十五話
アケミの部屋に着き、少しためらいながらも部屋へ入る。
まだ家具があまりないので少し寂しいが、テーブルに花瓶を飾るなど(いつのまに)質素だが可愛らしい部屋になっていた。
ベッドにアケミを下ろそうとすると、アケミは背中を掴んでいたようでバランスを崩して共にベッドへ倒れこみ、押し倒す形になったカイル。
ベッドからはアケミの、いや、女の香りがし、目の前にいるアケミの格好が今日は際どいことと相まって心臓がドクドクと鳴り、頭がボーッとしてくる。
押し倒されているアケミはいつの間にか寝てしまったようで、胸を隆起させながら安らかな寝息を立てていた。
気が付いた時にはもうアケミの薄桃色の唇を奪っていた。
ほろ酔いで理性の半分を失っている今のカイルには正常な判断ができず、キスの雨を降らし続ける。時には唇をなめとり、吸った。
ある程度満足したのか我に返り、カイルは自分のしたことに青ざめた。
俺は何をしてしまった?俺は何をした?寝ている無抵抗な女に…アケミに何かするなど男として…
自己嫌悪に陥りながらも押し倒している状況から動こうとしないカイル。
カイルは、自分の心に気付いたのだ。
私はこの女が気になる。まだ出会って数日しか経っていないが核心があった。自分自身の昼間の行動も言動もおかしかったし、何よりも今の行動だ。心よりも先に身体が動くとはこのことだと思い知らされてしまった。
カイルはアケミの髪に軽くキスをして「おやすみ」と言うと名残惜しそうに部屋から出た。
すると、部屋の前にはジェルが仁王立ちで立っており、それを見たカイルは固まってしまった。
「ずいぶん長いことアケミの部屋にいたね。」
「…まあな。」
無視をしてリビングへ戻ろうとするカイルに、ある言葉を投げかけるジェル。
「お前さ、アケミのこと好きだろ。」カイルの身体がピクリと動く。
「…何のことだ?」ジェルは失笑しながら言葉をつなげる。
「お前の行動見てれば好きなのはモロばれだわ。」無言のカイルにジェルはまだ言葉を続ける。
「…アケミを幸せにしてくれるなら、応援してやらないこともないぞ…」
アケミを幸せに…か…そんなこと…
「当たり前だ。」
当たり前に決まっている。
私自身女と付き合ったことがない。
故にどうすれば女が喜ぶかなども分からないが、
アケミの為なら何でも努力するつもりだ。
「アケミの為なら何でもする。」ジェルに向かって強く言う。
「そうかよ…なら、助言くらいはたまにはしてやらないこともない…じゃあな。」
ジェルは言いたいことを言い終えたのかカイルの横を通って何処かへ行ってしまった。
一人残されたカイルは、これからどうアケミと接するか考えていた。
リビングではフォッカとジン、ルゥナが談笑をして、アケミは部屋で安らかに寝ていた。ジェルは一人外へ出て空を見上げ「俺もアケミのこと好きだったのかな…」と呟いた。
皆思い思いのパーティーの日を過ごした。
アケミは次の日にはケロッとしており、普段通りの元気なアケミであった。
あの日以来アケミへの見方が変わり、態度が変わったカイルはどう接していいか分からずアケミを避けるようにしていた。
ジェルも同様にアケミは『カイルの好きな人』という認識になっており、変に意識するようになっていた。
変わらずに接してくれたのは事情を何も知らない三人だった。
アケミは変に避ける二人に気付いていたがあえて普通に振る舞った。




