第6話 農業
農家の仕事といってもゲームとリアル、そしてゲームの中でも難易度がある。このゲームはリアル感を出すよりもかなり楽にできるようにゲームらしく簡単になっている。ウルが鍛冶や木工、調薬や大工をマニュアルでやっているのに上手くいっているのはそれが理由だ。
そうではなければ師匠がいるとはいえ、ウルはゲームは無知であり、趣味も読書と料理であり、リアルでは大工などしたことがないのだ。
ゲームの恩恵、そしてスキルやステータスの恩恵は凄まじいのだろうとウルはゲームをしながらも感じていた。
農業に関してはマニュアルにはせず、オートに設定していた。オートと言っても放置したら勝手に育ちいつのまにか回収されているわけではないが、種を見るとここで育てますとでたり、
植えた後には水が足りません、栄養が足りませんなど足りないものが確認できるようになっているのだ。
農家プレイヤーからしたらそれは楽しくないとマニュアルで楽しんでいる人がほとんどであり、その中でも虫や病気に困っている人がいると聞いていたが、ウルには関係ない話であった。
ウルの農地は全域神社の結界が張りめぐらされており、その中でも病気や瘴気など不浄な力には強く、植物が病気にならないのだ。なったとしても聖水を撒くとあっという間に治る。
虫もほとんど寄り付かず、たまに入ってきた虫も悪さをあまりせず、したところでジー様が水魔法で追い払ってくれると言うのだ。
通常の農家プレイヤーより100倍は楽に農業をすることができるのだ。今回はウルやネイアがやっているが、そのうち孤児院の子供達にもやってもらうことが決まっている。マリーやジャックにもお伺いを立て、了解を得ている。住民の農業のお手伝いをしているので、牧場よりは役に立つとみんな喜んでいると言われ、愛想笑いをしたのは秘密であった。
ウルの目の前にはふかふかの土がずっと向こうまで広がっている。聖樹のために作っておいた栄養満点の土と、ネイアとジー様、ウルが地面を掘り起こしまぜたちょうど良い栄養の土があり、あとは小麦の種を蒔けば良いのだ。
本来なら機械で等間隔にやらないといけないのだろう。しかしウルの目の前の画面には
【種を握り、前に大雑把に投げてください】
と出ていた。恐る恐る一掴みの小麦の種を前に放り投げると、奇妙なくらい等間隔に飛んでいった。
久々にゲームっぽさにウルは驚きながらも、こらなら腰を痛めなくて済むかもと、ゲームなのに身体の痛みについて気にしていたのが解消されたのか、どんどん蒔いていく。
蒔いた種はジー様が土魔法でやさしく土を被せると、水魔法で樽に入れてある聖水を振りかける。
二人のコンビネーションはあっという間に小麦の種を蒔くことができた。となりの農地には牧草の種を同じように蒔いていく。
簡単に終わり、少し拍子抜けをしているウルに。
「ウルはスキルの力でこうだが、子供たちはこうもいかん。しっかり農地を決めておかねば身体を壊すぞ。」
二人でウルがいない場合の農地を決めていると、神社の方から大きな鹿、ネイアが飛んでくる。
農地に蒔かれた種を見つけると、力を込めて緑の魔力を振りまいた。
うんうんと頷くと、ウルの方へ振り向いた。
「よし。ほんの少しだけど私の力で豊穣になりやすくしたわ。」
「あ、ありがとうございます。ネイア様。」
「いいのいいの。こういうのをやらないと祀られてるだけじゃね〜。あとはウル!あれをやりなさい!」
「え?な、なにをですか?」
「決まってるじゃない、豊穣の舞にシヴァ様から教えてもらった踊りもよ!」
豊穣の舞、そして再生・成長の踊りはそれぞれ植物系の成長に効果がある。豊穣の舞は戦闘には使わないが、舞の練習は度々しているため舞うことは容易であり、
再生の方は仲間が傷ついたときに使っているが、踊りが完ぺきではなくてもダマルの効果によりかなり回復できるのだ。つまり、踊りのほうはまだ完ぺきにできていないのだ。
「う、まだ踊りのほうは恥ずかしいのに…。」
「私たちは見ないからしっかりおやりなさい。農業を続けていくんだからこの踊りもしっかり練習することね。」
「は、はい…。」
見られる恥ずかしさが無くなったことで、ウルも覚悟を決めて踊ることにした。アイテムバックからダマルを出すと、音を鳴らしながら激しく踊る。
舞とは違い、踊りはかなり激しいのだ。だからずっとゆったりとしたリズムの舞を練習していたウルにとってはまだ慣れない行動で踊るのに時間がかかっているのだ。
スキルの効果によりマシにはなっているのだが、シヴァの踊りを前で見たウルにとって、そしてシヴァに教えてもらった踊りであるのでもっと完ぺきに踊りたいと思うのは自然のことであった。
しばらく踊りを続けたウルは、疲れ果て地面にしゃがみ込むと。外にいたネイアとジー様が戻ってくる。
「あら。根がしっかり付いたわね。これで毎日踊れば早く収穫ができるわ。」
「そうなんですか…これを毎日…。」
「練習になるんだからいいじゃない。シヴァ様もいい加減踊りを覚えないと怒るかもしれないわよ。」
「え…?が、がんばります。」
ウルはあのシヴァの姿を思い出すと、これから踊りも頑張ろうと拳を握りしめるのだった。




