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232話

 


「そんなーそれじゃあもうこの美味しいハムは食べられなくなっちゃうじゃん」


 この世の終わりみたいな子をしてシロロが言う。


「来週もまた「タスク」の皆さんに護衛を頼んで一緒に冒険をするつもりだから、その時にパルマオークが出てくるかもしれないからそれまで待っててよ」


「そんなこと言ったって来週だってパルマオークは出てこないかもしれないんでしょ?」


「それはそうだと思うけど」


「そしたらこの美味しいハムはもうずっとずっと食べられないじゃん!」


「確かにすごく美味しかったけどそんなに必死にならなくても」


「必死になるよ、だってこれだけ美味しいサンドウィッチなんて初めて食べたんだもん」


 確かに美味しかったけど、とモルンは首をひねる。


「気持ちは大いにわかるぜ」


 そういったのはAランク冒険者グループの冒険者ヒョウゴが腕組みしながら言った。


「そうだよね?」


「わかる。俺もいろいろなところでサンドウィッチもハムも食ってきたけど今日食ったのは味が全然違うんだな。コクがあって雑味が全く無くて、薫り高い。俺にとっても人生最高のハムだったね。あれを食っちまったからには他のハムなんか食えたもんじゃねぇ」


「ほら聞いた!?もう私たちは他のハムじゃ満足できない体になっちゃってるんだよ。どう責任取ってくれるの?」


「責任?!」


「いや、責任と言われましても」


 ロクサンは頭を掻きながら困ったような顔をした。


「そんなこと言ったってしょうがないじゃん。今日は日が暮れないうちに街まで戻るっていうことで「タスク」の皆さんには予定を組んでもらってるわけだから」


「そんなこと言ったってー」


 シロロはまだ納得できていないようだが、こればっかりはしょうがないと思う。いつどこでどんな魔物が出てくるのかを完全に予測することは誰にもできないことだ。


「とにかく今日はもう引き返そう。安全が一番だよ」


「うーーーーーーー」


 シロロが悲し気な鳴き声をあげた。


「それならいっちょ口笛で魔物でも読んでみたらどうだい?」


 ヒョウゴが言った。


「口笛?」


「知らないのか?世の中にはいろいろな特殊スキルがあるけどその中には魔物を呼び寄せるだけのスキルっていうのもあるんだぞ」


「そんなスキルがあるんですか?」


「あんまりヒョウゴの言うことを真に受けない方がいい」


「タスク」のリーダー的存在であるサイギが言った。


「ちょっとなんだよその言い方、まるで俺が嘘ついてるみたいじゃん」


 ヒョウゴがムッとして言う。


「実際そんなスキルがあるかどうかなんか見たことがある奴はいないんだ」


「そうなんですか?」


「酒場での鉄板ネタなんだよ。世の中で一番いらないスキルってことでよく出てくる話だ。初めて自分の特殊スキルを使った貴族様が大量の魔物を呼び寄せちまって踏みつぶされて死ぬってな。本当にあった事なのかどうかなんて誰も確認なんかしちゃいない話だ」


「なるほど、そういうことですか」


「俺は本当にあったんだと思うぜ。そうじゃなきゃそんなに話が広がるわけねぇだろ。世の中には人間なんか山ほどいるんだ、きっとそういう面白スキルもきっとあるはずさ」


 そう言われてみればその通りなきもする。


「それめっちゃいい!」


 シロロの目がキラキラしていた。


「なにがいいの?」


「だってそのスキルがあればすっごい便利じゃない。だって探し回らなくても魔物が向こうから来てくれるんだよ」


「それは確かにそうだけど」


「タスク」の手際が素晴らしかったのもあるけど、これまでの道中では魔物と戦っている時間よりも歩いている時間のほうがはるかに長かった。


「けどそのスキルを使った貴族様は魔物に踏みつぶされたんだよ?」


「そんなの踏まれないように気を付ければいいじゃん。来るっていうのが最初から分かってたらそんなことにはならないよ」


「そうだね」


「ね!」


「けどそんなスキル持ってないでしょ?」


 シロロのスキルはギャンブルのできる機械を作り出す?スキルだ。その機会は予想をはるかに超えるくらいの大人気で、いまでは炊き出しの列の何倍も長い列がギャンブル台にできている。


「口笛でしょ。やってみればいいんだよ、魔物よ集まれー!っていう気持ちを込めて吹けばきっと来てくれるよ」


「犬じゃないんだから」


「そんなのやってみなきゃわからないよ」


「いいねいいね、できるならやってみてくれ。手応えのある魔物なんか一匹も出てこないから俺だって退屈してたところなんだよ。目の前が魔物で真っ黒になるくらい大量に呼んでくれていいぞ。思いっきりやってくれ」


 ヒョウゴが手を叩いて盛り上げる。


「おいヒョウゴあまり囃し立てるな」


「そんなこと言ったってサイギさんだって退屈してたんでしょ。普通よりいい報酬だからって引き受けたけど俺たち何にも役に立ってないじゃん。Dランクの冒険者でもできるくらいの仕事しかしてないよ」


「そう言う依頼なんだからこれでいいんだよ。けどまあ確かに、これだけの仕事であんなに金を貰っていいのかとモヤモヤはしていたが………」


 今回「タスク」に仕事を頼むにあたっては相場の倍くらいの報酬を支払うことを約束している。これはサブレさんの教えで、人間は報酬によってやる気が違ってくるから、ということだ。


「わかった!みんながそう思ってるならやってみるね、えい!」


 一度腕を大きく振ったと思ったら、シロロは大きく飛び上がった。




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