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王都襲撃

 モウリガスの屋敷から脱出したテスタは、ツタリアから歩いて二日ほどの、王都ディスタールに到着した。

 王都ディスタール。科学技術の発展により、繁栄を手にした智族中心の街だ。ツタリアとを超える大都市であり、その中央には王宮がそびえ立つ。

 街に到着したはいいが、長旅で疲れたので、少し休むことにした。

 ツタリアにいたときと同じように、裏路地で横になる。地面は濡れてジメジメとしているし、ゴミなどの悪臭が充満しているが、テスタには慣れたものだった。

 テスタは倒すべき敵を前に、決意を新たにした。自分には、王政を打倒するための力があるし、使命があると考えていた。

「短期決戦だ。ここで仲間を集い、反乱を起こす」

 テスタは呟いた。自分の腕を見つめる。この腕には自分だけでなく、リカリアの力も宿っている。そして、リカリアの思いも。だから、絶対に負けるわけにはいかない。

「俺の能力で、テレビの電波を制圧する。そしてこの街の市民に呼びかける。王政に不満を持つ魔族は山ほどいる。そいつらを仲間にできれば、相当な戦力になるはずだ」

 翌日、テスタはテレビ局へ向かった。

 この国の主要放送局の一つで、視聴率は常にトップを保っていた。確か、国王が魔族弾圧令を出したときの中継も、この局だった。

「国営のテレビ局とはいえ、ここが襲撃されるとは思ってもないだろうから、警備は手薄だな」

 テスタは見学者を装い、局内に侵入した。全く怪しまれることなくスタジオの前までやってきた。だが、やはり放送スタジオの前には警備員が立っていた。それでも、相手は一人なので、十分電気ショックで気絶させられるだろう。

 柱の陰から勢いよく飛び出した。

「何だ!?」

 警備員が状況を判断する間もなく、テスタは電気を纏った腕で相手の頭を触った。

「恨みは無いが――!」

 警備員はその場に倒れ込む。静かに倒したので、周囲の人間は誰も気づいていない。テスタは、そのままスタジオに潜入する。

 スタジオ内ではニュース番組の収録が行われていた。出演者とスタッフ合わせて十人は超えていた。

「流石にここ全員を気絶させるのは無理か。だったら――」

 部屋の照明を全て停止させ、その隙にカメラの前に移動。そして電気ショックでキャスターを気絶させた。

 スタジオ内がざわつく中、暫くすると再び照明が戻る。それと同時に、カメラに向かってテスタが話し始めた。

「王都ディスタールにお住まいの皆さん。そして、全国の皆さん。初めまして。俺の名前はテスタ。この世界を変える者です。俺は今ここに、王政打倒を宣言します」

 スタジオにテスタの声が響き渡る。

「放送を止めろ!」

 プロデューサーらしき男が叫んだ。だが、テスタは応じることもなく、逆に彼らを脅してみせた。

「放送を止めるとなると、お前たちもここのキャスターと同じ目に遭わせるぞ」

 一部始終を見ていないスタジオの人間からすると、キャスターは死んでいるように見えたらしい。それをテスタは利用したのだ。

 スタジオを黙らせると、テスタは話を続けた。完全に、スタジオはテスタの恐怖によって支配されていた。

「俺は、魔族だ。この王政によって迫害された、魔族だ。俺たち魔族は、智族によって迫害され、職を追われ、奴隷のような扱いまで受けた――。同じ人間なのに、このような扱いは許すわけにはいかない。魔族迫害を掲げる王政を打倒することを、俺は今ここに誓う! 全国の同志よ、立ち上がれ!」

 テスタの演説を遮るように、スタジオのどこかからか震えた声が聞こえた。

「待て! 軍を呼んだ! 貴様にもう逃げ場はない……」

 その場にいたスタッフが通報したらしい。

「余計なことを……!」

 慌てて廊下に出て、窓から下を見ると、既に軍隊が建物を包囲し始めていた。兵士、戦闘ロボット、戦闘車両。合わせて相当な数だ。流石王都、対応の早さも、兵力の多さも予想以上だ。

 ビルから出ようとしたとき、表で突如爆発音が聞こえた。再び窓を覗くと、王国軍の戦闘ロボットが次々と爆発している。

「あれは……仲間か!?」

 テスタの演説を聞き、魔族が一斉蜂起したようだ。テスタは再びスタジオに戻り、マイクを手に取った。

「俺は王宮に攻め込む。勇敢なる魔族たちよ、俺たちと共に来い!」

 その放送は街中に響き渡り、魔族たちを煽った。

 魔族たちは奮起、一斉に王宮へと攻め込んだ。テスタも合流し、ますます勢いは増す。

「俺に続け!」

 一行は破竹の勢いで王宮を目指す。道中の軍隊は最早彼らの敵ではなかった。戦闘車両やロボットを次々と破壊して進む。

 一時間も経たずに、彼らは王宮へ到着した。

「やはり警備は厳重か……だが、我らの敵ではない、進め!」

 テスタは号令をかける。一斉に魔族軍は走り出す。王宮の門付近は両軍入り乱れ、大乱戦となっていた。

 戦況は魔族軍が優勢で、徐々に王国軍は押され始めていた。

「突入しろ!」

 タイミングを見計らい、テスタは再び号令する。魔族軍は門を破り、ついに王宮の庭園へと突入した。

 テスタは門の外に残った敵軍を相手に戦っていた。

 すると、先に突入していた魔族が数人、門の奥から吹き飛ばされてきた。

「おい、どうした!?」

 そのうちの一人にテスタは駆け寄り、尋ねた。

「水の、魔族……」

 苦しそうな声で彼は答えた。

「妖精使い!? どういう事だ!?」

 彼はそれっきり答えない。テスタは急いで門をくぐった。

 王宮の庭へ到着すると、そこに一人の男が立っていた。腕には魔法の紋章が浮かび上がっている。信じがたいが、彼も魔族のようだ。

「君がテスタか?」

 男は言った。飄々とした声だ。とても、戦闘中とは思えない余裕が感じられる。

「誰だ!? どうして魔族の癖に王国側にいる!? 俺と一緒に来い!」

「僕の名前はカルアス。残念ながら、その誘いは受けられない。僕はこの国に忠誠を誓っているからね。この国に反逆する君たちは僕が粛清する!」

 カルアスと名乗った男が右手を上げると、カルアスの背後の噴水から一筋の水が伸び、テスタを襲った。一瞬でそれはテスタの腹に直撃し、王宮の門の外まで吹き飛ばした。

「水を操る魔族……こいつ、手ごわいぞ」

 起き上がると、すぐにテスタは思考を巡らせる。どうやってあの敵を倒す?

「これだ! できるかどうかわからないが――」

 テスタは、右手を挙げた。倒れている兵士の銃や、軍事車両の武器を磁力で引き寄せ、かき集める。このようなことができるようになったのも、リカリアのおかげだ。

「一斉放火だ!」

 号令を掛けると、全ての武器の引き金が引かれ、弾丸の嵐がカルアスを襲った。

「ほう、初めてにしてはなかなかやるね。でも――」

 カルスも号令を掛ける。すると、噴水の水が溢れ出し、弾丸を全てのみ込んだ。

「その程度じゃ僕を倒せない」

 カルアスは余裕の笑みを浮かべる。

「かかったな!」

 背後から、テスタが襲い掛かる。さっきの一瞬の間に、磁力でテスタの背後の戦車の残骸に吸い付き、カルアスに殴りかかったのだ。

「その程度じゃ僕を倒せない、と言ったはずだ」

 突如、テスタの足元から地響きが起こり、大量の水が地面から噴き出した。

「発想は良かったけど、君はまだ未熟すぎたね。力を付けたからって、すぐに調子に乗ったのがいけなかった」

 テスタは高く空に打ち上げられた。そして、再び地面に打ち付けられ、気を失ってしまった。

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