第9話 『新たな刺客④』
「礼ちゃん!ずっと応援してるからねッ!」
「うん。ありがとう。これからもよろしくね」
「は、はぃぃぃ~♥♥」
「礼ちゃん!わ、私、可織って言うんですが、一度だけ名前で呼んで貰っても···?」
「おっけー。今日はどうもありがと、可織ちゃん」
「あうっ、ありがとうございます♥♥♥」
「れ、礼様。ずっと応援してます!!」
「あれ?君、この前のイベントで最前列に座ってなかった?」
「え、覚えてくれてるんですか!?か、感激ぃ~♥♥」
握手会が始まり、もう何時間が経過したことだろう。
私は幾百のファン達を見送った。
正直、疲れた。
というか、ずっと笑顔でいないといけないため、表情筋がつりそう。
これ、ある種の拷問だよ。
なんて、考えながらテンプレな返しをファン達にしてゆく。
ちょっと申し訳ないが、そうまでしないとこっちの身が持たない。
ファンの手を握って「応援ありがと」的なコメントを少しずつ変えながら話して行く。
楽しみといったらファンの服装を眺めること。
唯一服装だけが多種多様だから見てて飽きない。
たまに、私の脳裏に焼き付いてほしいのか奇抜な奴がいる。
それもまた面白い。
というか、そういう奇抜な服装をしてくる人に限って年増だからね。
なんかすごい。
「礼さんに会えて感激です!」
「ありがと。これからもよろしくね」
「は、はい!」
今の服装、私も持ってた気が。
まぁ合わせてくるのは良くあるからね。
さて、次の娘の服装は···っと、凄いな。
見事なまでの白黒のゴスロリ衣装だ。
ちゃんと頭に小さな帽子が乗ってる辺りポイント高い。
しかも本体は目を疑うようなロリ顔美少女。
こりゃあ、私のファンより芸能界入りした方が良さそうだ。
「···礼さん」
「ん?」
その少女は言葉を一言言ったっきり何も言わない。
どうしちゃったのかな?
緊張で声がでなくなっちゃった?
このまま黙って終わらせるのは可哀想なので、私は身を乗り出して自分から少女の手を触りにいった。
その瞬間、
微かだが少女の口がニヤリと笑った。
そして、その少女は私の腕をそのまま引っ張り、無理矢理に私の唇を奪った。
「んっ!!!?!?!?」
私はその接吻から逃れようと力を振り絞るが、その少女はびくともしない。
何て力!?!?
私の振りほどきに動じない少女は、そのまま私の口に舌を侵入させる。
「んっあッ!!?!??!?」
「ちゅっ♥···ちゅぱっ···♥」
端から見ればイヤらしいディープキス。
だが違う。
相手は私に何かを飲ませに来てるッ!?
引き剥がせない以上、必死にその液体を飲まないように努めるが、舌の技量は相手の方が圧倒的に上手だった。
私は成す統べもなくその液体を体に流された。
「ちゅッ···♥···ぷはぁ。···ふふっ♥」
「はぁ···はぁ···はぁ···。お前は、···一体···?」
その時、その少女に幾数の銃口が睨みを効かせた。
「手を挙げろッ!」
「···」
少女は黙って手を挙げる。
その顔には恐怖など無かった。
寧ろ、何かの勝利を確信した顔。
「···話は裏で聞かせてもらう。連れてけ」
「ふふっ。私が何かしましたか?」
「は?何を惚けている」
「別に惚けてなんかいませんよ?私は握手会を全うしただけです」
「何処にキスをする握手会があるかッ!」
「あっ、ごめんなさい。これは私達の間だけの意味でしたね。ねっ、礼?」
その女は私を馴れ馴れしく呼んでくる。
こんなやつ見たこともないし会ったこともない。ましてや、キスなどしたこともない。
でも、何故だろう。
なぜか首が横に触れない。
意識することなく首を縦に私は振っていた。
「礼···。嘘だろ···?」
カンナの震えた声が耳に響く。
ごめん。カンナ。
「ふふっ。わかったでしょ?」
「···くッ!!···兎も角、連れてけ。握手会の規定違反だ」
カンナは悲しい表情をして私を見る。
ただ私はじっとするしかなかった。
そして、何が起こったのか整理し終えたファン達で会場は大混乱に陥った。
礼を汚すなと叫ぶものもいれば、私にもさせろとせがむものも。
警備員が必至に列を押さえようとするがファンたちの怒りには及ばない。
そんな会場を見つめながら私は小さな声で呟いた。
「···ミドリ。聞こえてるか。調べてほしいものがある」
『うぃーっす。何ですかィ?』
どうも。サッカー見てて授業を寝過ごした水城です。
最近、夏というのに雨が多かったり、涼しい日が多々ありますね。
西日本の方は雨で涼しいを通り越して大変なことになっていますが...。
大丈夫ですか?
さて、そんな涼しい日もある中、この小説はアツアツの展開に進みたいと思います。
ったく。夏というのにこれ以上暑くしてどうすんだってね。
それではまた次話で。