そんなのありか25
昨日は雑誌に載った出鱈目な記事のせいで大騒ぎってヤツだったがよぉぅ…厨房は蚊帳の外ってねぇい。
いや…関わりたかった訳じゃなく…っか、そんな暇は無ぇっ!
唯でさえ人手が足りず、っか…俺だけが特に忙殺されてっ状態でよぉぅ、余計なことに首を突っ込めるかぁぁっ!
ってもよぉうぃ、俺は一応は此処のオーナー扱いっうヤツでねぇぃ、状況だけは把握しておく必要はある訳さね。
昨日は業務終了をヘロヘロ~ォンになりつつ迎えた後…事務室へと呼び出され状況説明ってなぁっ。
まぁ…記事に対するクレーム対応に忙殺されて遅れた業務のため、事務スタッフとヘルプで来ている本社スタッフ達は業務中だったがねぇぃ。
そして事務室にて蔵さんから受けた報告によると…クレールは未だに続いているのだとか。
また、こちらから雑誌社へとクレームを入れているが、状況は芳しくないらしい。
場合によっては裁判も辞さないって大林様から警告されて焦っているらいしのだが…どうなることやら。
そして、今日。
朝のミーティングにて雑誌社より謝罪の言葉が、定休日である明日の水曜日に雑誌編集長が謝罪に訪れることと決まったらしい。
ただ…記事に対しての取り下げなどの言質は取れてないらしいのだが…それって、意味あんのけぇい?
ま、明日、大林様、俺、師匠によぉぅい、指定弁護士の先生も立会いとして来て貰い会うことになぁ。
って…折角の休みがぁぁぁっ…
休みなしって決定してよぉうぃ、鬱な気分で調理ってなぁ。
でもねぇいっ…仕事に忙殺されてぇってぇとぉっ、そんなことを言っている暇など無ぇ訳でぇ…ふぃっ、今日も精一杯、働きやしたぁっ、ってかぁっ!
そして迎えた対談の日。
ま、一日経っただけだがよぉぅい、そんでも件の騒ぎを引き起こしてくれやがった張本人と直接会うてぇんだからよぉうぃ、文句の1つでも言ってやらにゃなんめぇいよぉうぃ。
何時もより早く目が覚めた当日の朝は、早々に身支度を始める。
歯を磨き髭をあたると顔を冷水にて洗い清める。
って、そん後にて風呂でシャワーってなぁっ。
身を清め、冷蔵庫より作り置きの食材を取り出す。
日野さんが下拵えしてくれている食材にて朝食の準備を整えてから、ゆるりと食す。
朝からクラシックを軽くバックミュージックにってな。
ドリップした珈琲の芳醇たる放香が珈琲メーカーより漂い完成を告げる音が。
朝は珈琲、夜は紅茶って決めている。
っか…晩は日野さんが用意してくれているからねぇい。
食事中は緑茶や番茶もだが、ビールや日本酒、ワインなんてぇのも添えられる。
それを頂いた後の寛ぎの一時にブランデー入りの紅茶で〆ってなぁっ。
それとは違い朝から酒てぇ訳にはねぇぃ。
っても…休日の朝はアイリッシュ珈琲てぇ感じに洒落込んでんだがよぉうぃ、流石に今日は拙いやねぇいっ。
食事を終え、食後の後片付けをってな。
平日は日野さんが行なってくれるが、休日くれぇは自分で遣らぁなぁっ。
全て片付いてから、再度歯を磨くことに。
食べた後だからよぉうぃ、仕方ねぇわさ。
んっ?では、何故に起きた時に歯をってかぁ?そりゃぁ、よぉうぃ、寝起きで口ん中が気持ち悪ぃからに決まってんだろーよぉぅいっ。
準備万端って感じだが…流石に早過ぎるのでリビングにてテレビをってな。
点けたら丁度ニュースが流れて…って、よぉぅいっ!こらぁ…ウチん店んことじゃねぇけぇいっ!
ニュース?いや…トーク番組?どちらでも良いやねぇっ!
例の雑誌の件にて騒いでやがる。
くっ、この手の番組てぇのはぁよぉぅい、碌に調べもせずに無責任なことを広めやがんぜぇいっ!
俺達が示唆して流布したように告げてやがる。
それもそれで腹立たしいがよぉういっ、俺達の擁護をしてるヤツら…コイツらって、なに?
い、いや…掲示板に書き込まれた内容について擁護したり雑誌記事は正しいって…話になんねぇいんですけどねぇぃ。
っかさぁ…キモいっ!
流石に引いている者達も多数って…当たり前さね。
そんな番組を見ていると玄関のチャイムが押されたようだ。
俺は玄関へ向かい、訪問者を出迎えることに、な。
一応はモニターなんぞも存在するが…元来、此処は店ん中だかんよぉうぃ。
店の入口を開ける鍵を持ってなきゃ、此処ま来れねぇんでぇい。
ドアを開けると現れたのは師匠と蔵さんと…日野さん?あれぇ~?
「日野さん、今日は、お休みでしたよね?」そうだよね?
「ええ、そうですけど…お店が大変な時ですから、少しでもサポートできればと思いまして」
良い人やぁっ、ほんに、良い人やぁっ、そんなん思いましたぁっ。
「そうよねぇ、今、話題のスポットでリアルに情報を知れる機会なんて中々ないもの」って蔵さん。
いや…台無しですたい。
ま、そんな感じで皆を迎えていると、大林様が秘書と弁護士を伴い来られる。
皆を家へ招きいれ、日野さんが茶菓子をってな。
いや…日野さんが居てくれて助かるわぁ~
そして時刻となり現れる雑誌編集長。
対談は店のホールにて行なわれた。
日野さんが給仕をしてくれ、大林様と俺、師匠が席へと。
残りのメンバーは俺達の後ろへと立ち控える。
編集長は背の高いガッチリとした体格の男性だったが…少し着崩した着衣はチョイ悪オヤジ風って感じだったねぇい。
秘書?いや、記者だろうか?女性から折り菓子を受け取り俺達へと。
「この度は許可を頂かずに記事にし、騒ぎとなったようで謝罪に参りました」って頭を下げる。
だが…偽りの記事を載せたことに対する謝罪じゃないのか?
訝しく思い彼を見ると、ニヤリって、よぉうぃ。
こ、こいつ…
「その口振りからして、記事に対する謝罪ではないようですな。
取り下げるお積りはないと?」
そう大林様が静かに告げる。
すると編集長がキョトンとして…「取り下げる?なんでですかな?」って、ちと待てぇぇぇっ!
「これを見て頂ければ分かると思いますがね。
嘘は書いちゃいませんぜぇ」
そう言ってテーブルへと出されたのは医師の診断書である。
弁護士先生が取り上げ確認を…って、驚愕顔にって、いや、なによ、何ぃっ!
「本物です、なっ。
いや、それより…この状態から此処まで…いや、完全に健常者、ですなぁ。
私より遥かに健康な体でしょう」
そう告げると下がる先生。
いや、診断書から分かるモンなんだねぇぃ。
「ふっ、分かって頂けたようで、これは重畳。
いや、ねぇ。
最初はガセ情報にて世を騒がすカレーてぇモンを食ってから死ぬつもりだったんですが…食って行く間に体が楽になる訳でっさぁ。
慌てて病院に駆け込み医師に診断を受けるとだぁ、治る可能性がってね。
ただ…手術しても完治の確率は低いものでしてな。
これならカレーを食い続けて一縷の望みをっと考えやして。
ただ…医者も興味を持ちましてな、定期的に診断を受け診断書をってヤツですわ。
したらアータ、完治しちまうじゃねーですか。
医者も大騒ぎってぇヤツでしてねぇ、下手したら記事にする前に医者からリークされそうだったので慌てて記事にしたしだいでして」
そう説明してくれた訳だが…こ、これは…一体…
「それでですな、この不思議なカレーってぇヤツを検めて取材させて頂きたく、謝罪を込みにて推参致した次第でして」
そう告げ、深々と頭を下げる編集長。
さて、どうしよう…これ?




