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眠り姫は熊将軍のキスを所望する  作者: とらじ。
第1章
9/20

だれか説明を

昨日寝落ちしてました泣



「ーで。


10年目にして何故か突然目覚めた姫様を、閣下は眠らせて陛下を呼びに行ったと。そういうわけですね。」

「手加減はした。」

ランドに全面的に非がある言い方をされたゲオルグは、ムスっと額を寄せる。

「そう言う問題ではないでしょーがっ?!」

皇女様の部屋の隣室でいい大人2人は待機していたが、その内容は叱られている子供とその母親そのものある。

「姫様が遂にお目覚めになられたのに、また眠らすとは…!

眠り続けられてしまう可能性もあったでしょうに?!そうしたらどう責任をとるおつもりでしたか、閣下は!」

普段は上司に文句を言えない憐れな部下は、ここぞとばかりに畳み掛ける。

「大丈夫だ。責任ならとるつもりだった…」

ゲオルグには、眠り続ける続ける彼女を一生守っていく覚悟があった。眠っていてもよいと、誉れ高き皇女がそれでも自分の手に入ればとねじれた感情すら抱くほどには。

だが、

「目覚めた今はー」

と、彼が続けようとした言葉は扉を叩く音に遮られた。





ーコンコン。

「失礼いたします、閣下。

陛下がエステル皇女殿下の寝室にてお待ちでございます。」

















エステル皇女の部屋をノックし扉を開けると、そこはゲオルグが想像していたより静かであった。ナターシャの目は赤くなってはいたが嬉し泣きの山は過ぎたようで、今はベッド脇に腰をおろし娘を抱き寄せている。エステルもその母の胸に頭を任せていた。アルベルトとエルタナも感無量と言った表情を浮かべている。ゲオルグは自分にかけられた呪いの話をきいたエステルが騒ぎ立てるかと身構えていたが、彼女がある意味この中で一番落ち着いているように見えた。

部屋に入ってから、ゲオルグの瞳はそんなエステルの姿を捉えた。寝ている時もその神秘的と言っても過言ではない美しさを備えていることはわかっていたが、こうして起き上がり微笑んでいる彼女はまるで聖画の乙女のようだ。


「あ…貴方は。」

ゲオルグに気づいたエステルは、直ぐに顔を上げてゲオルグの瞳を射抜く。

「将軍、御苦労であったな。」

エルアルドは何か言いたげな目をしていたが、エステルの手前か何も告げず、ただ御苦労とゲオルグの肩を叩いた。

「あの…お父様。」

「なんだい?エステル?」

エルアルドの娘と妻にだけ向ける甘い声を聞いて、ゲオルグは少し目眩を覚える。

「この方が…」

と、エステルはベッドに入ったままではあるが、ゲオルグの方を見ながらエルアルドに問うた。

「ああ、先ほど話したゲオルグ将軍だ。」

「ゲ…ゲオルグ様。」

皇女の赤い唇が自分の名前を告げるのをゲオルグは聞き逃しはしなかった。皇帝の言う先程の話が、自分にとって不益でないことを願いながら。


初めて名前を発したエステルはなぜか頰を染め、ゲオルグから目をそらした。それはまるでゲオルグの勘違いでなければ照れて恥ずかしい、と言った様子に見えた。熊将軍の顔を見て照れるなど、とゲオルグ本人が心配になってしまう。

「ゲ、ゲオルグ様っ!」

今度ははっきりと、エステルはゲオルグに向かい名前をよんだ。今思えばゲオルグが護衛の任に就いたのはエステルが眠りについたあとなので、2人はきちんと挨拶を交わしたことはなかった。だがもちろん、ゲオルグに進んで自分を紹介しつつアピールする器量さなど持ち合わせているはずもない。

だから、この後彼女が続けた言葉に更に戸惑うことになる。


「貴方が私の真実の愛のお相手とお聞きしたのですが…

その…ゲオルグ様は…私のことを…?」

ー皇帝は何を彼女にどう話したのだ?

ゲオルグの思考は一瞬止まった。

「きゃっ!私ったら…」

そんなゲオルグには気付かず、エステルは手で顔を隠してれている。勇気を出してゲオルグに事の真相を問うたが、自分で想いを聞くなど普段であれば無理な行動だ。発した本人は恥ずかしげにピンク色のオーラをだしていたが、

「…皇帝陛下、少しよろしいですか?」

逆に相手は、その質問には答えず黒いオーラを発しながらこの国の最高権力者の首根っこを掴み上げた。エステルは一緒驚いた顔をしたが、その後少し寂しげな表情を浮かべ父親が連れ去られるのをただ見ていた。





ゲオルグはそのままエステルの前から退き、皇帝を先ほど待機させられていた部屋に放り込む。

ーそれも容赦なく。

「いきなりひどいなあ、将軍。」

なんとか起き上がった皇帝はいたた、と大袈裟に首をさすっている。


「私は、キスなどしていない。」

ゲオルグはそんなエルアルドに、なんの前触れもなく事実のみを告げた。

「ーえ?それって…」

「だから、私は皇女にキスなどしていない。

あいにく真実の愛とやらも知らぬ。」

冷めた声に、冷めた瞳。エルアルドは初めはふざけているのかと思ったが、ゲオルグの目を見て彼が嘘をつく男ではないことを思い出した。






だが、それでは何故呪いが解けたのか説明がつかない。「真実の」それが唯一の呪いを解く手掛かりであり、それが「愛のキス」に繋がる言葉だと信じていた。


もし、まだ完全に呪いが解けていなかったとしたら。

また、エステルが眠りについたら。









10年前の不安がまたエルアルドの心を占め始めた。



徐々にエステルの出番が増える予定(´∀`=)

亀更新ではありますが、またのぞいていただけたら嬉しいです。

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