現代の恋の行方
ハッピーエンド主義だから、悲恋のままでは終われない!
とにかく二人を幸せにしたかったのです。
キャラ崩壊と書き殴り低クオリティーにご注意を。
彼氏に裏切られていたと知った時、他の人はどのような反応をするのだろうか。
驚き、嘆き、悲しむのだろうか。
それとも憤り、怒りを抱くのだろうか。
私は一通り感情を露にした後、物が散乱とした部屋の中で呆然としながらもそれでも未だに愛する気持ちが揺らいでいない自分自身に嘲笑した。
今すぐにでも彼に会いたいと恋しがる自分が浅ましくさえも思った。
そんな私の心中を知ってか知らずか、まるで鬼を追い出すように会社を退職させられた。もちろん自己都合で。
色々あって説明するのが大変なので端折って箇条書きで説明する。
彼氏と出会い、色々あったのち付き合う。
知らぬ間に勤めている会社の経営が悪化し、吸収合併の危機が迫っていた。
会社で吸収合併されることが発表され、驚く。
社内の偉い人「誰かが相手先会社に不利となる情報を漏らしたに違いない」と妄信し、間者を探しはじめる。経営建て直しが出来なかったことが原因なのに、それは見ない振り。
彼氏が相手先の会社勤めだと知られて、社内の人から罵られる。
誓約通り社外に社内のことは話していないと言っても聞き耳もたれず、追い出されるように退職。集団心理怖い。
罵られ続けた結果、私は所謂ハニートラップの餌食になったのではないかと疑心暗鬼する。
彼氏に連絡を取るも忙しいとのことで、一月放置。
彼氏の態度に本当にハニートラップだったんだと落ち込む。
先日なぜか彼氏から連絡があり、金曜日である今日の夜会うことに←イマココ。
私が推測するに恐らく別れ話なのだと思う。
流石にこの歳になって自然消滅なんてことは出来ないだろう。
先に待ち合わせ場所である居酒屋の個室(何故かカップル仕様のソファのみ)について、注文を済ませると気合を入れるためにミントガムを噛む。
正直に言うと、まだ彼のことが好きなので別れたくないのだが、私にも意地というものがある。
彼が別れを切り出す前に、毅然とした態度で私のほうから別れを切り出すのが今日の目標だ。
よし!と気合を入れて、ミントガムを吐き出してから、私はお酒を一気飲みした。
飲んだり食べたりして、三十分程たった頃に彼はやってきた。
「遅れてごめん」
慌てて来た為かいつもの冷たそうに見える顔に申し訳なさが浮かんでいて思わずきゅんとした。
きゅんとしたってなんだ自分。がんばれ!イケメンに負けるな!
カップル仕様の為、私が座っているソファの横に座る彼に負けぬようににっこりと微笑んだ。
彼が注文を済ませ、私が頼んだ料理をちまちまとつまみながら、ぽつりぽつりと話をする。
「元気だった?」
元気なわけあるか!こちとら間者扱いで退職させられたんだよ!とは言えず、無難に答える。
「体調崩してない?」
思わずオカンか!と突っ込みたくなったが、猫を被って回避する。
店員さんが彼の注文を全て運び終えたころ、切り出してきたのは向こうだった。
「最近忙しくて、連絡できなくてごめん」
「ううん。・・・本当は相談したいことがあったんだけどね」
私の発言に驚いたように少し目を見開いていた。
「そうだったのか、ごめん」
「私、会社を退職したの」
「え?」
「色々あってね。だから今は就活中」
ふわりと彼が頭を撫でてくれた。
大きな彼の手の感触に、あぁやっぱり私好きなんだなと自覚させられる。
だけどこのままでは決心が鈍ってしまいそうだ。
だから私は早めに切り出すことにした。
「今日、話したいことがあって。・・・別れて欲しいの」
その言葉に頭を撫でていた彼の手がぴたりと止んだ。
彼の顔を確認することが出来ず、私はうつむく。
「別れない」
私が思っていたのと違う言葉が聞こえて、思わず顔を上げた。
「絶対に別れない」
恐ろしいくらい真剣な顔をした彼の表情を見て、すぐに言葉が出なかった。
「どうして別れようと思った?」
「え?・・・だってもう用済みなんでしょ」
「誰がそんなこといった」
「だって!あなたの会社はもう私の会社を吸収合併したじゃない!だからもう必要ないんでしょう!?」
「確かに会社は吸収合併した。だからなんだ」
「なんだって。だからもう私のことはいらないんでしょ!?」
「会社は関係ない。・・・誰に何を言われた」
「皆から言われたんだもん!お前は会社を売ったんだって!田中さんも、佐藤さんも、南部長も。皆に言われたんだもん!」
正直途中から自分が何を言っているのかわからないくらいすすり泣いていた。
そんな私を慰める為か、抱きしめようとした彼の手から逃げた。
「・・・俺のことが嫌いになったのか?」
ぽつりと小さく呟くような声だったが、不思議と耳に届いた。
初めて聞いた彼の弱弱しい声に、思わず彼の顔を見て言葉を失った。
普段は鉄仮面だと言われると自傷するほどほとんど表情が変わらない彼の顔にはありありと絶望が浮かんでいた。
「俺のこと嫌いなのか?」
だんだんと青ざめていく彼を見て、私は不思議と冷静になっていた。
別れるのだと意気込んでいたはずなのに。
意地を見せてやるのだと空回りしていたのに。
彼にそんな顔をさせたかった訳じゃなかったのに。
「好きよ」
自然と言葉が漏れていた。
「好きに決まってるじゃない」
当たり前のことだった。
私は彼のことが好きなのだ。
それは事実だった。
ゆっくりと彼の頭を抱きしめる。
「あなたこそ私のこと、嫌いなんでしょ?」
「そんなわけない。君しかいない。俺には君しかいないんだ」
背中に彼の手がまわされて、まるで縋り付くように抱きしめ返された。
縋り付く彼の頭を撫でてから、私もぎゅっと抱きしめた。
「私たちはお互いにお互いが好きなのね。うん、それはわかった」
「君がいなくなったら、俺はどうすればいいんだ」
「ねぇ、私たちには話し合いが必要なんだと思う」
少し落ち着いてから、私たちは居酒屋を出て、彼の部屋へと移動した。
私のほうに誤解が合ったようで、本当に会社には何の関係もなかったことを理解した。
「本当にごめんなさい」
「いや、いいんだ。俺のほうこそごめん」
私のほうは退職するまで会社の人に毎日毎時間裏切り者だと罵られたせいで、植えつけられた疑いだったのだろうと彼は許してくれた。
彼のほうは吸収合併に伴って、今日までほとんど家には帰れないような状態で仕事をしていたらしく、大事なときに気づいてやれなかったと酷く落ち込んでいたので、しょうがないよと精一杯伝えた。
一ヶ月近くほとんど家に帰っていなかったせいか、部屋の中は少し埃っぽく、また洗濯物も大量に溜まっていた。
几帳面な彼の家がこれほどなのだから、よほど忙しかったのだろうと少しやつれて疲れた顔をしている彼を着替えてくるように追いやった。
彼が着替えている間にお風呂掃除をして、お湯を溜めて、乾燥機つきの洗濯機を回した。
洗濯機を回す段階で彼が慌ててやらなくていいと止めに来たが、そのままお風呂へと押し込んで、簡単に家の掃除をした。
烏の行水の如く早く上がってくるだろうと予想できたので、お風呂にゆっくり入らないと今日は帰ると脅しておいて正解だった。
ホカホカと湯気が出ている彼がお風呂場から出てくる頃には家はあらかた片付いていた。
「ごめん。掃除までやってもらって」
「ごめん、よりありがとうのほうが嬉しいな」
乾燥まで終えた洗濯物を畳みながらそういうと後ろから抱きしめられた。
「ありがとう」
「どういたしまして」
畳み終わった洗濯物を持っていこうとする彼の髪が濡れていることに気づき、慌ててソファに座らせると洗面所からドライヤーを持ってきて乾かしてあげた。
乾かしている間、彼が気持ちよさそうに目を閉じてうとうととしての見てきゅんとしたのはしょうがないと思う。
髪を乾かし終わった後、さてこれからどうしようかと考えた。
正直このまま泊まりたいと思うのだが、今日は別れる気満々だった為、お泊りセットを持ってきていない。
メイク落としや化粧品等の嵩張る日用品は彼の部屋に置かせてもらっているのだが、下着や衣服の替えを持ってきていなかった。
「今日はこのまま泊まってくだろう?」
私の考えを読んだかのような彼の言葉にたまにエスパーなのではないかと驚くことがある。
「でも、下着とか持ってきてないんだよね」
「お風呂に入ってる間に洗濯機を回したらいい。パジャマは俺のを貸すから」
「・・・うん。じゃあお言葉に甘えます」
パジャマを探して持っていくので先に風呂に入って、という言葉に甘えてお風呂に入った。
あまり長湯はしないほうなのでざっと上がるとまだ洗濯機の乾燥が終わっていないようだったので、湯冷めしないように素肌に彼のTシャツを着て洗面所で待つことにした。
長身の彼のTシャツはすごく大きくて、手の方は何度か折り、裾は太ももの半分くらいの長さまであった。
流石にノーパンで彼のハーフパンツを履くことは気持ち的に出来なかった。
髪を乾かし終えてもまだ乾燥が終わらないようで、念入りに化粧水をつけていた。
突然ドタドタと足音が聞こえてきたかと思うと、勢いよく脱衣所のドアが開かれた。
「大丈夫か!?」
「えっ?何が?」
一瞬静寂が訪れた。
「いや、あまりに風呂が長いから溺れたのかと。だいぶ酒も飲んでいたし」
「もうお酒も抜けちゃったよ。乾燥機待ってるの」
「そうか」
ほっとしたような彼の顔にまた愛しさが湧き上がってくる。
普段の彼なら絶対にあんな足音立てたりしないのに、私が心配になって慌ててかけて来たなどと言われれば嬉しくないわけがなかった。
ほっこりした気持ちの私だったが、強い視線を感じて再び彼を覗き見ると熱に浮かされたような目で私の体を見つめていた。
逞しい腕に突然抱き上げられたかと思うと、一直線に寝室へ連れ込まれ、疲れきった身体で朝日を拝むこととなった。
一月ぶりなわけですし、気持ちはわからなくないでもないが、ちょっと激しすぎやしませんかね。
身体のありとあらゆる所が痛む私の世話を甲斐甲斐しくする彼をジト目で見てしまってもしょうがないと思う。
そして、すぐに婚約し、一年後には結婚式を挙げている未来が待っているのだと、指一本動かすのが億劫な今の私には全く予想が出来なかったのである。




