第一話 魔女狩り
ある牢屋の中‥‥‥二人の少女がいた。いや、正確には一人と一匹が。
「リリィ、あなたは逃げなさい。あなたは殺されないかもしれないけど、一生封印されてしまうわ」
「いやよ!ライラ、ライラも‥‥!!」
どうしてこんな事になったのだろう。ただ幸せに、幸せに生きていただけなのに‥‥‥。
あの日、ライラが悪い魔女だと言われなければ‥‥‥!
「そうね、出来れば私も逃げたかったのだけれどね‥‥‥」
「今なら間に合うわ!一緒に逃げるの‥‥!!」
「ふふふ‥‥‥『ライラ・ルトリスの名より、使い魔——リリィとの契約を解除する』」
「ライ———」
「さぁ、あなたはこれで自由なの。早く行きなさい」
「———ッ」
リリィは猫の姿になり、牢にある小さい窓から出ていった。
「リリィ‥‥‥あなたは人間を憎むでしょう。それでも、幸せになりなさい」
ガシャン‥‥
鉄格子の扉が開かれた。どうやら騎士団長らしい。
「ライラ・ルトリス。お前を今から処刑する‥‥‥おい、使い魔はどうした」
「さあね、とっくのとうに私を見捨てて出ていったわ」
「————ッ、おい、お前たち‥‥探しに行け!!!」
「「「はっ」」」
ドタドタと兵たちは走って行った。
「見つかりました!!!」
「「はやっ」」
あまりの速さにライラと騎士団長は驚いてしまった。
「そこら辺の茂みに頭から突っ込んでおりました」
「ライラぁ‥‥‥」
リリィは助けを求めるようにライラを見た。
「リリィ‥‥‥ふふっ、ふふふっ、頭から茂みに‥‥おかしいわね、あなたはいつどんな時も変わらないのね。おかしいわ、これから殺されるというのに」
「ふんっ、おい、この白猫に特等席を用意しろ」
「はっ」
特等席‥‥‥?え、嫌!嫌だ!!ライラの死を見るなんて、私には‥‥‥
連れていかれながらもバタバタともがいた。決して逃げれることもなかった。そしてライラが助けてくれることもなかった。
■
そこからは覚えてない。ただ一つ、忘れられないことは‥‥‥あの日、火あぶりされたライラの死体だけだった。
「封印しろ!この忌々しい魔女の使い魔を!!」
「あの魔女は大量に人を殺したのだ!!そんな魔女の使い魔を生かしておくな!!」
‥‥‥うるさい、ライラは忌々しくなんてない。意味もなく人を殺したわけじゃない。それは皆理解してるはずなのに。どうして‥‥‥あぁ‥‥そうだ。ライラが殺された後、暴れたんだ。自暴自棄になって。
私は今、結界の中に入れられてる。何をしても無駄だな。もう、何をする気力もないが。
『今 裁かれし悪魔よ 美しき地に 永に眠れ』
ある魔法使いが唱えたとたん、大きな影が、リリィの体を包み込んだ。ドッと眠気が押し寄せてくる。
寝てはいけない、眠ったら私の負け。絶対に‥‥‥もう一度、ライラに会うまで。
■
それから、何年、何十年、いや、何百年か経ったかもしれない。眠気も、ずっと耐えていたら慣れてきてしまった。我ながらあっぱれである。
それにしても暇だ。何もできないなんて辛すぎる。真っ黒で視界も見えないような空間の中をゴロゴロと転げまわる。と、何か壁に少しだけ亀裂が入ってるのを見つけた。
「あれ‥‥‥ここだけ何か、ヒビが‥‥‥」
リリィが指を近づけたとたん———‥‥
パキ、パキパキパキ、パリンッ
壁が割れてしまった。
「う、わぁ‥‥‥!!久しぶりの外ね‥‥!!」
とりあえず外に出てみたリリィは歓声を上げた。
ここは建物の中?ここで封印されていたのか。よくみたらずいぶん長く手入れもされてないな。忘れられてたのか?
封印も‥‥‥老朽化してたのかしら。
「‥‥‥ライラ‥‥会いたいわ‥‥‥」
ずっと忘れられない。ずっとずぅっと感じ続けていた。この気持ちは何なのだろう。モヤモヤして気持ち悪い。
どうしてライラは死ななければならなかったの!
「怒り‥‥?」
そうだ、これは怒りだ。ライラを殺した人間を許せない。そのためには‥‥‥
「魔法‥‥学ぶわよ。そして‥‥罰を与えなきゃ、人間どもに」
でも、この白猫の体じゃ少し不便ね‥‥。人間の姿にならなくちゃ。
『物よ 生き物よ あるべき姿に形を変えよ』
私が使える魔法を唱える。
そして私の体は人間の姿に————ならなかった。
「あれ?おかしいわね、そういえば私、魔力が全然ない‥‥‥」
これじゃ呪文を覚えても、魔法が使えない!
あいつらは魔力までも封印したの!?
‥‥‥あぁ、神よ。いつもあなたは、私の味方をしてくれない。こんなにも妬ましいことがあるのだろうか。ちっぽけなこの体に、魔力もない、ただ喋る使い魔‥‥。
これじゃ、私のいる意味が何ひとつないじゃない‥‥!
「もういいわ、私に神がいないなら、私を裁く者もいないもの」
そうつぶやいた白い毛の猫は、静かに建物の外に出た。
■
ある少女が、草むらを散歩していた。
「ふん、ふふ~ん♪今日は何かと出会える予感ね!」
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