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国主様と猫  作者: 灰波
国主様と猫と真剣勝負
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2.犬の矜持

アヌートにいるようになって分かったことがある。

サウルエーレの側にいつもいる兵が邪魔だ。


朝の修行の後はすることがない。

だからって一人で城をうろついていたら変な奴に質問攻めにされる。

しかたないから、あいつの勉強も見てやることにした。

なのに、護衛騎士とかいう奴があいつに話しかけようとするのを度々邪魔してくる。

サウルエーレも俺を無視して、きしさんきしさんってうれしそうに話しかけてるし。

ただの兵のくせに生意気だ。

おまけにこの間、サウルエーレとけんかしたときは偉そうに説教してきた。

最初に殴ってきたのはサウルエーレの方なのに。


むしゃくしゃしていたら、兵の奴らに勝負をしたらどうかと提案された。

気のいい奴らだけど、親切で言ってるわけじゃない。

サウルエーレと俺のどっちが勝つか賭けようとしてるんだろうな。

ケイサンの兵もここの連中と同じで、すぐにけんかしたり賭けたりするからよく分かる。

陽気で楽しい奴らなんだけどさ。

でも良い考えだったから、結局思惑どおりにサウルエーレと勝負することになった。

勝負の方法を考えるのがあの兵だってことが気に入らないけどな。

ずるをするなって言っておいたから大丈夫だろう。


勝負の方法は思った通り、試験と戦闘だった。

サウルエーレが公平にって言ってたし、そうするしかないだろうなって思っていた。

でも、その中身が大問題だったって事には解き始めてから気付いた。

計算問題はすごく簡単だし、他の問題はすごく難しい。

ローブクの町の名前とかメヘムの名産とか何の役に立つんだよ。

ヘレアってどこだよ。

アヌート国主の出身地は分かったけどさ。

もっと戦いに関係ある問題にしてほしかった。

これってサウルエーレに良い点を取らせようとしてるんじゃないのか。

いや、あいつもこんなの知らないだろうな。


そう思ったのに、採点が終わってみたらサウルエーレの方が高かった。

ほんのちょっとだけなんだけどな。

一つ二つ計算を間違わなければ、俺の方が勝ってたんだ。

あんなのまぐれだ。いんぼうだ。

問題を作った兵にも、もちろん抗議した。

でも、国の状況や地形を知っておくのは戦いにも関係あるって言われた。

兵をうんようするにも、その地で戦うにも、こういう情報は必要なんだって。

そう言われればそうかもしれない。

ただの兵のくせにまともなこと言うんだな。

うっかり関心した。

「お前、見直したぞ。名前は何というんだ」

そう聞いてやったら、ノイだと返ってきた。

じいやに似た名前なんだな。


納得はしたけど、試験が負けなのは変わらない。

俺にはもう後は残されてなかった。

次の戦闘で勝っても引き分け、負けたら完全敗北だ。

サウルエーレに負けるなんて俺のきょうじが許さない。

そこの所を兵も分かってるのか、戦闘では一対一じゃなかった。

試験でもハンデがあったんだから、戦闘でもこれくらいないとな。

サウルエーレは一対一と多対多の違いも分かってないはずだ。

軍事演習でもサウルエーレはアヌート国主ばかり見ていたし。

俺のありがたい説明を聞く気も全くなかったし。


兵の能力は互角だし、あとの心配は兵のやる気だ。

そう考えてたら、あの兵が勝者にはアヌートの国主の特別訓練がつくと言い出した。

それを早く言えよ!

試験では何もなかったのに、戦闘でこんなごほうびがつくとは思わなかった。

今、俺達は一つになった。

絶対に勝って、特別訓練の権利を勝ち取ってやる!

ついでに誰が一番強いとか、そういう事なら聞いてもいいと言われたのも助かった。

俺は兵の奴らの事をまだあんまり知らないしな。


全員から話を聞いて、作戦を考える。

どうせすぐに連携するのは無理だろうから、命令はおおざっぱの方がいいだろう。

二人を相手の足止め役、一人を攻撃役、一人を俺の護衛にする事にした。

俺がやられちゃ、途中で命令の追加もできないしな。

俺だって今までケイサンで遊んでたわけじゃないって事を思い知らせてやる。


最後に俺はみんなに頭を下げた。

「絶対にあいつに勝ちたいんだ。力を貸してくれ」

頭も腕も足りない俺が率いるなんて、本当はできないことだ。

でも、兵の奴らは気にするなとか一緒にやろうとか明るい言葉をかけてくれた。

なんか、俺もこいつらの仲間入りをしたみたいだ。


始まってみると、相手の動きがおかしかった。

妙にぎこちないし、無理に一対一に持ち込もうとして失敗してる。

あいつはどんな命令をしたんだ。

めちゃくちゃじゃないか。

その分、俺はやりやすいけどな。

すぐに兵に命令を飛ばして隙を突かせる。


このまま勝てそうだと思ったら、サウルエーレが俺に突撃してきやがった。

鬼気せまってて怖い。

ちょっと腰が引けていたら、護衛役にした兵が俺を守るように前に出た。

そうだった、こいつがいたんだった。

サウルエーレでも大人には勝てないだろう。


そう思ってたのに、サウルエーレはなかなか負けない。

それどころか、動揺してこっちの兵の動きが悪くなってきている。

サウルエーレが強いのか、あの兵がサボりすぎて鈍ってるのかどっちだよ。

多分両方なんだろうけど。

あいつ、強くなりすぎじゃないのか。

結局、サウルエーレはふらふらになりながらも兵に勝ってしまった。

ここがアヌートじゃなくて、もっと涼しい所だったらな。

鎧が着られるからこっちに分があったのに。

でも、すかさず俺が隙を突いてサウルエーレをやっつけたからお互い一人脱落だな。

これは集団戦なんだからな。

動揺しかけた奴らにげきを飛ばしてしまえば、残りを片付けるのは簡単だった。


みんなの力を借りたとはいえ、サウルエーレに戦いで勝ったのは初めてだ。

勝負としては引き分けだがどうでもいい。

勝ちほこってやろうと思ってサウルエーレを見たら、泣きそうな顔だった。

な、なんだよ、一回負けたくらいで。

引き分けだって言ってやっても、あいつはずっと元気がなかった。

ちぇ、もっと悔しがると思ってたのに。

俺が予想してたのと違うや。

特別訓練は全員参加できるって聞いても全然喜ばないしさ。

なんか変な感じだ。

勝ったのに全然うれしくない。


サウルエーレはしばらく動かなかった。

ようやく動き出したと思ったら、俺にどんな事をしたのって聞いてきた。

俺に聞いてくるなんて思わなかった。

俺はサウルエーレに負けても助言なんて聞いてみようなんて考えなかった。

毎回こうやってこいつに教えを請えば、俺ももっと強くなれてたのかな。

なかなか負けた相手に聞けないもんな。

こいつは思ったよりもすごい奴なのかもしれない。

そう思ったから、ちゃんとこいつにも分かりやすく教えてやった。

代わりに俺にも今度から戦うこつを教えろよって言った。

そしたら、サウルエーレはうんって即答した。

やっぱりこいつは笑ってる方がいいな。


師匠の特別訓練はまじで死ぬかと思った。

なんでサウルエーレがごきげんでこなせるのか、さっぱり分からない。

そもそも基本的な体力が足りてないんじゃないってサウルエーレに言われた。

くそ、絶対いつかぎゃふんと言わせてやる。

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