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エピローグ:彼らの手は汚れているか

観月文香著「彼らの手は汚れているか ~記者の見たCAMPの最前線~」戌亥社新書 のあとがきより



 私が初めて児童超常変異現象対策庁の取材を行ってから、既に2年ちかくが経過した。

 元々は雑誌の片隅をにぎわすだけの、数回のシリーズ連載だったものが、好評を得て(CAMP関連にしては、という注釈は必要だが)回を重ね、このたび新書という形でまとめられる運びとなったことを素直に嬉しく思う。

 これもひとえに、戌亥社編集部と対策庁の皆さんのご助力あっての事であり、ここで謝意を述べたい。


 とは言え、本書に記されているCAMPの現実と対策庁の職務は、どちらも氷山のほんの一角でしかない。


 私が実際に現場で目にしながらも、当事者への配慮から掲載を見送った出来事は多く、また、私のあずかり知らないところで発生し、終結した事も多いはずだ。

 掲載しながらも、私の力不足から、実態が十分に伝えられていないこともあるだろう。

 しかし、それでも本書が読者の方々のCAMPおよび対策庁の職務に対する理解の一助となったのであれば、それに勝る幸いはない。


 さて、あとがきにあたって私は再度、本書のタイトルでもある疑問を皆さんに問いかけたい。すなわち、

「彼らの手は汚れているか」

 最初に断わっておくが、正解などは用意されていない。これから述べるのも、あくまで私の私見である。


「汚れていない」と答える人。きっと、あなたは優しい人だ。

 罪の意識に、職務の重さに耐えている対策庁の職員の手を握ってあげて欲しい。貴方たちの言葉に、彼らは必ず励まされるだろう。


「汚れている」と答える人。実は、私もこちらの意見である。

 他ならぬ、対策庁の職員もほとんどがこちらの意見に頷くであろう。彼らの罪の意識は根深いものがある。


 それでも、と私は言わずにはいられない。

 対策庁の職員でない人間。普通のサラリーマンであったり、料理人であったり、ジャーナリストであったり、そういう人間の手は汚れていないのだろうか。

 私は、彼らの手も汚れていると思う。


 対策庁の職員が手を汚すことでもたらされる平穏。その中で生活する私たちが彼らの職務と無関係だと考えることは、いささか以上に無理がある。

 そもそも、高度に発達し、複雑に入り組んだ現代社会において、他者と関係のない仕事などありはしないのではないか。


 望むと望まないとにかかわらず、誰もが、自分以外の誰かのために働いている。

 そこに職業による区別はなく。実際、私が見た対策庁の職員たちも、笑い、泣き、傷つきながら、自身の職務に立ち向かう普通の人間ばかりだった。

 彼らの手が汚れているのであれば、私たちの手もまた汚れているはずなのだ。私たちの手が汚れていないのであれば、彼らの手も汚れてはいまい。


 誰の手も汚れていないのか。人の手はすべからく汚れているのか。


 どちらが、正しいということではない。ただ、本書を手に取ってくださった方々が、ここに記されたことを自身とは関係のない特殊な出来事ととらえるのではなく。

 自分自身を含めた、世の中すべての人と密接に関係した出来事であると受け止めてくださることを祈るばかりである。


20××年 10月 観月文香

 読了、ありがとうございました。

 最後にあとがきを少々。


 お仕事小説コンの記事を目にして、「締切」というモノを体験してみたいと思い。設定だけ作って放っておいたこの話を書き始めたのが、大体2か月半前。

 なんとか、完結はしたな。と、言う感じです。


 ちなみに、一番好きな登場人物は吉村です。彼を主人公に新人職員の奮闘記にするプロットもありました。

 彼の目端はきくのに、そそっかしくい。根は真面目なのに、道化ずにはいられない。そんな、ほとんど設定だけで終わってしまった部分をもっと取り上げたかったです。


 それ以外にも反省点は多いですが、次回以降の課題ということで。


 年内には、新しい物の投稿を開始する予定ですので、どこかで見かけたら読んでいただけると嬉しいです。


 ここまでお付き合いいただいて本当にありがとうございました。

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