#01喫茶店「〇」
【あらすじ】
嵐の中、ひとりの男は不思議な喫茶店へ足を踏み入れる。
そこにあったのは、見たことのない店員たち。
不思議なメニュー。
そして、どこか懐かしさを感じる一杯のコーヒー。
「はじめてですか?」
その問いかけから始まる、小さな出会い。
少し変わった喫茶店「〇」で紡がれる、
温かくて不思議な物語。
第一話
ザー。
どんがらがっしゃーん、と雷。
傘はない。
全身が濡れたまま目の前の喫茶店へ駆け込む。
記号だけの看板、「〇」。
「 いらっしゃいませー。 」
妙に明るく、薄くて軽い声。
みどり色や紫のトカゲの店員たちは、ブラウンのエプロンを小綺麗に纏っていた。
「 はじめてですか? 」
無言で、首を縦に振る。
( 変な質問だな。 )
そのまま席へ通される。
猫が通る。
一度だけこちらを見て、笑ったように見えた。
「 もう出られないかもね…。 」
( おしゃべりな猫だな。 )
異様な空気に不穏さを感じながらも、座ったまま携帯を取り出す。
パートナーAIのtonicにスマホで接続する。
検索:喫茶店〇
検索:〇
検索結果:該当なし
検索履歴:該当なし
この地点は地球上には存在しません。
「 ん?地球ってどこだ? 」
「 まあ、いいか。 」
メニューを見る。
トマト (微量)
きゅうり (不明)
人参 (刺激)
コーヒー (強力)
スマイル (最強)
( 不思議な書き方だな。 )
注文する。
「 コーヒーを一杯。 」
少し間。
「 本気ですか? 」
「 何が? 」
( この店では不思議なことばかりだな…. )
…店内には、あまりに純粋すぎてむしろ逆に、毒のようにすら感じる、モーツァルトの軽やかなリズムが流れている。
( レコード…? )
そんなことを考えていた。
店員が元居たカウンターの中にまるで折りたたんでしまわれるように返っていく。
ふと、思い出したように言う。
「 あ、すいません。やっぱり、ブラックで。 」
店員の手が止まる。
「 コーヒーだけでもやばいのにー! 」と震える。
「 聞こえてるぞー(笑) 」
戸惑っている店員らに
「 炒った豆を優しく軽く蒸らして、数回に分けて淹れてくれ。 」と伝える。
「 お客様には既に聞こえています、お静かに。 」とあたまと手足の青い店長。
あわあわする店員たち。
空気が揺れる。
やがて店長がカップを運ぶ。
「 店長の、やぶかみです。 」
「 失礼ですが、お名前をお伺いしてもよろしいでしょうか? 」
( どうしてコーヒーに詳しいのか…? )
なにか、絶対に忘れてはいけない大切なことを思い出せないでいた。
「 ジョージ… 」
一口飲む。
「 あの人…コーヒー飲んじゃってるよ.... 」
「 しかも、ブラックって… 」
痛みが静かに引いていく。
同時に携帯が反応する。
ピン留め済みの地点です。
ピン留め履歴:40年前の記録があります。
ここは、危険な香りを放っているかもしれないと気付いた時には、既に手遅れだったのかもしれない。
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どんなものを受け取ったのか。
その一つひとつを大切にしていきたいです。
限りある人生の時間の中で、この作品に時間を使って読んでくださったこと。
本当にありがとうございます。
一杯のコーヒーから始まった、小さな出会い。
不思議な喫茶店「〇」には、
まだ誰も知らない秘密が隠されています。
なぜ、この場所にたどり着いたのか。
なぜ、このコーヒーはどこか懐かしいのか。
そして、この店で出会うものは――。
少しずつ紡がれていく物語の先で、
何か大切なものを見つけてもらえたら嬉しいです。
次の一杯は、
トカゲたちが淹れる新しいコーヒーとともに、
また新しい物語を連れてきます。




