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0話「夕日と指きり」

 皆様こんにちは、こんばんは、おはようございます! 335です

 この度は【世界暦構想シリーズ 物怪町怪異BUSTER'S】をご閲覧いただき、誠にありがとうございます


 本作はC107(コミックマーケット107)に書き下ろした新刊でしたが一冊も旅立たず、近々のイベントでも一切売れていない作品となります。なのでココでの掲載が、実質初公開です

 同人誌版の方との違いは、初稿版であるところとイラストの有無。

 ストーリー内容などは同じですのでご安心ください。


 世界観は相変わらず他作品(特に今回は【ヒーローが~】)と繋がっていますので、そちらを読んでいるとより楽しめる内容となっております


 それでは、ココでのひと時が少しでも有意義でありますように……

 良くも悪くも、人は全てを憶えている事はできない。

 記憶は時が経つほど朧気(おぼろげ)となり、都合よく改変され、最後には思い出すことも出来なくなってしまう。


 ――それでも、交わした約束と風景は『(よすが)』となって心身に深く刻み込まれる。


 例え本人が全てを忘れてしまったとしても、いつの日か縁に導かれ、大切な約束を果たすだろう。

 

 かならず……。


—————————————————————


 ――眩しい。

 右手を顔の前にかざして、強烈な光を遮る。

 指の隙間。うっすら開けた瞳に差し込む、柑橘類の様なだいだい色。

 とても綺麗な夕日だ。


「――今日も綺麗だねぇ」

 不意に声がして、左手がギュッと握られる。


 そこでようやく気がついた。

 俺は誰かと並んで、夕日を眺めていた。


「……うん」

 しぼり出すように呟く。胸が苦しくて、それ以上言葉が出ない。

 せめてもとつないだ手に力を込めると、相手も強く握り返してくれた。

 胸の苦しみは一層大きくなったが、俺は嬉しくもあり、少し気恥ずかしかった。


「今日で、お別れなんだよね……」

 顔を夕日からはなす。


 俺と手を繋いでいたのは、黒髪の女の子だった。

 白いキャミソールが夕日で染まっていて、左胸についた黄色い月のアップリケと同化していた。

 伏し目がちで顔には前髪がかかり、表情はよく見えない。


 しかし、声に含まれる震えが、彼女が泣いているのを俺に教えてくれた。


「な、泣くなよ……」

「だって……、だってぇ……」


 俺だって泣きたい。

 でも、男が人前で泣くのはカッコ悪い。

 何よりも、彼女には泣いている姿を見せたくなかった。


「また、戻ってくるから」

「……いつ?」

「それはえぇと……、いつか……」

 我ながら、いい加減な事を言っていると思う。でもこうでも言わないと、彼女は泣きやんでくれない事は解っていた。

 彼女は鼻を啜るばかりで黙ってしまい、俺も何も言えなくなってしまった。


「――約束」

 しばしの沈黙の後、そう呟いた彼女は俺から手を離す。

 そして服の裾を引っ張り、顔をグシグシと拭って振り向いた。


「約束、しようよ……」

 彼女は依然俯いたまま、小指だけを伸ばした右手を俺に突きつけた。


「いつかまた、ここで会うって……。会いに来てくれるって……」

「‥うん、約束する!」

『約束』の意味を理解した俺は、自分の小指を彼女の指に絡めた


『指きりげんまん♪』

 二人で声を揃えて歌う。


『嘘ついたらハリセンボンの~ます♪』

 夕日はもう直ぐ、完全に沈む。


「じゃぁ、さよなら、だ……」

「『さよなら』じゃなくて『またね』って言ってよ」

「あっ、そっか! ……またな!」

「うん、またね!」


『指きった‼』

 夕日が完全に沈む直前、彼女は漸く顔をあげてくれた。


 ――そして全てが『闇』に飲み込まれた。


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