エピローグ
ガーネットは、名前が消えていく貴族年鑑を見て呆然とした。
特に、次のターゲットと狙いを定めていたペリドットの名前が、完全に消えてしまっていることに絶望する。
『魅了』をもとめてスファレライトを攻略し、『財力』を求めてシトリンを攻略しようとしたが、本当に手に入れたかったのは、彼だった。
隕石によって地球に運ばれる唯一の宝石ペリドット。
それと同じ名前の彼は、太陽のように飛び切り明るく、周りを包み込む優しさのある少年だった。
しかし、長子と言うこともあり、早い段階からアレキサンドライトの妹ルビーと婚約を結んでいた。
何度か接触を図ろうとしてみたが、常にルビーの側を離れず、会話をする隙すらなかった。
あの時、多少無理をしても、純粋に愛を告白していたら、何か状況は変わっていただろうか?
いや、周りから見ても、ペリドットがルビーを心から愛しているのは公然の事実だった。
災いを寄せ付けないことで、兵士のお守りとされていたこともあるペリドット。
その性質を明確に写し取った彼の性格なら、きっと、どんなに乞い願っても、振り返ってもらえなかっただろう。
「「おめでとう!!」」
両親の祝福の声に、ガーネットは、ハッと意識を目の前のことに戻した。
隣に立つスファレライトは、死んだ魚のような目をしていた。
周りにいるのは、NPCばかり。
今日は、彼女とスファレライトの結婚式だった。
既に、ゲームの攻略対象や悪役令嬢は、全員国外に出てしまっている。
それは、スファレライトとアレキサンドライトが自我を芽生えさせて行動したことで、他のキャラクターにも様々な波及効果が起こり、それぞれが『意志』を持ってしまったためだった。
そこに、不確定要素だったガーネットという転生者まで加わってしまったことで、バグを起こした世界は、未だに同じ部分をループしている。
国外に出ない限り、その呪縛から解き放たれることはないのだが、ゲームの主人公であるガーネットは、NPCから監視され、王都から出ることすら出来ない。
エンドレスで続く学生生活は、もう、何年経ったか分からなかった。
『ゲームを終わらせれば、自由になれる?』
前世の記憶があるガーネットは、ハッピーエンド後のエンドロールを思い出した。
印象的なシーンが走馬灯のように流れ、
『これは、彼らの新しい未来のスタートである』
という、次回作を予感させる文字が流れたのだ。
一旦この話を終わらせれば、新しい未来が始まる。
そう思い至ったガーネットは、嫌がるスファレライトを無理矢理引き込み、結婚式を行うことにしたのだ。
まだ、学生の二人だけに、小さな教会で家族だけに囲まれた慎ましい式だが、着ている衣装は記憶を頼りに忠実に再現した。
神父に促され、したくもない誓いのキスをすると、今まで周りで拍手をしていた人々が、一瞬で止まった。
蝋人形のように生命感のない彼らは、濁った目をしている。
「どうしたのよ!何で動かないの!」
ゲームが終了したからこそ、動く必要性がなくなったNPC達。
そして、一人、また一人と倒れていく。
「スファレ様!」
救いを求めて隣に立つ彼を見たが、全てに興味を失っている彼は、何の反応も示さず天井近くに設置されたステンドグラスを見あげている。
「アレキサンドラ…」
そこに描かれていた女神の姿が、かつての婚約者に似ていたようだ。
涙を流して後悔する彼にとって、このラストは幸福とは言い難い。
この時、やっとガーネットは、己の失態に気づいた。
あのエンドロールは、ハッピーエンドの時にのみ流れるもの。
暗転していく世界の中で、ステンドグラスに浮かび出たのは、
『BAD END』
の文字だった。
完
宝石にまつわる石言葉
アレキサンドライト:秘めた想い。周りに流されず、自分の中の信念を貫く。
スファレライト:幻惑、嘘つき、裏切り者。強い光を放ち、相手を引きつける。
ガーネット:変わらぬ愛情、束縛。強い思いを持つ人の願いを叶える。
シリトン:成功。富と成功。商売繁盛する。
エメラルド:幸福、幸運、夫婦愛。愛の成就。
ルビー:情熱、勇気、勝利。燃えるような愛と生命力。
ペリドット:幸福、和合、夫婦愛。災いを寄せ付けないお守り。
以前構想をねって、放置してしまっていたお話を短編として仕上げてみました。
ヤッ◯ーマン方式に餌(お気に入り登録や感想、いいね等)を投げていただけると、勝手にやる気スイッチを押すので、よろしくお願いいたします。
明日からは、アラマーのざまぁ連載版全8話を投稿します。楽しんでいただけたら嬉しいです。




