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罪斬り桜  作者: 仂静瑛祐
2/16

-第壱ノ罪-

いよいよ本編の始まりです。ここでとやかく言うのもなんなんで、どうぞお楽しみください!


-前回のあらすじ-

この世界の生物は死ぬと魂が霊界に逝き、記憶を完全に消して現世の生物へ転生させる。この循環が世界の仕組みなのだが、人間は多様な感情を持ちすぎた結果、『罪の意識』から悪霊を生み出してしまう。閻魔は最近雇ったアルバイトの活躍を期待する。

 -依頼-

「この前の模試返すぞー。浅野ー、雨宮ー……」

 とある高校。3年生の教室。先月前にあった全国模試を今日、担任の声と共に返される。

神田(かんだ)ー」

 と呼ばれて出てきた長髪に制服姿、才色兼備な上美人で有名な神田舞(かんだまい)が模試を受け取った。

「さすがだな神田さん。この調子で頑張れよー」

 担任の言葉に、だが、舞は模試の結果を見るなり顔を曇らせた。

 全教科9割越え、全国順位が3桁内の彼女の顔を曇らせた原因は得意科目の数学が満点ではなく90点ぴったりだった事だ。

 席へ戻るなり彼女は目を伏せた。

宮村(みやむら)ー」

 と呼ばれて出てきた短髪に制服姿、いかにも元気って感じの可愛らしい女の子、宮村志保(みやむらしほ)が模試を受け取った。

「もうちょい頑張れよー」

 と言われて帰ってきた模試の結果は、全教科5,6割。得意科目の国語は8割取れ、苦手な数学が6割いった事でよしっと心の中でガッツポーズをしながら席に着いた。


 3年のいる校舎の向かい側の校舎の屋上。白い肌、ピンクのショートヘア、青色で腕と足の出た着物姿の女の子・・・と間違えてられてもおかしくない青年、桜は模試返却の様子を伺っていた。

「やっぱ高3のこの時期はピリピリするものか。嫌な空気が充満してやがる」

「仕方のない事だ。この教室は少し異常だが夏休みも近い。もう少し観察してみるか」

 彼の腰に据えられた霊刀(れいとう)小雪(こゆき)は彼に提案した。


「舞、一緒に帰ろー」

 志保は教室の前の席で顔をずっと伏せている舞に声をかけた。

「舞、そんなに悪かったの?」

「数学が・・・きゅ、90点・・・しか、取れなかった。だ、第1志望もB判定だし・・・親に怒られる・・・」

 少し泣きながら舞は答えた。彼女の親はとても厳しく完璧主義者なのだ。特に今回の模試は難しいものではないので満点でないことは彼女にとって痛い結果だった。

「舞の第1志望、日本トップ大学だもんね。中々Aは出ないよ。世界的にも有名らしいし。取り敢えず帰ろっ」

 ぐすんと頷き舞は立ち上がり、志保と帰った。

  帰り道の舞はいつもの明るい舞に戻っていた。

「ちゃんと見直しはしたのに何で間違えてなんだろ。夜ごはん抜きとかにならないといいんだけど。志保はどうだったの?」

 顎に手を当て考えながら舞は志保に聞いた。

「ふふふ、何と!数学が6割いったよ!数学が苦手な私にとって快挙だよっ!」

 仁王立ちに両拳を腰にあてドヤ顔をかました志保に

「それは私のおかげでは?」

 ニヤニヤとしながら舞は志保のドヤ顔を切り崩した。

 もーと言いながら志保も舞も笑いあった。

 笑いが治ると舞は唐突に寂しそうに話し始めた。

「ねぇ志保、私何の為に勉強してるか分からないの。何でこんなに辛いことをしてるのって思っちゃう。でも、志保がいるとなんでも頑張れる。だから夏休み、一緒に勉強したり何処か出かけよ!」

「もちろん!」

 微笑む舞だったが、志保は頷きながらも彼女の様子に心配した。

  舞と別れ、志保は帰宅した。その後も舞の事が気になった。いつもなら寝る前に電話で少し話すのだが、繋がらないことにベットの上で志保はさらに心配した。

 志保自身も舞の両親はよく知っている。とても優しい人達だが、舞の話を聞くと、テスト期間中は勉強のために部屋に南京錠をかけ数時間出してもらえないに加え、どれだけ勉強したか報告しなければならなかったようだ。舞はいつも怯えていた。あそこは牢屋だと。

 自分じゃ何もできないと志保は知っていた。電話や一緒に遊んで彼女の気を紛らわす事くらいしかできない事も知っていた。彼女の明るさは自分の暗さ、弱さを見せないためって事も、小学校から一緒にいた志保だからこそ知っていた。そして自分の手じゃ救えない事も。

(誰か・・・舞を・・・助けてあげてっっ!!)

 横になり、声もあげずだが、涙を流しながら心の中で志保は叫んだ。

「やぁそこのお嬢さん。助けてやろーか?」

 軽い口調の男の子の声が志保の耳に届いた。

  ◼︎◼︎◼︎

 数時間前、模試返却終了時、校舎屋上。通りかたった学校のある教室が異様な空気を不審に思い、観察を始めていた1つの人影があった。

「やっぱこのクラス変だよなー。なんか陰湿な空気がずっと漂ってる。高3にもなるとこんなもんか?」

 高3の辛さを知らない桜は純粋に聞いた。

「珍しい部類では無いが晴れずにずっと澱んでるのは心配だな。特にあの顔を伏せてる子。重い気配ダダ漏れだ」

「よし、ちょっとストーキングして観察するか」

「その言い方は良くないがそうするか」

 桜と小雪の方針が決まった。

「おっ、お帰りになるみたいだぞ」

 桜がターゲットを見つけた。

「まだ『負の感情』は濃いが悪霊が来る程ではないな。日もまだ昇ってるし。普通に後ろをついてっても気づかれないだろう」

 小雪は冷静に分析し桜に指示する。

『負の感情』とは人間の辛い、苦しい、死にたいなどのネガティブな感情の事だ。

 桜は長髪の顔を伏せていた子と、一緒に帰ってる短髪の子を見失わない様に彼女たちの3m程後ろを堂々とつけていた。

「にしても便利だなぁ〜この身体。霊界製だからって身体能力高いし、食事要らないし、普通の人には認識されにくいって、やりたい放題じゃねーか」

 この身体になって2ヶ月、改めて使いやすい事に桜は感心した。

 彼も2ヶ月前までは普通の人間として生きていたが、強い悪霊が原因で殺され、閻魔によって身体と仕事を与えられたのだ。

「気をつけろよ。一般人の目にはとまらんが、桜を必要とする者の目にはただの変態だからな。それとやましい事をしたら閻魔様に何されるかわからんぞ」

 普段は明るくうるさく閻魔の威厳が感じられない彼女だが、何を隠そう鬼を遣わし桜を鍛え上げたのは彼女だ。今の桜は普通の人間の身体でも超人と言われてもおかしくない程まで身体能力を上げていた。まぁ特訓場所が本物の地獄に本物の鬼だ。桜も閻魔に対して親しく接することは出来るが、一度彼女が怒るか鬼に命じる顔つきになれば桜どころか、鬼ですら緊張が走る。

 ぜってぇできねぇ。と桜は心の底から思った。

 2人が別れるのを見送った桜と小雪。

「こっからどーする?悪霊が来そうなのは長髪美人の方だからそっち行くか?」

 志保と舞の家は3軒ほどしか離れてないが両方観察してる訳にもいかないのでどっちに行くか相談が始まる。

「だが精神が不安定なときに桜みたいなオカルト野郎が突然来ればパニックを起こしかねない。依頼者となりそうな短髪を行くべきだろう」

 了解。と志保の前の家の屋根の上で観察を続ける事にした。

「桜、一応自分の仕事分かってるよな?」

 ストーキングの時のことを思い出し小雪は念のため確認する。

「んにゃ〜?さっきの事か。もちろん分かってるよ。俺の仕事は3つ。悪霊出さない為に自殺志願者の環境とかもろもろ全部救う。『罪の意識』を持つ、増幅させる者を斬る。んで・・・」

 そう続けた桜は殺気を込めて言い放つ。

「悪霊をぶっ殺す。俺を殺したあいつも」

 そう、桜が死んだ、もとい殺された理由は彼の実の姉が最強の悪霊『死霊(しりょう)』に取り憑かれ彼を刺殺したからである。とはいえ流石最強と言われるだけあって、姉は無自覚に犯行、外部犯に見せかける工作により警察は在りもしない犯人を追いかけ、当の悪霊は無意識に芽生えた『罪悪感』を食した。それにより、彼の姉は今も自分が実の弟を殺したとは思ってもいない。

 補足説明といこう。『罪の意識』というのは罪悪感や後悔などの心の中にずっと残る感情のことだ。悪霊が生まれる原因であり、悪霊にとって『負の感情』よりも美味しいものであり、溜まりすぎると負の感情と共に悪霊の子供となって生み出される。

「おっと。彼女は寝るみたいだ・・・って仕事みたいだぞ」

 ベットに座る志保を見ていた小雪がある変化に気づいた。それは彼女が白い気配を出していたからである。

 桜は大まかだが人の感情を気配ーーー胸にかかる(モヤ)の色によって識別できる。今のところ分かっている色は灰色が負の感情、黒色が罪の意識、そして白い気配を出す人間は『依頼者』と言い、桜を認識し、桜を必要とする者、つまり桜が斬るべきーーーー救うべき人を知っているという事である。

「了解。さぁ仕事を始めるか」

 にやりと笑い、ひとっ飛びで依頼者の部屋の空いている窓から侵入し泣いて横になっている短髪の女の子に桜は軽い口調で声をかけた。

「やぁそこのお嬢さん。助けてやろーか?」


 声をかけられ、恐る恐る声の方向へ顔を向けるとそこには変わった格好の美青年がにやっと笑って手を差し出していた。と言うよりも・・・

「ひやゃゃゃゃゃゃゃー、だっっ、誰っ?けけっ、警察呼びますよっ!」

「おうおう、待て待て待て、早まるなっ。俺の話を聞いてくれ」

「まぁ急に押し掛けたらこうなるな。完全に不審者だし不法侵入だ」

 布団を抱え怯えながら携帯に手を伸ばす志保に、慌てて止める桜、他人事の様な小雪。さらに悪いことに

「志保ー!何かあったの!?」

 ノックしながら志保の母親が扉越しに尋ねた。シッ〜っとジェスチャーと首の横振りで中に入れないよう促す桜を見て志保は

「ママー、大丈夫大丈夫!蜘蛛が出てきたと思ったら気のせいだった」

「そーぉ?なら良かったわ」

 桜抜きにしても目を充血させた姿を見られたくなかったので取り敢えず母親を引き返させた。

「あぶねぇ。落ち着いたみたいだな。話を聞いてくれるな?」

 ため息を一つ吐き、桜は問う。

「話の内容によっては警察、本当に呼びますからねっ!」

 桜は30分程、桜についてと仕事内容を説明した。

「志保ちゃんの依頼は一緒に帰ってた長髪の子、舞ちゃんについてだよな?」

「そうなんだけど…あなたの話が本当なら舞、今危ないかも。いつも電話掛けてくれるのに今日は掛かってこないの。それに今日、生きるの辛いって言ってたし」

 志保の話を聞いた桜は血相を変える。

「それやべぇ。しかも舞ちゃんの家、この家の3軒後ろだよな?この嫌な感じ・・・もしかっ!舞ちゃんは絶対助ける!あと電気付けといて窓閉めろ!悪霊が入りにくいからな」

 嫌な気配を感じ取った桜は急いで窓を飛び出した。


お読み頂きありがとうございます!続きはまだ来週の金曜日です。

折角なので少しばかり自己紹介を。

仂静瑛祐と申します。妄想癖でして実はこの作品も日々の妄想で創り出した物語です。この人毎日が楽しそうですね(笑)

「小説家になろう」初心者ですので皆さん先輩方にはこれからお世話になります。

Twitterの方でもアカウントを作っていますのでそちらの方もよろしくお願いします!

→ID @Eisuke_Rokujou

ではこれからも投稿を続けますのでどうぞよろしくお願いします!

皆さんの人生に幸あれ!

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