#3 シスターと悪魔
「あなたの罪を告白してください」
シスター服を纏う私は、迷える子羊の懺悔を聞く。そして――
「俺、AIでレポート書いて提出したら、教授にバレて単位が……」
「それはドンマイですね。はい、次の方――」
さくっと捌く。
驚き顔の子羊は『ハイ! お次ィィ!!』と、ムキムキマッチョシスターに腕を掴まれ、ブースから連れ出された。
はぁ……。こんな調子で本当にいいのかな? 恨みを買わない?? ちなみに、私は聖職者じゃない。ただの女子大生だ。
今日は学祭。所属する研究室が今年もコンセプトカフェを開いている。ハロウィンが近いこともあって、男女ともにシスターに扮しての接客だ。
だけど、私だけこの懺悔ブースに軟禁中。ちなみに、カフェの入口にはこんな立て看板がある。
『塩対応シスターの懺悔室――1回500円』
赦せない。
私はテーブルの端に置いてあるタンブラーを手に取った。煽り飲んだ白湯が身に沁みる。こうなった理由は昨年のメイドカフェだ。私の接客が塩対応で面白いとウケてしまったのだ。
あれは、故意にした対応じゃ無くて……! ハプニングがあって、私も話に身が入らなかったんです。申し訳ないと思っています。だって、あんな事があったら誰でも上の空だよ!
同期から『今年も塩対応して!! やってくれたらお酒奢るから!!』……お酒。餌に釣られた自分が赦せない! 彼等は私の特性を理解して、箱に入れてくれたけど……地味に忍んで生きたい私は、朝から胃が痛かった。
同期のシスターがひょっこりと顔を出した。
「玲花。今日は次の人で懺悔ラストだからよろしくね♪」
私は小刻みに頷いて返事する。やっと終わる! 昨年、私を混乱に陥れたあの子と会わずに終れる!
だけど、最後の迷える子羊を見て……首からさげているロザリオを掲げた。
「やっと見つけた。お久しぶりです。悪魔扱いやめてくれませんか?」
原因がパワーアップしてやって来た。ファッション誌に載っていそうな、お洒落コーデで決めているけど……あどけなさが残る。彼はイスに座ると、満足げに私を見つめた。
「今年はシスターですか。お似合いですよ。じゃあ、懺悔させてください」
「は、はい。どうぞ……」
「僕は名前も知らないあなたを好きになりました。あなたを追ってこの大学にも入学するほどです。どうか、あなたと結ばれることをお許し下さい」
この子、めっちゃグイグイくる! 結ばれるって何? どこまでを視野に言ってるの!?
「去年、『子供は好きじゃない』ってフラれましたけど、僕も成人です。条件はクリアしました。で、答えは?」
『で、答えは?』じゃない。ああ神よ、私に良い返答を恵んでください。向こう五年間、大喜利で面白い事言えなくて構いません。
「式の規模と様式はあなたの希望通りに。新婚旅行は、そうですね――」
「お友達からお願いします!」
「……。ええ、よろしくお願いします。玲花さん♡」
ああ神よ、この悪魔笑いました。『計画通り』と顔に書いてあります。
どうか、私の地味で穏やかな学生生活をこの小悪魔からお守りください。




