39話 レベルアップと新スキル
ゲットした新スキルが何に役立つのか、その時は分からないことが多いですよねえ。
レベルアップやスキルをゲットした後、メッセージを確認したければ、この機能が便利だ。
≪ログ!≫
視界に文字が重なる。
さらに目を瞑ると、はっきり見える。思ったより獲得経験値が高い。
『迷宮内は補正が掛かります』
ああ、そう……。
そのせいか、レベルアップが複数同時に来た。
剣士、拳闘士、放浪者に、上がりの遅い調教士も上がった。
さっき見過ごしたけど、このスキルは、なんだ?
≪スキル:多体制御3を憶えた!≫
多体制御……?
『調教士のスキルですね。複数の従魔を同時に使役することができます』
『ほう。もしかして末尾の3は、3体までOKという意味か?』
『はい』
ふむ。3体なあ。良いスキルかも知れないけど。従魔はレダの他には居ないし。従魔にしたのは偶々だしなぁ。これから増やせるあてもない。
宝の持ち腐れになりそうだ。
『スキルを生かすも殺すも、ご主人様次第ですよ……おっ』
『どうした?』
『レダも新しい固有スキルを得ています』
『どんなのだ?』
『離合集散というものです。お待ち下さい……ふむ。これは! 使えるかも知れません』
そうなのか?
あんまり期待しないでおこう。
アイが姿をまた顕現させた。
それを見たエマがびくっと反応する。トラウマになっているのかなあ。レダの上まで飛ぶと、おもむろに両手を広げた。
何をするつもりだ?
「うぅわっ」
黒豹の腹が伸びたかと思ったら、ドロッと溶けた。
気持ち悪いから、やる前に言えよ! 今回はある程度覚悟していたけれど。
「ちょっと、何するのよ!」
覚悟していなかったリザが、結構な剣幕で抗議し掛けたので、腕で留める。
「まあ、見てみようぜ」
「うぉぉぉ、おっ?」
腹部が溶けて床に滴ったあと、前の方は後ろ脚ができて腰が繋がり、後ろは前脚が立ち上がって頭部ができていく。
「おお、そっくり! レダちゃんが、双子になっちゃった! かわいさが倍だわ」
双子……ではないと思うが。確かに分裂した。
「えーと、レダが2体になったってことでいいか? アイ」
「群体数としては、そうです」
「引っかかる言い方だな。まあいいけど……! あっ、多体制御!」
「はい。レダを3体までなら、分けて制御できます」
「おおぉぉ。なるほど」
「ただ……」
「なんだ?」
「それぞれステータスが、下がります」
「うぅ、駄目じゃないか。ちなみに、どの程度下がる?」
合計が同じならいいな。
「ステータスの2乗平均平方根が1体の時と同じに限定されます」
おっ?
「均等に分けるなら2体で71%、3体なら……えーと58%か。そんなに悪くないな」
「まあ、そういう考え方もありますね」
「えっ?」
俺とアイが、疑問を呈したエマの方を向く。
「どうした?」
「えーと。今の値は正しいのですか?」
「合っているよな? アイ」
「はい」
「そうなのですか。こんな短時間にそんな高等な計算ができるものですね。感心しました」
「んん? ああ、計算したんじゃなくて、有効数字3桁くらいを暗記しているだけだ。その手の係数は工学でよく出てくる値だからな」
1/√2と1/√3だ。
「工学……ケント様が学士様だったとは。いや、大変賢い方だとは思っていたのですが。失礼致しました」
「いや学士には成っていない。大学に入ったばっかりで、こっちに来たからな」
あっちに居る俺の分身は、まだ通っているだろうから、中退とも違うか。
「大学!」
なんだか余計恐縮されてしまった。どんどん、逆方向に話が向かう。
「誤解しないでくれ。俺が居た国では、大学が何百と有って、俺と同じ年代は半分以上が大学に進学する状況だったんだ。大学に進学といっても恐れ入ることはない」
それはいいとして、なぜ横に居るリザがドヤ顔なんだ。
「はぁ、それにしても……ケント様は恵まれた世界にいらっしゃったんですね」
「確かにな。向こうにいる頃には余り思わなかったが、こっちに来て実感した」
ブーンとアイが俺の目前を飛んだ。
「話が逸れました」
「そうだな」
話題を変えたかったので、合わせる。
「何もステータスを均等に分ける必要はありません。例えば、剣と黒豹という組み合わせならば、剣の方には1割も割り当てれば大丈夫です」
「そうなのか? じゃあ、豹のステータスはほとんど減らないじゃないか」
暗算だと99%以上だ。
「それなら、刀に成ってくれ」
「えぇぇぇ」
リザが、近い方の首に抱き付く。
「片方は豹で残るから」
「うぅぅ。じゃあ、いいけど」
そうは答えたが、頬が膨れている。
レダ達が近寄って、頭からゆっくりとぶつかると溶け合うように一体になった。そのまま俺に歩み寄ると背から触手が伸びて、腕に巻き付いた。そして、俺の手の中で打ち刀に変形した。
「獣相のステータスは、どうだ?」
「誤差レベルの差しかありません」
「よしよし。ところで、ボスはいつになったら再出現するんだ?」
「あちらをご覧下さい」
「ん?」
振り返ると、入口の扉が知らぬ間に閉じていた。
「我々がこの広間を通り抜けないと、再出現することはありません」
「そうなのか、わかった。邪魔になるかも知れないから、とっとと出よう」
開いたままの出口を通り抜けた。
通路なりに右へ曲がると、下に続く階段があった。
その手前。右の壁の一部分が白く塗り込められて居る。転層スポットだ。
その前で立ち止まる。
「えっ、戻るの?」
「ああ」
「えぇぇぇ。まだいけるよ。ねえ」
リザはエマへ同意を求めたが、無反応だった。
「ギルドの受付が、5階層ぐらいで帰って来いって言っていただろう?」
「むう。分かったわよ」
アイが顕現する。
「使用法を説明致します。ご主人様、転層石を壁に近付けて下さい」
「ああ」
保管庫から4cm程の水晶を取り出して、アイの言う通りにすると、壁の一角が光った。
文字だが、やがて第2階層と書き換わった。
その下には第5階層と見えたが、明らかに光っていない。まあ、ここだからな。つまりこの転層石を使って転送できるのは、2つの階層だけということだ。
「触ればいいのか?」
「はい」
第2階層と読める部分を触ると、壁がトンネルの形に黒くなった。黒いだけで、壁の向こうが見えるわけではない。
そこに腕を伸ばすと、何の抵抗もなく肘から先が消える。振ってみても何も触らないし、引っ張れば戻って来た。大丈夫のようだ。
「身体の大部分が消えると、戻って来られませんので気を付けて下さい」
そうか。
「じゃあ、行くぞ」
進むと、何事もなく通り抜けた。
午前中に来た、第2階層の転層スポットだ。右に避けて、待つと黒い壁から、リザとレダ、最後にエマが出て来た。何だか手品のようだ。
辺りは、数時間前に通った場所だ。向こうには、転層待ちの行列が見える。戻って来た実感が湧く。
「行こう」
そのまま、地上に戻る。
入口の職員に会釈をして、迷宮の敷地外に出た。
まだ、日が高い。2時半というところだ。
「ん、うんん……」
リザが、無意識なのだろうが、伸びをした。やはり、それなりに緊張していたのだろう。
「町へ帰ろう」
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訂正履歴
2022/11/23 やや加筆
2023/09/15 人名間違い レダ→リザ(ID:1576011さん ありがとうございます)




