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犬飼さんは目立ちます!!  作者: 猫踏み三年
第五章 犬飼さんは友達を作ります

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第22話 急転直下

「ワン!」

「ピマン!」


 ワン太のキックで、ピーマンが吹っ飛ばされる。

 昨日みたはずであったが、慣れない光景に今日もびっくりしながら周りを警戒しているウルである。

 あの後機嫌が治ったアルデと、ずっと撫でられているアルデを見ていたみんなが私たちも無でろと怒られたため、ログアウトするまでずっと撫で続けることになったのだった。


 あまり撫ですぎると怒るワン太ですらも、昨日は我先に無でろと言ってきたため、愛らしさにドキドキしていたが、その癒やしもこの光景で現実に戻されてしまう。


「本当に倒しやすいんだね。」

「うん。なぜかはわからない。アーサーは大変だったとか言っていた。」

「え? モンスターが変わったのは最近なの?」

「うん。アーサーがリンネルに来てから1週間後くらい?」

「そ、そうなんだ。もっと前からだと思っていたよ。」

「だから魔族の仕業ってもっぱらの噂。」

「確かに。魔王も映像か何かですごいことしていたし。」

「そういうこと、魔族の上の方ならモンスターを変えることなんてできる。」

「でも、理由はなんだろうね。野菜にして何がいいんだろう。」




「そんなこと簡単じゃない?あのフォルムが可愛らしいからよ。」


「うーちゃん!」

「!?」


 ウルの後ろから声が聞こえた瞬間、サクラが一瞬のうちにスキルを使用し、声をかけた方へ、鋭い抜刀術を繰り出した。しかし、その斬撃が届くことはなく、何者かは、遠くでこちらをにこやかに見ていた。


「私は八玉のリダリザよ。よろしくね小娘たち。」

「八玉?サクラちゃんわかる?」

「うーちゃん…孤島に最後に来たやつと同じ。」

「へー。あなたたちはあそこに居たのね。だったら私が行けばよかったわ。」

「なんのよう。」

「なんのようとは酷いわね~~。その子が疑問を口にしていたから教えてあげただけなのにね。」

「え? 私。」

「昨日も同じ子と言っていたでしょ? だから教えてあげたくなっちゃって。ほら、私って優しい魔族だからさ?

「大した理由もないのに恩着せがましい。脅かしたいだけ。」

「え?」

「あらら。それもあるけど、でもあなたに教えたくなっちゃったのは本当よ?」

「な、なんでですか?」

「なんでって?それは簡単よ。」



「あなたが私の部下を殺したウルって子でしょ?冥土の土産ってやつかしらね。」



 ウルにリダリザという魔族が襲い掛かってきた。手がツタに変わり、足先が根になり、根からモンスターが次々に現れる。


「うーちゃんは待っていて。」

「サクラちゃん?」


「私が倒してくる。」


 大太刀を構え、サクラは一瞬のうちに八玉いがいのモンスターを切り伏せながら根にも剣戟を加えていく。


 ウルとその仲間たちは、その戦闘に入ることはできなかった。スピードが違いすぎるからであった。


 次々と敵を倒しながら、さらにスピードとダメージを重ねていくサクラと、敵を無尽蔵に繰り出しながら堅牢な木の鎧で身を固めるリダリザの戦いは膠着状態になっていく。


 サクラのスキル構成として、弱点を切り伏せることでダメージを与える、そして敵を倒し続けることで強くなっていくことで集団をソロで壊滅するのだ。


 リダリザは、そのスキルを読み、すぐさまモンスターを生み出し続けることはやめ、単身での攻撃に移る。


 そこからはサクラにとっては苦しい戦いであった。苦手なタイプのモンスターであり、それで守りたいウルがいるのだ、リダリザとの戦いが始まった瞬間にエリアから逃げられなくなったのだ。逃げられるのならいくらでも手があるのだが。


 サクラは考え事をしながらリダリザのツタを使った攻撃や魔法を簡単に避け続ける。


 しかし、20分も回避を続けながら攻撃しているサクラにはスタミナの限界が見えてきた。アイテムやスキルでの補正があっても休憩などない、HPは一ミリも減っていないが、このままでは負けてしまう。


 リダリザの方へ斬撃を繰り返したが、堅牢な鎧を壊せず、最低限のダメージしか与えられない。総HPの1割も削れていない。


 最も、魔族である上に八玉というネームド魔族のHPをこれだけ今の段階で減らせるのは、サクラとアーサーのみであろう。



 しかし、このままでは、サクラは負け、その後ろにいるウルも倒されるだろう。









「さ、サクラちゃん。どうしたらいいんだろう。」


 ウルはずっと自分でできることを考えていた、あまりにも無力である自分が、どうにかしてこの状況を解決できる方法を。弓での攻撃でどうにかできるわけがない。舞も動けなくなるため、あっという間に倒されるだろう。ダマルでの攻撃などHPを1%を削る前に倒されるだろう。


 しかし、このままなら自分のせいでサクラが倒されてしまうことになってしまう。自分のアイテムバックに入っているものを取り出しながら考える。


 しかし、一向に解決策が出ずに、そろそろサクラの回避も限界になってしまうことがウルでもわかってしまう。最低限の動きのみで避けているのだ。


 目を閉じ、思い切り息を吸い込むと、思い切り目を開いた。


「こうなったらヤケだよ。みんな来て。」

「ワン?」「ちゅん?」「ちら?」「もー?」「くあ?」


「サクラを救うよ。やってやるんだ。」









「ほらほら。あなたがいくら頑張っても私は倒せなくてよ?」

「ダメージを受けてる上、こちらに攻撃を当てられていない。雑魚の戯言。」

「そんな減らず口を叩くこともそろそろ出来なくては?あなたの体力もなくなっていまして?」

「スタミナが減らないとプレイヤー一人も倒せない。八玉というのは軽い看板。」


「き、貴様!!!ベルゼブブ様から承った称号を貴様らごときにいいいいい!」

「ただでさえ単調、キレたらもう見なくても避けれる。」

「ギャァ!!」


 サクラは戦闘の中でも、ずっとウルのことを気にしていた。ゲームを初めてやる上、元々の性格上、ボスバトルなどは大の苦手だろう。それは戦闘を開始してからずっと見ていた表情でわかることだった。この戦闘に入れない。サクラに頑張ってとエールを送っているのが見て取れていたからだ。


 しかし、今では違う。サクラの明確に負け筋が見えてきた。そして体力の限界も近いのをウルもわかっているのだ。親友が疲れている、しんどい時など何度も見たことがあるからだ。


 ぐっと目を閉じると、数秒呼吸を整え、そして覚悟が決まったような顔で、ワン太たちを呼んでいる。


 ああ、この顔が好きだ。サクラにとってはウルのこの顔が世界で一番好きだった。最悪の場所を最高の場所に変えてくれた。あの時と同じ顔をしていた。


 サクラも覚悟が決まった。本調子ではない上、本気の刀はすべてメンテナンスに出している。しかし、こいつを倒す、本気でつぶす。そのためには準備が必要だ。


 アイテムボックスからエンチャント用の木の板を取り出し、割る。スピードとパワーにプラス効果が得られた。なけなしの魔力でエンチャントをする。




「神器解放 ファースト」




 アイテムボックスから木刀を取り出したと思ったら、その言葉を発した瞬間木刀は光り、鉄でできた大太刀に変化した。


「ま、まさか神器をもう持つものが現れたとは、しかし、それで勝てると?」

「くだらない文言、お前に言う言葉もうない。」



「神光抜刀術 その1 雷光」

「五月雨剣術 その3 大花火」



「グアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!!」




 雷が落ちるような、一瞬の時間で回避不能に近い抜刀術をする、それはリダリザも同じことだった。胸に一文字が刻まれる。

 そして、五月雨剣術抜刀により、傷口から内部に連続して剣術のダメージが入っていく。それは弱点であれば、ダメージ量が高ければその分回数は増える。

 ボスキャラであれど、鎧の内部に入るダメージは凄まじく、HPを2割近く消し飛ばす。


 その効果の反動は凄まじく、サクラは地面に倒れた後に動くことはなかった。


「くそ、クソくそくそ!しかし、お前はもう動けまい。お前とあいつを殺して私の勝ちは変わらない。」


「サクラちゃん! 茨の根! ウッドトラップ!」

「何をするかと思ったら、ドライアドの魔人の私に植物魔法ですって?馬鹿じゃないの?」



「シードミサイル!」

「こんな種なんて、って私じゃない?魔法でできた茨の先に袋に向けてですって。」


 ウルのシードミサイルで茨の根の先にあった風呂敷をずたずたにし、中身があふれる。ポーションなどたくさんの薬であることがわかる。


「こんなもの、毒ポーションとしても私に効くわけないじゃない。ってあら。なにこれ。」


「ポーションです。回復するだけのポーションです。」

「な、なに…それなのに体が重い。」


 ポーションは回復できる。それは魔族であるものも同じことだ。しかし、ポーションは連続服用を推奨されていない。連続服用は止められるのだ。ウルは冒険者ギルドで講習も初心者が行うチュートリアルをしていないため、ずっと知らなかったのだ。


 しかし、生産ギルドで低級ポーションを作るときに魔力が必要のため、連続服用をしてダウンして噴水前まで飛ばされたことがあったのだ。


 今回は低級ポーションと低級マジックポーションを50個ずつ、ウルなら10回は死ぬ量だ。ダメージこそないが、疲労状態にすることが出来た。


 植物の魔族の弱点として、生えている根は水分を食事だと考えてしまい、本人の意思とは関係なく、全部吸い取ってしまうことだ。そのため上位魔族は毒は効かないが、ポーションには弱いのだ。



「不知火! チラリンもお願い。」


 ウルの弓矢とチラリンの魔法で攻撃が当たっていく、サクラのおかげで装甲は剥がれており、ウルたちの弱い攻撃でもほんの少しだけ削れていく。


「な、舐めるな!! 貴様なぞ雑魚に私がいつまでも優しくすると思うな!!」


 ついにキレたリダリザは遠距離攻撃から、ウルに直接攻撃をすることにした。すごいスピードでウルのもとに来る。


「ワン太、おちゅんさん、アルデ、お願い!」

「ワン!」「ちゅん!」「モー!」


 ウルの掛け声で、それぞれ聖守護結界と破邪結界をウルに張る、3つの結界で守られたウルは、リダリザの攻撃を防ぐ。それと同時にウルに近づいたリダリザの地面に大きく穴が開いた。



「な、なんだと!!」

「落とし穴です。」



 ウルとリダリザは大穴の中に落ちていくのだった。


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