01-始まりの詩章 第1章 小さな君と一緒に
タッタッタッ…
「エミール、廊下でそんなに速く走っちゃだめよ。セレイアは待ってくれるから!」
背後からお母さんの声が聞こえてきた。
「へへっ、だって早くリヤと遊びたいんだもん〜行ってきます!」
「はぁ、この子の活発な性格、本当にお父さんにそっくりね…どうして私が産んだ子なのに、性格は少しも私に似ていないのかしら?」
黒いポニーテールに眼鏡をかけたお母さんが、僕が家を出る前にキッチンから出てきた。
彼女は片手を頬に添えながら苦笑し、靴を履いている僕のそばに立って見守っていた。
「いや、元気いっぱいなのが子供ってものだろ…それはそれでいいじゃないか?」
リビングで新聞を読んでいたお父さんは新聞を下ろすと、お母さんのそばまでやって来て、そのまま彼女の腰を抱き寄せ、七歳になる一人息子の目の前で仲の良さを見せつけ始めた。
表面上は仲睦まじい夫婦に見えるこの二人だが、実際はアルカディア中で最も有名な二人の編織者だった。
編織者はさまざまな物語を自身の能力として具現化、都市の中心に位置する【仙境】へ赴き、探索と冒険を行う。
簡単に言えば、異世界物語に出てくる冒険者みたいなものだよ〜
そうそう!
僕の後ろに立っているこの夫婦、実はその正体もただ者じゃないんだよ?
なんと彼らは…現在【仙境】探索ランキングの首位で、夫婦そろって同率一位に君臨している編織者なのだ!
「よし、行ってきます!」
「はぁ、もう…気をつけて行くのよ。ちゃんと車に気をつけなさい!あまり速く走って転ばないようにね?夕飯までには必ず帰ってくること。それから、全身泥だらけになるまで遊ばないのよ?」
「うん!わかったよ、お母さん!」
扉を閉めると、僕はすぐに家の近くにある公園へ向かって走り出した。
僕の幼なじみであるセレイア――僕がリヤと呼んでいる女の子は、五分前には先に公園へ行って、僕を待っているはずだった。
——————
「〜♪」
「よう、エミール。またセレイアちゃんと遊びに行くのか?」
昨夜観たアニメの曲を鼻歌で口ずさみながら公園へ走っている僕を見て、山羊のような髭を生やしたおじいさんが声をかけてきた。
「ヘクトおじいちゃん、こんにちは!うん、リヤはもうそこで僕を待ってるんだ」
「ほっほっほ…お前たち二人は小さい頃から毎日のように一緒に遊んでいて、本当に仲がいいな?」
「もちろんだよ!リヤは僕と指切りして、一生友達でいるって約束した相手なんだから」
彼は、公園へ向かう道の途中にある東屋で、よく涼んでいるおじいさんだ。
僕たちはほとんど毎日のようにここで顔を合わせていて、いつの間にか会えば挨拶を交わすような関係になっていた。
「そうか。気をつけて行くんだぞ」
「うん、先に行くね、ヘクトおじいちゃん!」
この道を抜けると、少し離れた場所に、巨大で人だかりのできている建物が見えてくる。
そこは、探索委員会が管理している【仙境】の入口だった。
編織者の能力に無事覚醒した人々の多くは、探索許可証を申請したあと、ここで会員登録を行い、【仙境】へ入って探索を行う。
彼らはさらに、【仙境】内に出現する破劇者と呼ばれるモンスターのドロップ品を持ち帰り、現金に換えている。
今のところ、【仙境】がいったいどれほど深いのか、正確に確認できた人はまだいない。
けれど、お父さんとお母さんの最深探索記録から考えると、少なくとも五十七層以上はあることになる。
だからこそ、お父さんとお母さんには、ものすごく多くの注目が集まっている。
みんな、いったい誰が【仙境】の最果てにたどり着くのかを見届けたいのだ。
そして…
――【仙境】の果てには、いったいどんな宝物が存在しているのかを。
正直に言うと…
僕はお父さんとお母さんに憧れている。
街の人たちが、お父さんたちの【仙境】探索の話を世間話の種にしているのをよく耳にするし、時にはテレビで二人が【仙境】を探索している映像を見ることもある。
本当に…
胸が熱くなる。
いつか僕も、最高の仲間たちを見つけて、その人たちと一緒に【仙境】を探索できるのだろうか?
今年、僕はもう七歳の誕生日を迎えた。
もしかしたら、あと数日もすれば、僕も覚醒するかもしれない。
楽しみだな…
まあ、どちらにせよ、もしリヤも編織者になったら、僕はきっと彼女とチームを組むんだろうな。
——————
「リヤ!ごめん、待たせた?」
「大丈夫大丈夫〜私もさっき着いたばかりだよ。エミ、なんだか息が上がってるみたいだけど?もしかして、家からずっと走ってきたの?」
白いワンピースを着た黒髪の少女は、僕を見るなり、公園の芝生からすぐに立ち上がり、その顔にぱっと笑顔を咲かせた。
「うん…リヤをあまり待たせたくなかったから、走って会いに来たんだ」
「まだ十五分くらいだし、そんなに長くないよ。それより、これ見て!この花、さっき草むらで見つけたの。綺麗でしょ?」
リヤは大きな白い花を自分の左耳に飾ると、笑顔で僕にその戦利品を見せてくれた。
「へぇ…?すごく綺麗…!その花、どこで見つけたの?僕も一つ欲しい!」
「あっちの小道のそばで見つけたんだよ。エミも欲しいの?しょうがないなぁ、私が一つ見つけてあげる」
「ありがとう、リヤ!大好き!」
「私たち、指切りした仲だもんね〜当然だよ〜」
ぱたっ。
ん…?
「リヤ、今、何かが空から落ちてこなかった?」
「そうみたい…!あっちの草むらだよ。見に行ってみよう」
「うん!」
サワサワ…
「よいしょ…この茂みを越えるの、けっこう大変だったな…」
「ふふふ…」
「どうしたの、リヤ?何を笑ってるの?」
僕たち二人の背丈よりも高い茂みを、ようやく何とか越えたところで、リヤが突然こらえきれずに笑い出した。
「髪に葉っぱがくっついてるよ」
「あ…」
彼女はつま先立ちになって、僕の髪から一枚の葉っぱを摘み取ると、得意げにその葉っぱを僕の目の前へ掲げた。まるで僕がお礼を言うのを待っているみたいだった。
「…リヤの服だって、葉っぱだらけだよ。リヤが僕を助けてくれたなら、僕も取ってあげる」
「えへへ…ありがとう!」
リヤの服についていた葉っぱも一枚ずつ取り除いてから、僕たちは改めて、さっき落下音が聞こえた方向へ視線を向けた。
すると、目を凝らして見てみると…
「えっ!小鳥だ!どうして落ちてきたんだろう…」
『解析』。
心の中でそう唱えると、半透明のパネルが僕の目の前に現れた。
「瀕死って書いてある…」
「どうする?家に連れて帰る?」
リヤは小鳥をそっと手のひらに乗せると、僕の方を振り返って意見を聞いてきた。
うん…
「リヤ、確かエマおばさんは他人を治せる編織者スキルを持ってるんだよね?小鳥を治してもらえないかな?」
「そうだよ!ちょうどここから私の家も近いし、エミも一緒に来て!」
——————
「ん?セレイア、どうしてそんなに早く帰ってきたの?エミールも来てるのね?あら、これは…」
成熟したお姉さんのように見えるエマおばさんは、一階で扉の開く音を聞くと、すぐに二階から下りてきた。
普段、エマおばさんは近くの診療所で働いていて、自分の編織者能力を使って、怪我をした編織者や普通の人たちを治療している。
けれど、今日はエマおばさんは仕事が休みだった。
本当に助かった…
「どうしてかわからないけど、この子、さっき空から落ちてきたの…お母さん、編織者能力で小鳥さんを助けてあげられる?」
「落ち着いて、セレイア。お母さんが今すぐ小鳥さんを治してあげるから」
「うん…!お願い、小鳥さん、すごく苦しそうなの…」
エマおばさんはセレイアの手から、痙攣を繰り返している小鳥を受け取ると、自分の手のひらにそっと乗せた。
そして、彼女は自分の編織者スキルを使い始めた。
エマおばさんの左脚にある編織者の紋章が、ほのかに優しい青い光を放ち始めた。すると、いくつもの包帯が彼女の腕に沿うように浮かび上がり、そのまま小鳥を優しくゆっくりと包み込んでいき、やがてその全身を完全に覆った。
「エマおばさん、これ、本当に大丈夫なの?」
小鳥、息ができなくなったりしないのかな?
「心配しないで。息ができなくなるようなことはないわ。ほら、見て」
包帯がふっとほどけると、小鳥はようやく我に返ったかのように、エマおばさんの手のひらの上で起き上がり、ぶるぶると身を震わせてから、自分の命の恩人を見上げた。
「さあ、あなたたちで逃がしてあげなさい」
「お母さん、しばらく小鳥さんを家で飼っちゃだめ…?」
リヤは可哀想なくらいしょんぼりした顔でエマおばさんを見上げ、小鳥を飼うことを許してほしいとお願いした。
「だめよ、セレイア。鳥たちにとって、自由はとても大切なものなの。あの子たちはね、狭い鉄の鳥かごに縛られて生きるものじゃないのよ。どこまでも広がる空こそが、本当にあの子たちの帰る場所なの」
そう言って、彼女はリヤの小さな頭をそっと撫で、優しく微笑んだ。
「セレイアだって、誰かに捕まえられて、鉄の鳥かごに閉じ込められるのは嫌でしょう?」
「うん…わかった…」
リヤは小さい頃から、いろいろな小さなペットが大好きだった。
けれど今回は、わがままを言って小鳥をペットとして飼いたいと駄々をこねるのではなく、素直に言うことを聞くことにした。
そんなリヤの聞き分けの良さを見て、エマおばさんも満足そうな表情を浮かべた。
「飛んでいって、小鳥さん。もう落ちてきちゃだめだよ!バイバイ〜」
リヤは柵の門の前まで歩いていくと、小鳥を乗せた両手をそっと持ち上げた。
小鳥は、ようやく自分が自由を取り戻したのだと理解したかのように羽を震わせ、そのまま真っ赤な空へ向かって飛び立っていった。
僕たちは、その小さな姿が遠くへ遠くへ飛んでいき、やがて完全に見えなくなるまで見送っていた。
空…か。
空も【仙境】と同じように果てしなく続いていて、どこか神秘的に見える。
その広大な果てには、いったい何が存在しているのか…
どうしても気になってしまう。
もしかしたら、空に浮かぶ雲みたいに、ふわふわの綿あめでいっぱいだったりするのかな?
「ねえ、リヤ」
「ん?」
「空ってあんなに広いけど、もし僕たちがその果てまで行けたら、そこには何があるんだろう?僕は、大きな綿あめの塊だと思う」
「あははは…!何それ?でも…私も気になるな。空の果てには、いったい何があるんだろうね」
「その答えは、あなたたちが大きくなってから探しに行くしかないわね。今はまず、【仙境】の中にいったい何があるのか、楽しみにしていましょう」
エマおばさんはもう一度、僕たち二人の小さな頭を優しく撫でた。僕たちも嬉しくなって、彼女の胸に飛び込み、ぎゅっと抱きしめた。
「そうだ。せっかくエミールも来たんだし、まずは中に入って座りましょうか。エミール、焼きたてのケーキを食べてみない?セレイアも、エミールと一緒にどう?」
エマおばさんの焼いたケーキ!?
「「食べたい!」」
ケーキまで食べられるなんて…
ありがとう、エマおばさん!
読んでくださり、ありがとうございます。
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僕自身の日本語力は、アニメのセリフを一部聞き取ったり、理解できたりする程度です。(マレーシア人です)
そのため、自力で正確に翻訳できるほどの日本語力はまだありません。現在はChatGPTの力を借りながら、日本語版を作成しています。
作業方法としては、中国語版の本文を段落ごとにChatGPTへ入力し、翻訳結果を確認しながら進めています。
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今の自分にできる一番良い形で、この作品を届けたいと思っています。




