十六話
あれから一週間が経った朝。
ルゥナはスクランブルエッグを口に入れた瞬間何かを思い出したようで、ジェルの方を向いた。
ジェルはルゥナが言いたいことが何か気付いたようで知らないふりをして朝食を食べている。
「ジェル。」と、ルゥナが呼んだ。
ジェルは無視をする。
「ジェル。今日は先週休んだ剣術の日だよ。」
「剣術!?」アケミは牛乳で口の周りに髭を作りながら叫ぶ。
「アケミちゃん。口についてるよ。」オジ様が優しく言ってくれる。
「あーいきたくねぇ!!なんで剣術なんてやんなきゃなんねーんだよ!!」
「わかんないけど僕は剣術好き。」
「最低限のマナーだよ。女の人よりも弱かったら悲しいだろ?」
「そして、大切な人を守るためだろうな。」ずっと押し黙っていたカイルがアケミをチラと見ながら言う。が、アケミはジンと話していた。
「ジェル、今日も勝負。」
「え!?ヤダよ!!絶対負けるじゃねぇか!!ったく、父さんが来なかったら剣術なんてサボってやるのに…」
ジェルは小声で言ったつもりだろうがしっかり聞こえていたようでジンはワザとらしく咳ばらいをする。
ジェルはばつが悪そうにうつむく。
「まあ、そんな考えすぐになくなるさ、今日はアケミちゃんが行きたいというからアケミちゃんを見学させることにした。二人ともいつも以上に頑張れ。」
「え!?アケミ来るの?嬉しい。」
「は!?アケミ来るのかよ!?ふざけんなよ…」
「………!!!アケミ、行くのか…!!」それぞれが思い思いの反応をしている。
「えー…言いにくいんだが、父さんは今日はどうしても外せない仕事があって付き添えない。
代わりにカイルが保護者としていくから問題ないが、本当にすまない。こんな大事な時に仕事を優先させる父親ですまない…」
「大丈夫ですよオジ様。カイルが同伴と言うことでテンションが下がっても私っていう可愛い子がいますから。」自信満々に胸を張るアケミ。
そんなアケミを華麗にスルーするオジ様たち。
***********「ここが剣術道場…普通の道場だ…まるで挌技場のようだとアケミは思った…」
「何を言ってるんだアケミ。」一週間話してくれなかったカイルの第一声はツッコミだった。
カイルはここの元生徒らしく師範とさっきまで親しげに話していた。
ルゥナとジェルが木刀を素振りをしているのを後ろから私たちは見ている。
ジェルもなんだかんだ言いながら真面目にやっている。
大分素振りをやって、
そろそろ解散かな?と思った時、師範が「これから試合を始めるぞ」と告げた。
師範は適当に決めたらしいトーナメント表を出した。ジェルの憂鬱そうな顔に磨きがかかる。
あ、きっと練習は好きだけど試合が苦手なんだ…そう思ったアケミは暖かい目でジェルを見ていた。
が、ジェルはサクサクと勝ち進み、道場中12~15歳の中で一番強いことが分かった。
16~20歳はもちろんルゥナであった。私の中で一つ疑問が生まれた。
なんでそんなに剣術を嫌がるのだろうか?と、理由はすぐに分かった。
次の師範の言葉だ。
「では、いつものように一位同士で戦いなさい。始め!!」
師範は年齢も体格も違う一位同士を戦わせるのが好きなのだ。
ジェルの性格上負けたくないのだろう。でも、勝てない。
それで行きたくなくなるのだ。「カイル。これは、ちょっとひどいんじゃない?」カイルは「何がだ?」という顔をする。
「だってこれ、弱い者いじめじゃ…」
「?何を言ってるんだアケミ。良く見ろ。」ジェルはルゥナに身軽にとびかかり、押す。ルゥナも負けじと押し返す。力は互角のようだ。
「師範は力の差があまりない時にしか戦わすことはしない。まあ、アイツらがこの道場へ入ってから始まったんだがな…今ではこの道場の名物『兄弟剣華』だ。」
「そうだったんだ。私、勘違いしちゃった。」しゃべっている間に勝負は決まっていた。倒れているジェルがみえ、勝ったのはルゥナだと理解した。
「あーもう!!ルゥナ強すぎ!!今日こそ勝てると思ったのに!!だから剣術は嫌なんだよ!!」
「今日こそ負けると思った…」
「毎回言ってるじゃんそれ!!」二人は顔を合わせて笑い、ルゥナは倒れているジェルに手を伸ばし、ジェルはその手を掴んだ。
二人の美しい兄弟愛を見れてアケミの心はほっこりとしていた。
「素晴らしい試合だった。おや?時間が余ってしまった…そうだ!!ルゥナ、ここに元生徒であるカイル(・・・)・スペンサ(・・・・)―という者が居るんだが、特別試合として戦わせてもらったらどうだ?」
「「!!!???」」
ルゥナとカイルは同時に師範を見た。




