今日の失敗は、ちょっぴり嬉しい
「ちょっと、こっちが悪いっていうの!? ただ邪魔だったから『ジャマ』って言っただけで、わざわざ突っかかってきたのはそっちじゃない! こっちは単なる通りすがりなのに!」
漂う空気感から、どうも自分が悪者にされているようだと感じたのだろう。客の男性に指を向け、通行人の女性は激しい口調で言い放った。
「愚痴ぐらいでこんな大げさにしないでよ、騒いでいる方が悪いんでしょう?! ていうか何よ、アンタたちは。店員?!」
「は、はい。そうです」
ゾロゾロと人がやって来て、こうして介入されているのがよほど気に食わなかったらしい。仲裁役のカルムとチグルスさんにまで喧嘩腰だ。
「そもそもこの店、いっつも通るたんびにワーワーキャーキャーと喧しいのよね。通りにまで人が溢れている時があるし。ちゃんと周りの許可を取っているの?!」
「……ええ。正式な手順を踏んで、交通に問題がないよう最大限配慮しておりまして。街側の許可もきちんと……」
「『配慮』ぉ!? あのねえ、実際に邪魔になってるからこんなに言ってんでしょ!? たかがクッキーにこーんなに並んじゃって、ばっかじゃないの!?」
噛みつくような物言いに、さすがのチグルスさんも参ったようだ。手を額に当て、ぐっと気持ちを抑え込むようにひと呼吸置く。
そのあいだに黙っていたカルムが口を開いた。
「失礼。申し訳ないんだがな、此処じゃ迷惑になるから、他で事情を訊かせ……」
「嫌よ、悪い事もしてないのに何で連れてかれなきゃいけないの!? このあと用事があるのよ私は、ここの人たちみたいに暇じゃないの!」
「…………チッ」
あまりの発言に、店内からも複数の舌打ちが聞こえてきた。客の視線が刺すようなものに変わり、ヒソヒソ声はやがて大きくなっていく。
「何だよアレ? 気分わるっ……」
「セーアちゃんたちとお話しできるせっかくの機会なのに。台無しじゃん」
「うざったいオバサンだなー。さっさとどっか行ってくれって」
「ああいうのってほんっと迷惑だよな。何にでも文句をつけたがるし、自分の都合で苦情を入れてきてさ。ビョーキだよほんと」
「どっちが迷惑かけてんだよ。あっち行けって!」
孤立無援の状況に、むしろ女性は引っ込みが付かなくなったようで、焦り顔に笑みまで浮かべだした。
「おっかしいでしょ、ただの既製品を揃って手作りだなんて有り難がって。そんなのちょっとした宗教みたいじゃない、気持ち悪い!」
「なっ……!」
それを聞いていたチェルが目を見張った。
端正な眉が怒りに歪み、食いしばった歯がギリッと音を立てる。
瞳にはうっすらと涙が溜まり、固く握られた拳はワナワナと震えていた。
「あんな……あんな酷いことを言われても、店側の人間は我慢してなきゃいけませんの……? それが『社会の常識』というものなんですの、セーアちゃん。あんな大人もいるのに……っ?!」
「……うん。そうだよ」
冷静に返したつもりだったのだが、僅かながら声に震えが出た。許せないのは俺だって同じだ。
しかし今は、彼女たちに心構えを教えてやれる人がいない。本来だったらそれは、上司であるイオニアさんの役割だからだ。
だから俺が、代わりに彼の言葉をチェルたちに伝えないと。
「あくまであれは、あの人とお客さんとの問題だから。第三者のセーアたちが、必要以上に介入するべきじゃない」
……そう。介入するべきじゃないんだ、本来だったら。
あくまで話し合ったすえに決着をつけて、双方が謝罪すれば済むだけのはなし。子供でも知っているぐらいの、単純でスマートな解決法だ。
でも――……大人というのは、そうもいかないわけで。
「はあぁ!? どこが宗教なんだよ、純粋に可愛いものを可愛がっているだけだろうが!? 暇じゃないなら文句つけんなよ、気に入らないんならとっとと帰れ!」
「そうだそうだっ!!」
別の人がそう言い、怒涛のコールが巻き起こった。
「かーえーれっ!」
「「「かーーえーーれっ!」」」
「かーえーれっ!」
「「「かーーえーーれっ!」」」
この場にいるほとんどが同じセリフを口にし、共通の思いを大きなひとつの言葉にする。
しかしそれは、俺にとってはひどく歪で胸糞の悪い光景に見えた。誰もが負の感情に満たされているのに、異様な熱を帯びたそれは変質し、まるで良い事であるかのように振る舞っている。
「おい、やめろっ……!」
俺のほうを心配そうに見ていたカルムが、何かに気づき声を上げた。
「あいつ……セーアは大勢が持つ、負の感情に触れるのに弱くって……! そんなのに晒されたりしたら、身体にまで影響が……!」
「「「かーーーーえーーーーれっ!! かーーーーえーーーーれっ!!」」」
「くそっ……!」
たった一人が止めようとしてみたところで、大衆の声は容易にはかき消せない。
チグルスさんであってもそれは同じだった。もどかしそうに襟元に触れては、また思い止まったように手を下ろす。神託者の証である紋章が刻まれたペンダントをここで見せつければ、この場にいる全員を黙らせることが出来るだろう。
しかしそれは、大衆の声を権威によってかき消すのと同義だ。
穏便に事を片付けるには、『ひとりの店員として』何とかしなければならない。
――なら、どうすればいいのか。
「………………ちゃん。セーアちゃんっ!」
「あっ、ごめん!」
パッと意識が手元に戻る。クッキーを渡しかけたところで固まってしまっていた。
いけない、いつもの癖だ。籠に慌てて手を突っ込みながら、自分の矛盾した行動を思い返す。
チェルたちには「我慢しろ」なんて言いながら、どこかで穏便な解決法を探ろうと考えてしまっていた。
そもそも今は、女が現れないか注意して見ていないといけないんだ。だから外部のゴタゴタなんていう厄介ものは、警備員に任せてしまえばいい。でも……。
葛藤しつつそっと横を見てみると、チェルたちは時おり悔しそうに視線を外へと向けながらも、ちゃんと笑顔でお客さんに対応を続けていた。
この状況に限っては、この子たちのほうがよっぽど大人だ。
俺もちゃんと、彼女たちを見習わないと。
「お、お待たせっ! イベントに来てくれてありが……、あぁっ!!」
真正面を向いた瞬間、相手が持っていた物に目が留まった。
手作りだけど細工がこまかい、デフォルメされた俺たち三人のぬいぐるみ。その真ん中にいるセーアの腕部分には、白い布切れが巻かれている。
「ぬいぐるみのお姉さんっ!」
視線を上へと持っていくと、イベントの撮影会で会った、お手製のぬいぐるみを見せてくれた女の子がそこに立っていた。
涙でぐしゃぐしゃだった顔は今やもうすっかり晴れやかになり、泣いていたのを忘れてしまいそうだ。
「今日も来てくれたんだね。ありがとうっ!」
「ふふっ。セーアちゃんの手作りクッキーを貰えるって聞いたからね、急いで飛んできちゃった!」
「嬉しい! この子も連れてきてくれたんだ。怪我はもうだいじょうぶ?」
いまだに巻かれている包帯(という名のタイツの切れ端)を示しながら問いかけると、彼女は「へーきへーき!」と明るく笑った。
「もう直してあるんだ。ほらっ、ちゃんと綺麗に繕えてるでしょ?」
そう言い、包帯をズラして隠れていた部分を見せてくれた。
確かに肌と同じような色の糸で、破れていた箇所が縫われている。縫い目は間隔も細かくて丁寧で、愛情をもって修繕してくれたのが窺える出来だ。
「本当だ、綺麗になってる。直して貰えて良かったね、ちっちゃなセーア! ……な、なんちゃって……?」
ぬいぐるみを撫でながら言ったセリフが無性に恥ずかしく思えてきて、妙な誤魔化しを入れてしまった。
どうにも恰好がつかなくなり、もう片方の手で持っていたクッキーの袋をずいっと突き出す。
「こっ、これ! セーアたち三人で、頑張って作ったんだ。お休みの日に、家で集まってね。たくさん作って……ほ、ホントだよ? エプロンつけて、生地作りから一生懸命にやってね。アイシングクリームで、なに書こうかってみんなで相談して……。デザインから決めて、何時間も……かけて……」
合間にも口論と一緒に非難の声は続いていて、なかには相変わらず『既製品』という言葉も混じっていた。
なるべくだったら綺麗に見せようと、見栄え良くしようと張り切って作ったのに。その結果がこれだなんて、あんまりにも酷すぎる。
「本当にね……? 作ったんだよ、三人で……」
自分だけならまだ良かったんだ。
家に帰ったあと、「嘘じゃねーし!」とキーキー喚きながら発散して、エチェットに慰めて貰えばいくらかは気分がスッキリとしたはずだ。
でもチェルたちは違う。まだ柔らかくて繊細で、大人に対する信頼なんてものは、簡単にぷっつりと切れてしまうような年頃だ。
そんな幼い年齢で、この状況を何事もなかったかのようにスルーできるはずがない。
「……作ったもん……」
俺を挟んでチェルとは反対の位置にいる、フィノの微かな呟きが聞こえてくる。
「うまく作れたから、売っているのと間違えちゃうだけだもん……。それだけうまく、作れて……」
感情を必死に抑え込んでいると分かる、低く押し殺した声。
力なく垂れ下がったヒレ型の耳は、彼女の気持ちをこれ以上なく伝えている。
――ふたりだけじゃない。
カルムも同様に、一緒に作った仲間として、同じ憤りを抱えた顔をしていた。
「ごっ、ごめんね! ヘンな空気になっちゃってて!」
また思考に没頭しようとする頭を無理やりにお客さんの方へと向かせる。
いつも通りに笑顔を作ろうとしてみても、なんだか上手くいかない。下手くそな笑顔のままで、「はいっ!」とサイン色紙を渡した。
受け取った彼女の胸元にはぬいぐるみのセーアがいて、そっちの方がよっぽどセーアらしい素敵な顔をしていた。
「本当にごめんね。手作りだなんていう証拠、どこにも無いからどうしようもないんだけどね。ああ言われると、つい悔しくなっちゃうっていうか……。また作ろうねって、約束したから……みんなで……」
まるであの時間が無かったように言われているみたいで、怒りと同時に悲しみまで湧いてきだした。
自分の内面にとどまらず外側からも負の感情を受け、気分が悪くなってくる。
いよいよ眩暈まで感じ始め、倒れるもんかと意地でも踏ん張る姿勢を取った時。
「うん。分かってるよ?」
ごく当たり前かのような反応が返ってきて、俺はいつの間にか項垂れていた頭を持ち上げた。
「えっ?」
「いやだって、アイシングの線がけっこうブレてるからさ。プロがそれっぽく作ったって言われると、『まあそうなのかな?』って一応の納得は出来るけど……あたしにはそんな嘘をつくなんて思えないな。だってセーアちゃん、こんなちっちゃな切れ端を作るためだけに、目の前でタイツを脱いで破っちゃうんだから。そんな行動力のある子が、『お客さんのために手作りのクッキーをたくさん作りました!』っていう方が、素直に信じられるかな?」
抱えたぬいぐるみの手をぴょこぴょこと動かし、それから、何かを言おうと口を開きかけた。数秒動きが止まったあと、彼女は何かを思い出したように懐を探る。
「……そうだ。確かセーアちゃん、甘い物好きだったよね? あたし、働いてるお店でデザート作ってるんだ。クッキーの感想とか、撮影会の時のお礼もしたいからさ。良かったら来てよ、サービスするから」
取り出されたのは、店舗の名前が書かれた名刺だった。
住所と一緒に、人気のメニューなども書かれている。パンケーキにパフェ、季節のフルーツタルト、ジャンボプリン。デザートが中心になっているカフェみたいだ。
さっきシェリナとした約束もあるし、四人で食べに行くのにちょうど良さそう。
「ありがとう。絶対に行くね!」
「うん。用意して待ってるから」
さりげなく名刺を受け渡し、「それじゃ」と他のファンの目に留まらないよう、そそくさと女の子は立ち去った。その背中に手を振る。
「またねーっ!!」
少し気分が落ち着いてきて、もうちょっとリフレッシュしようかと思い、扉から入り込んでくる風に意識を集中させる。
こうすると澄んだ空気が心の澱みを押し流してくれて、俺にとっては強い負の感情に触れた場合の浄化になるんだ。
「…………気持ち良い…………」
ふわりと頬を撫でてくる風が耳にもさわさわと触れ、こちらに囁きかけてくる。
――あれっ? ねえねえ、このクッキーさぁ……。
てっきり精霊の言葉かと思ったんだが、どうやら雰囲気からして違うみたいだ。
客の誰かが発した声が、風に乗って俺の耳にも届いたのだろう。でもほんのささやかなもので、決して誰の耳にも届くような声量じゃない。
「なにか、伝えようとして……?」
言いかけ、たぶん違うだろうと思い直した。響きはとても柔らかく弾んでいて、隣にいる人とこの気持ちを共有したいのだという温かな想いが伝わってくる。
さっきと同じ『同調』でも、これは――……。
「……そっか。お前ら、俺を元気づけようとしてくれてるんだな?」
負の感情に包まれているこの場所は、俺にとっては酷く息苦しく居心地が悪い。
……だからこそ。ささやかでも、プラスの感情が籠った言葉を俺の元へと届けてくれたんだろう。
「これを、皆にも聞こえるようにしてくれるか?」
頷いた風の精霊たちは、客の合間を柔らかく駆け抜けていく。
誰の元にも、確実に。
それはまるで、暖かな春の陽気を報せるように。
「…………えっ? クッ、キー……?」
買い物をしつつ険しい顔でクレーマーの方を見ていた人たちが、次々に手元の袋へと目を落としていく。
「ん? クッキーの、文字が……なに?」
「さあ? うちのは特に……」
「あああああああっ!!」
とつぜん大声を出したひとりのお客さんが、袋からあけたクッキーを見えるように頭上に掲げた。
「本当だ! 俺のメッセージクッキー、ひと文字間違えてる! ほら、『また来てね』のところ!」
「あっ、私のもそう! 同じ文字だわ!」
「こっちは違う単語だけど、綴りがおかしい!」
「こっちもだ!」
「これも!!」
嬉々としてクッキーを掲げる人たちとは対照的に、フィノは恥ずかしそうにお立ち台の上で顔を伏せていた。
「た、大変だったんだもん。いっぱい書いたから……」
「フィノ、良い仕事しましたわよ!」
「うんっ。これで……!」
俺の言葉に応えるかのように、通行人の女性と言い合いをしていた男性のお客さんが、自信満々に色紙とクッキーを持ち上げた。
そして、見比べやすいように並べる。
「ほらな、筆跡だってまったく同じだ。丸みや跳ね、字ごとの癖も一致してる。パティシエが色紙まで書くってのか? それも五枚や十枚どころじゃない、百枚もだぞ」
「ぐうぅっ……!」
「そういうふうに作ったとしても、プロならどこかに上手さや手癖、こだわりが出る。でもこれは主線も真っ直ぐじゃないし、塗りもはみ出てる。クッキー自体も素人の作りだ。そのうえ字や綴りの間違いもある。……作り手の年齢からすると、かなり丁寧な仕事をしているけどな。小さな子供じゃないと、こんなふうには作れねえよ」
男性の言葉に、お客さんたちは俺が渡したクッキーと色紙とを見比べた。
「ほんとだ、字がまったく一緒!」
「やっぱり手作りなんだ。すげえ、俺たちのためにわざわざ作ってくれたなんて!」
「うちにある女神像の前に供えておかないと……。ありがたや……」
供物みたいに扱う人まで出だした。念のために「一週間以内に食べてね」って袋に書いておいたから、大丈夫だとは思うんだけど……。大事に保管しすぎて、呪物を生成する人がのちに現れそうだ。
「納得したか?」
いまだ怒り顔のカルムは、切れ長の瞳をより鋭くさせ、静かに女性へと問いかけた。
「これ以上揉めるようなら、兵士を呼んで引き渡すぞ。言っておくが、この地域はピュティシュ・アルマのおかげで活性化したと言っても過言ではない。だから周囲の店舗もそれにあやかって、コラボ商品をこぞって出したがるんだ。持ちつ持たれつの関係が、お前の知らないところで出来上がっている。……それを知らないのは、最近よそからやってきた外部の人間だけだ」
女性はごくりと唾を呑んでから、ぎこちなく周りを見渡した。
配付会の待機列に並んでいる客。すでにクッキーを受け取って、ピュティシュ・アルマの店舗内で買い物をしている人たちなど。ほぼ全員が、自分の方に咎めるような視線を向けている。
――それだけではない。周りのカフェやグッズ販売をしている露店、書店や写真屋など、色んな店に滞在しているお客さんや店員までもが、様子を見に外へとやって来ていた。
そのいずれもが、同じような目でこちらをじっと見ている。
「……もっ、もういいわよどうでも!! そんな子供が作っただけの、素人の手作りクッキーなんて!!」
「そうか?」
近くにいたお客さんが、女性の罵倒にやや気の抜けたような声で言った。
「あんたにはどうでも良くても、僕らファンにとっては並んででも手に入れたい貴重なお宝なんだけどな。こちとら四時起きだぜ?」
「おれは昨日の夜から並んでるぞ」
「隣の国から来ました!」
また次々と手が上がり、何時起きだったとかいつから並んでるだとか、どこから来ただとか、そういう報告をしあう場になってしまった。
でもみんなどこか楽しそうで、いつしか貰ったクッキーを見せ合いながら和気あいあいとしている。
「しっ、知らないわよそんなの!! ふんっ!!」
女性は悔しそうに歯噛みしながら、逃げ帰るように去っていった。
その背中に追い打ちをかけるように、誰かが叫ぶ。
「知らねーのかよ、ピィニアはこれからもっと、もーっと売れっ子になるんだぞー! いま知っといて良かったなーーっ!!」
子供じみた呼び掛けに、周りからどっと笑いが溢れた。
「フィノ。間違いや失敗もね、こうやって思わぬ結果に繋がることがあるんだよ。だから、怖がる必要なんてない」
恥ずかしそうにモジモジしているフィノにそう話しかける。
籠に入った残りのクッキーを渡しづらそうにしていた彼女は、俺の言葉にきょとんとした顔をした。それから意味を理解したようで、はにかみながら「うん」と頷く。
「今日の失敗は、ちょっぴり嬉しかった」
「失敗したのは今日じゃありませんけどね?」
チェルがすかさず言い、フィノは彼女を軽い力でポカポカと叩きだした。
「もうっ。チェルのいじわる!」
「きゃあっ! うふふっ、痛いですわよフィノ! セーアちゃん、助けてぇー!」
「助けてって……」
どう見ても喜んでいるようにしか見えないので、俺は外野に徹して眺めていることにした。楽しそうだけど、ここで俺まで入ったら収集がつかなくなってしまう。
ほどなくしてトラブルで滞っていた配付会は再開され、また列が動き出す。
籠の中のクッキーは、残り少なくなっていた。




