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投稿した後に、色々書き足しています。申し訳ありませんでした。
お義母様達とのお茶会から二週間――。二人共健康を取り戻しつつあるので、現在詰め込み作業中である。
今日はチェンバロの練習日なので教師を招いている。生徒はお義母様とロイドと私。
教師は公爵家が支援している音楽家のひとり、子爵家三男のアラン様。
チェンバロはピアノに似ているけれど、黒鍵と白鍵が逆になっていて、音は弦楽器に近いと思う。この世界にはまだピアノはなみたい。
三歳くらいから練習していたので、今では難なく弾けるけれど、今日はお義母様とロイドのお手本として練習曲を弾いている。
芸術への造詣が深いのも貴族の嗜みなので、勉強会を開いているんだけど、弾けなくても何も問題はない。教養のひとつだね。
私が弾き終わると、アラン様が大袈裟に褒める。
「コーデリア嬢の演奏は実に素晴らしい!直ぐにでも宮廷楽士になれますよ!」
リップサービス過剰なんだよね、この人。次に演奏するのは、お義母様だ。子供の頃に練習していた事があるらしく、流暢に弾いている。
「素晴らしい!美しいだけでなく、音楽の才能まで素晴らしいとは!きっと美の女神のご加護を授かっておりますね!」
「あの……困ります、その……」
アラン様がすかさず跪いて、お義母様の手の甲にキスしている……。油断も隙もないな?
健康を取り戻したお義母様は、確かに美しくなった。まだ痩せすぎではあるものの、顔色も良いし、髪も艶々だ。儚げな雰囲気の美女に仕上がっている。
元々の素材も良いし、公爵家の美容部侍女部隊が日々磨き上げているのだから当然である。
アラン様の距離が近すぎるのが気になるところだけど、お義母様は些か自己評価が低い。なので成功体験を元にした、褒めて伸ばす作戦を実行中なのである。あからさますぎるくらいに褒めてあげるのに適任なのだ、アラン様。
お義母様の手をにぎにぎしながら、うっとり見つめているアラン様の前に、苦虫を噛み潰したような顔をしたロイドが割って入ってきた。
「アラン先生、俺にも指導してくださるんですよね?」
ロイドも剣術や馬術などの訓練を始めており、スポンジが水を吸収するように才能を伸ばしている。まだ痩せたちみっこだけど、将来が楽しみな美少年まっしぐらである。
「あー……小公子殿?えぇ勿論ですよ……」
ロイドがチェンバロの前に座る。ゆったりとしたテンポの曲を弾き始めた。
(これって――!)
ゆったりとしたテンポから徐々に速いパッセージに移り、華やかなトリルで光を振り撒いているような音。
強弱のつけにくいチェンバロで、ここまでの演奏ができるとは。ポテンシャルの塊か!
「すごいわ!ロイド様!きらきら星変奏曲をここまで弾きこなせるなんて!」
演奏が終わると同時に拍手しながら、ロイドに駆け寄った。
ロイドはニヤリとしながら私を見た。
「えぇ、モーツァルトは偉大ですね?」
若干笑顔がひきつるものの、前世の事は人前で気軽に話せるものでもない。少し前に詳しく話すと言ったような気もする。
後でロイドと話し合おう……。
「……ほう、きらきら星変奏曲という曲なのですね。初めて耳にしましたが、とても良い曲ですな」
アランが感心しきり?に褒める。
アランは確か二十五、六歳くらいだったはずだが、まだ結婚していない。貴族としては遅い方だが、継げる爵位もない事から、音楽で生計を立てるために結婚はしないつもりらしい。
しかし私は知っている。あちこちに恋人がいることを……。
全員未亡人だから、後腐れもないのかもしれないけど。
「フム、コーデリアお嬢様も小公子様も、もはや私の指導は必要ないですな。という事で、次回の練習からはユリア様にだけ指導いたしましょう――」
「――その女はまだ未亡人ではないぞ、バベッジ卿」
いつの間にかお父様がサロンの入り口に立っていた。どこかに出掛けるのか後ろにセバスが控えている。
全員驚いていたが、一番肝を冷やしたのがアラン様だろう。
慌てて貴族の礼を取り、挨拶する。
「……これは、公爵閣下。お声かけくださるとは望外の喜び、ご健勝で何よりでございます。奥様におかれましては音楽への造詣が深く、私はその手助けができれば、と愚考したまででございます」
「貴殿の好みより大分年若いであろう、その女は。長生きしたいのなら上手く立ち回る事だ」
それだけ言うと、お父様は踵を返してしまった。え?もしかしてお父様、アラン様を牽制しに来たの?
醜聞は困るとかそんなとこかもしれないけど、あの何事においても無関心なお父様が?
いや、私もちょっと釘を刺しておこうとは思っていたけど、へぇ。




