6話 ランクが上がった。
今回、文字数少ないです、申し訳ありません。
「あんたがランクを上げて欲しいとか言う子だな?」
そう声を掛けられたのは出直してから2週間後、冒険者ギルドの応接室でのことだった。
檜の香りのする椅子に座り、テーブルを挟んで今しがた話しかけてきた人と対面している。
これまた檜っぽい木で出来た小綺麗なテーブルには安そうな茶菓子と湯飲みに入ったほうじ茶がある。
話しかけてきたのは、私よりも小柄で髭もじゃなお爺さんである。
いわゆるドワーフのような、というかドワーフのこのお爺さんは、ギルドマスターのバザックさんその人なのだった。
その顔にはあまり覇気が無く、端的に言うならめんどくさそうである。
対して、この2週間ずっとゲイズさんに冒険者のイロハを教えてもらった私は今、きっと自信に満ちた顔をしているんじゃないかと思う。
「はい、葵と言います。今日はランクアップの交渉に来ました」
「···突然だけどな、アオイ君。ランクアップするために必要なもんって何だと思う?」
突然何? それ位分かるっちゅーの!
「闘うための地力や技術、諦めない精神力や忍耐力ですかね?」
そう答えるとバザックさんが笑みを浮かべた。
子供も泣き止みそうな笑顔である。
「おっ、それは分かってるんだな。たまにいるもんでな、力至上主義の脳筋野郎が」
今の質問も私を見極めるためだったらしい。
怖っ。
「それが分かってるなら、診てやる価値はあるか。
ガッカリさせないでくれよ、少年?」
そういって立ち上がったバザックさんはどこかに向かうようだったので付いていく。
というかさっきから聞いてれば、こいつも私を男だと思ってやがる···。
*
そうしてやって来たのは、それなりに広い訓練場らしき所だった。
地面は当然砂利である。
訓練場である割に人影は見当たらない。
「今日は闘う可能性も考えて、貸し切ることにしたんだ。
ところで、武器の貸し出しは必要か? 見たところ持って無さそうだが」
「大丈夫ですよ、今から出しますから」
そう言ってデッキからカードを2枚取り出し、宙に放り投げる。
しかし、投げたカードがヒラヒラと落ちてくることはなく、巨大な剣となって地に突き立った。
私が投げたのは<紅竜剣 アポストル>というカードで、俗に大剣や両手剣と呼ばれるものだ。
その刀身は私1人と同じくらいのサイズがあり、よく斬れそうな紅い刃が煌めいている。
さてもう一枚から出てきたものは何なのかというと、それは風である。
まぁ、意思のある風だが。
風であるので、その姿は見えない。
RPGなんかだとエレメントと呼ばれたりするそれの上位種<エレメントアークウインド>からテレパシーが送られてくる。
『マスター、ご用でしょうか?』
「ウィン、今からあの人と闘うから剣を支えてくれる?」
『YES』
返事を聞いてから剣を持ち上げると、片手剣くらいの重量しか感じずに持ち上げられた。
お察しの通り、<エレメントアークウインド>略してウィンに風を纏わせてもらうことで支えてもらっているのである。
ギルドマスターは、ギルド職員から貸し出し用の武骨な片手直剣を手渡されている。
「そんじゃ、始めようか」
そう聞こえた瞬間、大剣を前に突きだしながら走り出した。
そのスピードは、常人の5倍といったところだろうか。
「っ! 速いじゃねぇか、おい。想像以上だな」
そう言いながら、大剣を上に弾き返してくる。
と同時にウィンが風で大剣の勢いを殺す。
掌を反して大剣を大上段に降りおろすが、これもまた横に跳んで避けられてしまう。
「まだまだぁ!」
地面に突き刺さった大剣の勢いに合わせて跳び上がり、急激に軽くなったそれを引き抜きながら横凪ぎに振り回す。
それをバザックさんが剣で受け止めたのを見た瞬間に私は叫ぶ。
「ギド! やっちゃえ!」
私が背負っていたリュックからギドが顔を出し、その口をガバッと開く。
そしてそこから巨大な火球が吐き出される。
『ヤバい! 魔力を込めすぎた!』
えっ嘘でしょ!
「なんだとっ!? ちっ、食らってたまるかぁっ!」
そういってバザックさんは火球を叩き斬った。
バザックさんの後ろで着弾したそれらが、爆音とともに火柱を上げる。
咄嗟にウィンが私の前にウインドバリアを張ったことで、爆風から逃れることには成功する。
数分して土煙が晴れる。
「バザックさん! 大丈夫ですか!」
ウィンが張ったバリアにバザックさんは含まれていない。
なので心配していたのだが、バザックさんはケロッとした顔で土煙から出てきた。
「手加減ってもんを知らんのか?」
「すいません···、火力調整に失敗したみたいです」
「恐ろしい召喚獣も居たものだな。というか、こんな戦いかたをする召喚術師は初めて見たぞ」
ギルドマスターはあまり驚いていない様子だった。
私が使っている召喚獣は特殊な子達の筈なのだが。
ギルドマスターだけあって、過去に覚えでもあるのだろうか?
「取り敢えず戦闘力は申し分ないな。精神の方も、それだけ召喚獣と心を通わせられて連携が取れるなら良いだろう」
「それじゃあ···?」
「おう、Dランク冒険者に認めてやるよ」
「やったぁ! ···、Dですか?」
「ん? 不満か?」
いや、『2ランクも同時に上がったら僻まれたりするでしょ
』と思ったが、しかしそれ以外のデメリットが思い付かずにOKを出す。
「分かりました。ただ、僻まれたくないのでこの事は内密にしていただけるとありがたいんですけど···」
「いいぞ。とはいってもすぐバレそうな気もするがな」
冒険者の情報網って凄そうだもんなぁ、仕方ないか。
と、「ギルドマスター、仕事の時間です」
そういってバザックさんの秘書らしき人が入ってきた。
「めんどくせぇなぁ、アオイ君の昇進の話があるんだが「ギルドマスター、仕事の時間です」
「···分かったよ。行きますよ! アオイ君、後は受付嬢にやらせるからそっちに言ってくれ。そんじゃあな」
応接室で会ったときの顔に戻ってそう言い残し、バザックさんは出ていってしまった。
一人で訓練場に佇む私···。
えぇ····。
*
それから受付まで戻ってきた私は、ドヤ顔でこの前と同じ受付嬢に話しかける。
「すいませ~ん、ランクが上がったので申請に来たんですけど~?」
せめてものお返しの嫌みトーンである。
周りに聞かれたくないので小声だが。
「あっ、えっと、話はお聞きしてましゅっ!」
あ、噛んだ。
顔色を青から赤に目まぐるしく変えながら続きを話す。
「ランクアップするので、ギルドカードを出してもらえますか?」
言われた通りにギルドカードを手渡す。
受付嬢がそれを掌サイズの水晶玉をかざすとギルドカードが仄かに光る。
「これでランクアップ終了です。これからも頑張ってくださいね···」
あまり気持ちの籠っていない定型文を聞きながら、2週間前とは違う爽やかな気持ちで扉を開き険者ギルドを後にするのだった。
最初は出来るだけ沢山更新しよう! という浅ましい考えで2日ごとの更新にしてきましたが、リアルが大変なので方針を変更しようと思います。
次回からは、土·日曜日で一回ずつの週2回更新しようと思います。
文字数は一回4500文字辺りで行けたらと考えていますが、多少前後する可能性がありますのでご了承のほどよろしくお願い致します。
次回は8/4 夜9時投稿予定です。




