十四話
部屋へ戻り、鏡で確認しながらドレスを着てみる。
胸元が大胆に開いた真っ黒なドレス。
裾は長く、引きずらないといけなかった。
それでも美しいドレスで私は何度も鏡の前で見た。ド
レスの裾をつまみ、優雅に階段を下りる。
階段下にいたルゥナとジェルがエスコートをしてくれる。
晩餐の席はお誕生日席、食べ物も豪華であった。
七面鳥のようなもの、ヨモギのような香りのするパン、色鮮やかなサラダ、野菜スープ、ワンホールケーキ。
どれも舌鼓を打ちながら食べた。アケミは疑問に思ったことがあったのでみんなに聞いてみた。
「ねえ、どうしてカイルに案内をさせたの?ずっと挙動不審でバレバレだったんだけど。オジ様の方が良かったでしょ絶対。」
「わ、私は…」カイルが何か言いかけたのをかぶせるようにジェル言う。
「カイルがどうしても行きたいって言ったんだよ。コイツがこんなに大根だとはみんな思わなかったけどね。どうして一緒に行きたかったのは知らないけどね。」
「なっ…!!ジェル!!誤解を生むような言い方はやめろ!!ただ、私は飾りつけなどはできず、料理はフォッカが一番うまくて父さんは仕事があったからで…!!」
「うん。ものすごい言い訳臭したけどわかった。わかった。」適当に流すアケミ。
飲み物を飲もうとコップに手を伸ばすともう何も入っていなかった。
飲み物を注ごうと手を伸ばすとルゥナがサッとコップを取り、何かを注いでくれた。
「わあ、気が利くー。ありがとう。」アケミが笑うと
「えへへ。」とルゥナも笑う。
ルゥナの淹れてくれた透明だが少し濁りのある液体を飲み干す。
「ルゥナ、お前何を注いだんだ?」ジェルはもしやと思い聞いてみた。
「ん?白ワイン、だよ。」何もないようにルゥナは答える。
その答えにルゥナ以外の一同はバッとアケミを見る。
案の定アケミは見たことのないようなとろんとした潤んだ目になっており、
黒の大人っぽいドレスと合わさって、それを見た一同(ルゥナとカイルを除く)はゴクリとつばを飲み込んだ。
そんな男性陣の心を知ってか知らずかエヘッと無邪気に笑うアケミ。
「くっそ、なんだよ…可愛いな…」とジェルは顔をそむけて呟く。
「うーん。これは完全に酔ってるな…。カイル、部屋まで連れて行って寝かせてやってくれ。」
「わかった。」カイルはそう短く言うとアケミの手を引いて椅子から立たせた。
するとアケミは突然カイルの手を振り払い、よろよろとジンのところまで行き、
頬にキスをした。
「!?!?!?なっ…」顔を真っ赤にするジン。
そして、一瞬のうちにルゥナのところへ移動し、また頬にキスをしていた。
カイルはそんなアケミをすぐさま担ぎ、速足で部屋へ向かった。
「カイルー?」間の抜けたようなアケミの声に「どうした。」と答える。
するとアケミは「大好きー」と答えた。
突然の言葉に担いでいるアケミを落としそうになりながらも
さらに速足で部屋へ向かった。




