第壱ノ罪
どーも瑛祐です。先週の続きですね。「-依頼-」を読んでいない方々はそちらの方を先にお願いします。では、お楽しみください!
-新たな登場人物-
神田 舞ーー長髪美人の才色兼備で有名な高校3年生。両親が厳しく、二人の重圧に悩む。
宮村 志保ーー舞の親友。成績はまずまず。元気で明るい女の子。舞を心配している。桜の依頼者
-前回のあらすじ-
高校3年生の志保は模試の結果が良くなくて沈んでいる親友、舞の様子が心配だった。そんな舞を助けて欲しいと願ったところ不審者もとい桜と名乗る青年が舞を助けてくれると言う。舞の事情を話すと桜が血相変えて飛び出した。
-仕事の始まり-
(これ、見せないといけないのかなぁ)
志保と別れた後、気だるそうに舞は帰宅した。
流石、一流弁護士の父親に大企業に勤める母親、二階建の良い家に住んでいる。
「ただいまー・・・って言っても誰もいないっか」
親の帰りはいつも8時以降。舞はいつも通り部屋に入って勉強を始めた。
「ただいまー。舞ー、帰ってるー?」
8時過ぎ、母が帰ってきた。
「うん。お母さん」
母は帰ってすぐご飯を作る。父の帰りが遅いのでいつもぱっと作って2人で食べるので、舞は2階の部屋から降りてきた。
2人でいただきますをして、母が切り出す。
「お父さん、今日も帰り遅いんだって。ところで今日、模試帰ってきたんでしょ?どーだったの?」
どこから情報を得ているのか、ママ友にでも聞いていたのだろうと思いつつ
「ちょっと・・・ケアレスミスで数学が・・・」
「満点逃したの?ケアレスミスも実力の内、それを言い訳してるってことは判定もAじゃなかったんだね、あんたね・・・」
強い口調で説教されながら食べるご飯は美味しくなかった。でも父親がいなくて少しほっとしていた。が、それも束の間、
「舞、聞いてる?お父さんと話したんだけど、携帯、没収ね」
終始黙って食べていた舞が口を開いた。
「待って!ゲームとかしてないよ!それだけは・・・」
「それでもダメ。取り敢えず次の模試返されるまで没収」
舞は絶望した。次の模試は夏休み中、返されるなんて早くても9月頃だ。
(志保と夏休みに遊べないのでは?毎晩の電話は?どうしよう、どうしよう、どうしよう・・・)
頭の中で思考がぐるぐる回り続けた。
食べ終え、部屋に戻っても何も変わらなかった。気を紛らわすため本を読み始めた。終始没頭し、絶望感は和らいだが読み終わるとまた暗い感情が入り混じった。
いつもの電話の時間になったが掛ける手段もないので早々に寝ることにした。
(明日事情を話し謝ろう。どうしようか相談しよう)
そう決意し電気を消して、ひとり用にしては少し大きめのベットに一人、涙を流しながら舞は寝入った。
この季節上、寝るときは窓を開け扇風機を回すのが一般的だ。例外なく舞もそうして寝ていたのだが、すっ・・・と舞のベットの横に立つ二つの塊と一つの人影。
「タベテ・・・チカラヲツケロ・・・」
人影がそう言うなり、塊は少しずつ大きくなり始めた。
「ワタシハ・・・コノコニ、アクムミサセテ、ゴチソウヲ、イタダクト・・・」
「んなこと、させるかよ」
歓喜な声を上げてた人影が窓の方から聞こえた声に振り向いた。そこには、月明かりに照らされた青い着物に桜色の髪の青年が腰の刀に手を掛け、窓で片膝立ちでいた。
「悪霊一人に子供二人、さっさと片付けるぞっ」
霊刀小雪の言葉とともに、桜は
「あたぼうよっ!!」
抜刀、からの一つの塊を斬った。が
「何っっ・・・」
斬った塊から灰色の煙が爆発した。
「前が見えんっ」
「さっさと空気を斬れ!これは負の感情だ。斬れば消せる!」
桜は理解し、煙を斬るとぱっ、と消えた。がすでに悪霊ともう一つの塊は窓の方で逃げようとしていた。
「逃すかよっっ!!」
桜は突き刺そうとするが、悪霊はもう一つの塊を投げつけた。
「二度はかかるかってーの!」
爆発して負の感情が出るのは予測していたので塊を斬り、すぐ出てきた煙も斬ったがもうそこに悪霊の姿は無かった。
「くっそ、逃げられたか」
「そこまで強力ではないが、そこそこ月日の経つ悪霊だな。いずれ斬るぞ」
「ったりめーだ。取り敢えずこの部屋の空気と彼女の感情を斬るか。せめて夢ではいい事あるといいな」
そう言い桜は空を斬り、寝ている舞の心ーー苦しい、辛い感情を斬って窓から跳び出した。
コンコンッと桜は窓をノックした。
どうやら桜の忠告通り志保は窓を閉めていたのだ。
ノックに気づきこちらを見た志保は窓越しでもはっきり分かる程の大きなため息を吐き、だるそうに窓を開け
「やっぱり夢じゃなかったんだね〜」
そう言いまたため息を吐いた。
「警察呼ぼうとしといて、夢な訳あるか」
「あっ、夢じゃないなら・・・舞はどうだったの?大丈夫だったの?」
志保は食い気味で桜に迫る。
「落ち着けぇって。彼女は大丈夫だ。悪霊一人逃したけど餌になる空気感は斬っといたからひとまず今日は大丈夫だ」
桜の話で志保はほっとした。
じゃあ、っと言うなり桜は勝手に志保の椅子に座り、背もたれを抱え込むようにしながら尋ねた。
「そっちの依頼やらその他諸々聞きたいたんだがいいか?」
「わかった」
そして志保は話し始めた。
「私と舞は小学生の頃からの付き合いなの。私がこっちに引っ越してきて同じクラスの舞と家が近かったから私から仲良くいったって感じかな。その時から舞は勉強凄かったよ。今でもずっと1番。まぁ舞の親御さんが厳しいからね。テスト期間とか部屋の扉に南京錠かけられたり、酷い時なんて100点取っても解く時間が遅いって怒られたことあるって言ってたから。 だから私が少しでも舞の支えになればなって思ってた」
「それ本当やべぇな」
「取り敢えずこれくらいでいい?まだあんたの事、信用してないから」
「まぁ・・・いっか。取り敢えず、舞ちゃんの両親の重圧から彼女を解放することと、あの逃した悪霊をぶっ殺すってんのが今回の仕事って訳だな。話を聞いている限り志保ちゃんと舞ちゃんは親友同士って感じだから、舞ちゃんについては志保ちゃんに頼むよ。彼女を支えてあげてくれ。何かあったら連絡してくれ・・・あー」
携帯を持ってない事に気づいた桜なのだが
「連絡はこいつの姿を思い浮かべて『桜』か『小雪』と強く念じるか叫べ。多分通じる」
なんて便利なっ、と思うよりも先に志保は聞く
「誰っ?もしかしてもう一人、見えない人でもいるの?」
「驚かせてすまない。私の名前は小雪、桜の腰に据えてある刀だよ。よろしく志保ちゃん」
「そーいえば小雪のこと紹介するの忘れてた」
テヘペロっと桜は舌を出すが、
そーいうのは先に言ってよ!ただでさえあんたの存在が信じられないのに、心臓止まるかと思ったじゃない!」
「志保ーー、本当に大丈夫?」
「大丈夫!お母さん、今から寝るからおやすみ〜」
志保がまた来た母親をドア越しに追い返してる最中、桜は志保に強く言われた事に少し傷ついていた。
「取り敢えず寝な。こっちはこっちで調査を始める。舞ちゃんの事よろしく・・・っあ、あと舞ちゃんは俺の事知らないからそーゆーことで」
桜はそう言い残して小雪とともに窓から出た。
(なんか凄いことになっちゃったな。まぁでも明日から頑張らなくちゃ!)
と志保は強く決意して寝ることにした。
お読みいただきありがとうございます!とうとう悪霊が出てきましたね。本作はアクションメインではないですが、今後書けるようになんとか頑張ります!Twitterの方でアカウント作っていますのでこちらのフォローをしていただけると嬉しいです!
ID @Eisuke_Rokujou
ではまた来週。
皆さんの人生に幸あれ!