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百姓娘とお嬢様

 明治25年。

誰もいない廃神社。お斗和が雨宿りをしていた。彼女は風呂敷を広げ写真を眺める。そこに映っているのは2人の少女。1人は振り袖を着て長い黒髪に赤いリボンの少女。もう1人赤い麻の着物に白い枚掛けに髪を1つに纏めた少女。お斗和だ。

「お嬢様、」

お斗和は元々地方の農家の長女として生まれた。8人兄妹の3番目で次女だった。

 お斗和は小学校から農家の手伝いをさせられた。兄と一緒に野菜を荷台に積み街の八百屋まで売りに行く。帰って来たら母と夕食の支度。そんな日々を送っていた。

 しかしお斗和が10才の時その生活に終止符を告げた。冬、雪が振り積もり野菜が育たなくなり生計を立てていくのが難しくなった。

ある日黒い服を着た男がやって来た。都会から来た人買いだとすぐに分かった。子供達は寝室に隠れ両親達が男と話しているのを襖に聞き耳を立てて聞いている。


「長男は大事なうちの働き手だからね。」

「じゃあ長女はどうだ?」

「長女は下の娘達の面倒見てくれるからね。」

「そうかだったらその下を。」

その下はお斗和の事だ。

「お父ちゃん、お母ちゃん!!」

お斗和は襖を空けて飛び出ていく。

「あたし、売られちゃうの?」

同じ小学校の娘が言ってるのを思い出した。その娘の家にも黒い服の男がやって来て姉を連れて行ったと。

「この娘だよ。買っておくれ。」

お斗和は泣き叫んだが男に連れられ馬車に乗せられる。わずかなお金と着替えだけを持って。

 





 馬車はどれだけ走ったか次の日の夜にはどこかに停まった。 

「起きろ!!」

男に起こされ馬車を降りるとそこはお屋敷だった。身なりの良い紳士が迎えてくれる。

「旦那様、連れて参りました。」

「新しい奉公人か?」

紳士はお斗和を見る。

「君は名前は?」

「お斗和です。」

「お斗和か、今日からここで働いてもらう。君には炊事や掃除をしてくれればいいよ。」

「はい。」

炊事なら母の夕食の支度を手伝っていたから少しはできる。最初はそう思った。しかし



「よいっしょ!!」

お斗和は次の日の朝から仕事に入る。早朝最初に任されたのは薪割りだった。

「きゃあ!!」

しかし斧が重すぎてフラフラしてしまい、尻もちをついてしまう。

「何やってるんだい?」

先輩の女中が様子を見に来る。

「ここはいいから、井戸に水を組んできておくれ。」

先輩からバケツを渡され井戸まで行く。

 井戸の縄にバケツを繋ぎ井戸の底まで降ろす。

水が入ったバケツは思ったより重く持ち上がらない。

辛うじて上がってきたバケツを縄を解こうとすると 


「きゃあ!!」  


水を溢してしまう。


「大丈夫?」

背後から誰かに声をかけられた。

「すみません。」

先輩かと思い謝る。

「ずぶ濡れじゃない。」

そこには桃色の振り袖を着た女の子が立っていた。

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