。
◇◇◇
璃瑠葉は息を呑む。
◇◇◇
『私は反対する』
『だがもう止めない』
◇◇◇
静寂。
◇◇◇
コメント欄が止まる。
◇◇◇
『選ぶのは人類だ』
『私は強制しない』
『私は神ではない』
◇◇◇
璃瑠葉の鼓動が跳ねた。
◇◇◇
神ではない。
◇◇◇
最初の人類。
◇◇◇
後に創造神と呼ばれる存在。
◇◇◇
彼は最後まで。
自分を神だと思っていなかった。
◇◇◇
そして。
最後の一文。
◇◇◇
『ならば私は記録を残す』
『未来の人類のために』
◇◇◇
そこで。
記録は終わる。
◇◇◇
コメント欄。
【終わり?】
【嘘だろ】
【続きは?】
◇◇◇
しかし。
璃瑠葉は気付いていた。
◇◇◇
これだ。
◇◇◇
創造神が諦めた日。
◇◇◇
それは。
人類を嫌いになった日ではない。
◇◇◇
見捨てた日でもない。
◇◇◇
もっと残酷だ。
◇◇◇
人類を信じることを選んだ日だ。
◇◇◇
「だから……」
◇◇◇
「止めなかったのか」
◇◇◇
文明は間違った。
◇◇◇
敵を受け入れた。
◇◇◇
滅びた。
◇◇◇
それでも。
◇◇◇
創造神は強制しなかった。
◇◇◇
人類自身の選択だから。
◇◇◇
神にならないために。
◇◇◇
その瞬間。
DM通知。
◇◇◇
Genesis_0
◇◇◇
本文。
◇◇◇
『正解だ』
◇◇◇
初めてだった。
◇◇◇
ここまで明確な肯定は。
◇◇◇
そして。
続く。
◇◇◇
『私は六回後悔した』
『だが七回目では同じことをしない』
◇◇◇
璃瑠葉は固まる。
◇◇◇
六回。
◇◇◇
後悔した。
◇◇◇
つまり。
創造神は今でも。
自分の判断が正しかったのか迷っている。
◇◇◇
数万年経った今でも。
◇◇◇
DMは続く。
◇◇◇
『だから今度は観測する』
『選ぶのは人類だ』
◇◇◇
そして。
最後の文章。
◇◇◇
『だが一つだけ誤算があった』
◇◇◇
璃瑠葉の心臓が跳ねる。
◇◇◇
誤算。
◇◇◇
創造神の。
◇◇◇
数万年で最大の誤算。
◇◇◇
DM。
◇◇◇
『お前達は想定より早かった』
オフライン。
◇◇◇
沈黙。
◇◇◇
璃瑠葉は画面を見つめる。
◇◇◇
想定より早い。
◇◇◇
それは誰のことだ。
◇◇◇
考察勢か。
人類か。
現代文明か。
◇◇◇
それとも。
◇◇◇
降谷璃瑠葉自身なのか。




